軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

498 現在の情勢

長い話を聞き終えたアマンダが、フランを再び抱き寄せてその頭を超高速で撫でている。

「頑張ったのねー!」

まあ、どこに行っても大きな騒動に巻き込まれて、何度も何度も死にかけたっていう話だからな。

それはそれとして、アマンダがフランの頭を撫でる勢いが止まらん。ハゲたりしないよな? もしくは火が付いたり? フランが嫌がっていないから止めんけど。

「あのケチ侯爵の陰謀を暴いたのは偉いけど、無茶しちゃだめよ?」

「ケチ侯爵?」

「アシュトナーよ! あの侯爵の依頼を何度か受けたことがあるけど、支払いが渋いのなんのって! でも、知人の紹介だったりするから、断れないのよね」

アマンダは素材調達などの仕事を何度か受けたことがあるそうだ。アレッサにはそれなりに影響力がある人物であったため、断り切れなかったらしい。

アマンダの場合、国や貴族との繋がりが太いからな。逆にそういったしがらみも多いのだろう。

アマンダは相当深い部分まで今回の顛末を知っているようだ。レイドス王国を相手にするにあたって、色々と情報が開示されたらしい。独自に持っているパイプで、情報を集めてもいるらしいしな。

俺たちが語るまでもなく、王都でのフランの活躍は耳にしているようだった。

どちらかというと、初耳になる獣人国での戦いの方が、アマンダ的には気にかかっているのだろう。

キアラが死んだ話をすると、本当に痛まし気な表情をしていた。キアラを悼んでというよりは、キアラを失ったフランの心情を慮ってだろうが。

「……フランちゃんは、本当に頑張り屋ね。でも、頑張りすぎないでね?」

「ん?」

「もし私の知らないところでフランちゃんに何かあったら、悲しい。だから、無茶し過ぎないで? だめ?」

「……ん。でも、無茶しないと強くなれないから」

「ふぅ……。そう」

いまの数秒で、何を言ってもフランの決意は変えられないと悟ったのだろう。アマンダは切なげに目を伏せている。

「ねえ?」

「ん?」

「今は、この場所で師匠の修復を待つ間、フランちゃんは修業をしているってことよね?」

「ん」

『そういうことだ』

「なるほど……。わかった。私も協力するわ!」

何やら決意の表情を浮かべたアマンダが、拳を握りしめて宣言した。顔にはやる気が満ちており、今にも模擬戦を始めるとか言い出しかねない。

『協力って、何をするつもりだよ?』

アマンダはレイドス王国に対する抑え役としてアレッサにいなくてはいけないはずだ。しかも現在は小競り合いが発生している最中であり、勝手な真似はできないだろう。

「だって、模擬戦の相手が欲しいんでしょ? 私が相手をするわ」

「おおー」

フランは嬉しそうだが、本当に平気なのか?

『いや、それはありがたいけど、アレッサはどうするんだ? それにレイドスとの戦争は大丈夫なのか?』

「ああ、そっちの話ね」

俺が尋ねると、アマンダが現在の情勢を説明してくれた。

国境を越えたレイドスの部隊はアレッサ勢に散々蹴散らされ、結局は全て撤退したそうだ。その後レイドスからは、一部の強硬派が暴発して申し訳ないという旨が書かれた書状が届けられたという。

国の意思じゃないよ、少数の馬鹿がちょっとやんちゃしちゃっただけだよ。そう言い張るつもりなのだろう。書状の後には使者とともに、首謀者とされる人物の首が送られてきたそうだ。

「実際は、レイドス貴族の政争に負けた、今回のことに関係ない下級貴族の首っていう話だけどね」

『スケープゴートってことか』

アレッサの首脳部も、クランゼル王国から派遣された交渉役もそのことは分かっている。だが、分かっていながらもレイドスの言い分を認めざるを得ないらしい。

「なんで? 悪いのは向こう」

「そうなんだけどね~。こっちにだって、戦争を継続させるメリットがないのよ」

国内が大混乱しているこの時期に、大国相手に戦争を続けることなどできるはずもない。そんな余裕があるなら、王都などの復興に力を入れる方がマシである。

面子の問題はあるが、レイドスが一応謝ったことで、それも解消された。賠償金などもそれなりに得ることができるそうだ。

レイドス王国も最初からそこまで織り込み済みであったのだろう。

上手く国境付近を切り取ることができれば最良。失敗したとしても、クランゼル王国が逆侵攻してくる可能性はない。その余裕がないからだ。賠償金は支払うことになるが、貴重な戦闘データを得ることができる。

「現在はジャンが国境線の警戒、他の冒険者が国内に入り込んだと思われるレイドスの工作員の捜索を行っているわ」

「アマンダは?」

「私は他の冒険者の代わりに、上級冒険者用の依頼や、緊急依頼をこなしてるの。でも、ちょっと張り切りすぎちゃって、依頼が無くなっちゃってねぇ」

だったら工作員を探せばいいと思ったが、有名人で目立つアマンダは、そういった仕事には不向きであると判断されたらしい。

「失礼よね? 私だって、忍ぼうと思えば忍べるのよ? それを戦闘しか能がない脳筋みたいに……」

しばらくネルやギルマスへの文句を呟いているアマンダだったが、すぐに気を取り直したらしい。

「ま、そのおかげでここに来る時間もあるわけだし、むしろ感謝しないとね!」

つまり、アマンダはここに常駐するわけではなく、数日おきにアレッサと魔狼の平原を行き来するつもりであるようだ。

「私とだけ模擬戦をやっていたって、偏るでしょう? 模擬戦、魔獣狩り、基礎修業、私との平原探索。これを繰り返すのがちょうどいいと思うわ」

『それもそうだな』

「ん」

俺とフランが頷くと、アマンダがいそいそと鞭を準備し始めた。

『え? もうやるのか?』

「当然でしょ!」

「ん。当たり前」

ああ、戦闘狂たちのことをまだ分かっていなかった。少し休憩してとか、そんな常識は通じないのだ。