軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

508 フランとウルシの成長

『じゃあ、いくぞ?』

「ん!」

「オン!」

俺が目覚めた直後。自分の調子とフランたちの成長を確かめる為、俺たちは魔狼の平原で魔獣を探していた。

俺の場合、自分でもよく分かっていなかった部分の不調が修復され、さらにアナウンスさんが一部ではあるが力を取り戻している。

アナウンスさんが自由に喋ることは無理だが、俺自身の状態を把握するための質問などには答えてくれるらしい。

さらに俺が魔力を運用する際に一部を補助してくれているそうだ。細かい制御や大魔術の使用も、今後は多少楽になるだろう。

フランはアリステアに新たに打ってもらった剣を使い、アマンダに修業をつけてもらっていたらしい。

俺はフランが手に持っているその剣を見る。フランの無茶な運用に耐えられるように、威力などは度外視でただただ頑丈に作った剣だ。

アリステアは間に合わせの剣だと言っていたらしいが、十分に強い。

名称:重魔鋼の剣

攻撃力:480 保有魔力:80 耐久値:1200

魔力伝導率・D-

イラストが上手い人が5秒で適当に描いた似顔絵とか、料理上手の人が余り物でパパッと作ったおつまみとか、そんな感じである。こっちから見たら凄いんだけど、本人からしたら大したことがないのだ。

『うーむ』

「師匠? どうしたの?」

『いや、なんでもない……』

いずれ俺を振るときのために、重心や刃の長さは俺に似せられている。しかし、そこがまた複雑だ。

確かにフランの役に立ったのだろう。俺がいない間にフランを守り、その成長を見守り、荒っぽい使われ方をしても黙って耐えた。うむ、素晴らしいことだ。

だが、気に食わない。いや、ハッキリ言おう。俺はこの剣に嫉妬している。自分がいない間、俺の代わりにフランに使われていた、俺によく似た剣が妬ましいのだ。

想像してみてほしい、自分が長期の出張に出て帰ってみると、自分そっくりのお手伝いさんがいて、家族の面倒を見ていたのだ。家族に寂しかったと言われたとしても、やはりちょっと納得いかない部分があるだろう。

今の俺はまさにそんな感じなのであった。

『まあ、俺が戻ってきたんだから、その剣にはしばらく出番はないけどなっ』

「ん。久しぶりに本気が出せる」

『おう、任せておけ!』

フランが大きく成長していることは間違いない。大物狩りという称号を得て、スキルも増えている。

大物狩りは、その名の通り巨大な相手を倒した場合に得られる称号だそうだ。フランはいつ獲得したのかよく分かっていないようだが、アナウンスさんが教えてくれた。どうも、大地を取り込んで巨大化するアース・スライムという相手と戦ったらしい。

自分よりも大きい相手と戦う際に、ステータスが上昇するという称号なので、かなり役に立つだろう。なにせフランは小さいからね。

スキルの成長にも驚いた。俺とのスキル共有がなくとも、剣聖術、剣聖技を扱えるようにさえなっていたのだ。

俺とスキル共有をして、高レベルのスキルを扱った経験がその成長を速めているにしても、異常な成長速度であった。

色々な要因が重なったのだろう。

元々才はあった。アマンダという最高の修業相手を得た。さらに、魔狼の平原にて格上の相手と戦い続けた。

そして、それらを生かすための厳しい修練に自ら飛び込むほどの、強靭な精神力があった。

その結果が、この成長なのだ。しかし、修業の真価は数値の面ではない。今までは力任せだった魔力の運用が、遥かに研ぎ澄まされている。

それは魔術の行使を一度見ただけで分かった。火を点けるために使用した下級の火魔術。その術を唱えた際の魔力の流れが、驚くほど滑らかだった。しかも一瞬の溜めもない。

いくら無詠唱を持っていても、魔力を集中し、制御する工程はなくならない。以前のフランであれば、ほんの一瞬の溜めがあったはずなのだ。だが、それが無くなっていた。

『成長したな』

「ん!」

「オン!」

俺がフランを褒めてやると、ウルシが自分も忘れるなというように咆えた。その声は、遥か頭上から降ってくる。今やウルシの体高は10メートル以上あった。

『勿論忘れてないぞ。お前もきっと頑張ったんだな』

「オンオン!」

ウルシの進化にも驚いた。もしかしたら、フラン以上に。ぶったまげるってこういうことを言うのかもな。

それは何も大きさだけではない。俺がフェンリルから聞いていたゲヘナウルフ、ダークナイトウルフ。どちらでもない進化を遂げていたのだ。

ラグナロクウルフ。それがウルシの種族であった。どうやら特殊な進化を遂げたらしい。その証拠に、説明が不明となっていた。邪人と同じだが、ウルシが邪神の加護を受けているわけではない。

アナウンスさん曰く、全く新しい唯一種であるということだった。世界の理の中にさえ、情報が存在しないのだ。

しかもその能力がハンパない。ステータスが大幅に上昇し、1000を超える能力が複数あった。脅威度Bは確実だろう。

しかもスキルも大幅に増えている。基本は元々所持していたスキルの上位スキルが多いのであるが、固有スキルなども新たに獲得できていた。

目につくスキルだけでも以下の通りだ。

スキル

影転移:影渡りの上位スキル

再生阻害:噛みついて付けた傷の治りが遅い

身体大変化:身体変化の上位スキル

暴走:追い込まれると、暴走する

ユニークスキル

暗黒吸収:闇魔術、暗黒魔術に含まれる魔力の一部を吸収

捕食回復:食べることにより、傷を癒す

エクストラスキル

捕食同化:捕食吸収の上位スキル

固有スキル

次元牙:防御を無視してダメージを与える牙

同族威圧:同種、近縁種を無条件で威圧する

同族嫌悪:同種、近縁種から嫌悪される

封印無効:封印を無効化する

特におかしいスキルが、同族嫌悪、同族威圧だろう。より上位の種族に進化したんじゃないのか? 明らかに不利なスキルだった。しかも称号もおかしい。

邪人の捕食者は分かる。その名の通り、邪人を倒して食らったことで得たのだろう。だが、孤高の獣、唯一無二の2つは、孤独な存在にせめてもの慰めとして与えられる称号であった。

これもアナウンスさんに教えてもらったが、フェンリルさんが力の一部を与えたのだという。その結果、特殊な種族に進化したことで同種である狼を超越し、敬遠される存在となってしまったらしい。

『ウルシ……』

「オン?」

ウルシの純粋な目が俺を見つめる。10メートルの巨体になれるようになったとしても、その目は変わらない。

そこには孤独や悲壮感など、一切感じられなかった。

それにと、俺は考える。もし俺が誰かに哀れまれたら? 世界にただ一つの、人間の魂が宿った剣になって寂しいでしょう? なんて言われたら?

嬉しくもなんともないだろう。俺がほしい言葉はそんなものではないのだ。

『ウルシ、強くなった! 頼もしいぞ! これからも頼む!』

「オン!」