軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

488 スーパーイナズ〇キック

俺たちの視線の先には、空を蠢きながらこちらに近づいてくる白い煙の姿があった。グレーター・ヴェノム・ガストだ。

未だにインビジブル・デス、ワイト・キングは健在である。

脅威度Bの魔獣3体に囲まれた状態だった。

ランクA冒険者の基準の1つが、脅威度Bをソロで倒せることだったはずだ。つまり、アマンダやフォールンドが、死力を尽くして1対1で戦う相手が3体ということだった。

『まずいな』

戦いを続行するか? インビジブル・デスはまだかなりの傷を負った状態だし、ガストは厄介だが攻撃力は低い。全く戦えないわけではないだろうが……。

(師匠、煙の魔石は?)

『俺には感知できん! フランたちはどうだ?』

(だめ)

(オウン……)

つまり魔石はどこかに隠したまま、煙をここまで伸ばせるってことか? それとも、煙の中にある魔石を、感知されないように隠蔽している?

「じゃあ、あっちのアンデッドの魔石は?」

『それもダメだ!』

脅威度Bの魔獣にもなると、魔石の位置を隠す術を持つらしい。ワイト・キングやその配下たちからは魔石の気配すら感じ取ることができなかった。まあ、こっちは術者タイプであるようだし、魔力を隠蔽するのもお手のものなのだろう。

「アイシクル・バースト!」

「「「アイシクル・バースト!」」」

「はぁ!」

『考える暇もないか!』

とっさに火炎魔術で防いだために問題なかったが、悠長に悩んでいる暇はなさそうだった。

(師匠! 上に!)

『なるほど、分かった』

「ん!」

俺はフランの指示通り、転移で一気に上昇した。その後、念動エアライドでさらに高度を上げていく。

『どうだ?』

「煙は追ってくる」

『だが、ワイトどもはこないか!』

「デカブツの攻撃もかわしやすい」

インビジブル・デスの攻撃は中距離が最も回避しやすいようだ。攻撃時の魔力を察知できるギリギリの距離で、回避するだけの余裕もある。近すぎると余裕がないし、離れすぎると察知できないのだ。

そして、空を飛ぶ能力がないワイトたちの魔術も、この高度までは届かないらしい。もう100メートル以上は昇ってきただろうか。いや、届くことは届くが、さすがにこの高さの相手に正確な狙いを付けることは難しいらしい。

ガストは倒せないが、少しの間は無視していてもいい。それに、ワイトたちとガストは相性が悪いはずだ。アンデッドは魔力を吸収されると存在が保てなくなるはず。

実際、ワイト・キングたちは白い煙を避けるようにやや移動している。

だとすれば、ガストとワイトが牽制し合っている間に、インビジブル・デスをどうにかすれば切り抜けられるかもしれなかった。

「オンオン!」

『ウルシ? どうした?』

攻撃を躱しながら、ウルシが何やら訴えてくる。

「ガル!」

「もしかして、デカブツの魔石がどこにあるか分かった?」

「オン!」

『なるほど!』

インビジブル・デスの体内に侵入した時に攻撃していただけではなく、魔石位置の特定までしていてくれたらしい。

「師匠、デカブツだけはここで仕留める」

『……わかった』

俺としては一旦仕切り直した方がいいと思うんだが、フランがやる気なら付き合うだけだ。

「剣神化は使わない」

『なに?』

「ここで剣神化を使っても、一時しのぎにしかならない。あれを使わなくても、勝つ。どうすればいい?」

フランなりに連戦を戦い抜くためには消耗を抑えなくてはいけないと考えたのだろう。ただ、剣神化を使わずにインビジブル・デスを倒すにはどうすればいいかが分からないらしい。

『わかった。こういうのはどうだ――』

「なるほど――」

俺は思いついた作戦をフランに説明する。かなり難しくはあるが、フランも乗り気になったらしい。

『やれそうか?』

「やってみせる!」

『よし。ウルシは魔石の位置を攻撃して教えてくれ。俺たちはそこに攻撃を仕掛ける』

「ん!」

「オン!」

まずはウルシが全速力で降下しながら、暗黒魔術の槍を放つ。これはダメージを求めてではなく、俺やフランに魔石の位置を教えるためのものだ。なるほど、中心よりもやや尻尾より。水晶が最も分厚い部分か。

「ガルル!」

ウルシはそのままワイト・キングたちに向かって駆け寄った。奴らを牽制しつつ、魔獣たちの意識を引き付けるためだ。影潜りを多用しながら、回避重視で立ち回るウルシに、ワイト・キングは完全に引き付けられていた。

「いく」

『おう!』

そして、俺とフランが密かに行動を開始する。

『まずは動きを止める!』

「ん」

俺の大地魔術がインビジブル・デスの四肢の下に穴を空け、その動きを封じた。あれでかなり素早いからな。俺たちの作戦を実行するには、動きを止めないとならないのだ。

インビジブル・デスの全ての足が大地にずっぽりと嵌まり込み、さらに締め上げることで一時的に身動きを取れなくする。

「ブモォ?」

「はあああああ!」

そこに、フランの放ったカンナカムイが降り注いだ。太い雷の柱が、インビジブル・デスの水晶を剥ぎ取った。俺のカンナカムイよりは威力が低いものの、狙い通り水晶を剥すことには成功している。

フランが術を担当したのは、俺が次の攻撃に集中するためだった。

『いいぞフラン!』

全開の念動カタパルトだ。風魔術と火炎魔術、さらには雷鳴魔術マグネティック・マニピュレーションを併用する。

以前から磁力を用いた物体加速は使っていた。王都でファナティクスに止めを刺すときだって、併用していたのだ。ただ、それは火炎魔術や風魔術の加速に比べると、非常に小さい物でしかなかった。

しかし、インビジブル・デスに色々とヒントをもらったからな。念動で作った長い砲身に、インビジブル・デスを真似してコイル状にマグネティック・マニピュレーションを纏わせる方法を使ってみた。これによって今まで以上の加速を得ることにも成功している。まあ、制御が数段難しくなり、消耗は倍以上になったが。

『どりゃあああぁ!』

射出直後、フランによって鱗を破壊されたインビジブル・デスの甲殻に俺の刀身が深々と突き刺さっていた。しかし、貫通はできない。

「ブモオモオオオオオ!」

『フラァァン!』

「ん!」

だがこれは想定内だ。むしろ、ここからが作戦の要である。

俺を排除するために光魔術を放とうと魔力を集中させるインビジブル・デスに先んじて、高空からフランが全速力で駆け下りた。

閃華迅雷を纏い、使える魔術もすべて利用し、落下の速度も生かし、まるでフラン自身が雷と化したかのような速さである。

その先には俺がいる。正確には、形態変形で柄の部分をお盆のような形に変形させた俺だ。

「はああああ!」

超高速で宙を駆け下りたフランが、その勢いを一切殺さず、俺の柄に着地するような格好で蹴りを叩き込んだ。

「ブモオオオオオオオオオォォッ!」

元々インビジブル・デスの体に突き刺さっていた俺が、フランのスーパーイ〇ズマキックによって真上からの衝撃を与えられ、さらにその体へと押し込まれた。

「ボモモオオ!」

「ぐうううう!」

フランの足の骨が粉砕される音と、巨獣の甲殻が砕ける音。そして俺の柄や刀身が砕ける音が合わさり、耳障りな不協和音を立てている。

その強烈な蹴りによって俺の耐久値も一気に減らされてしまうが、気にせずに形態変形でさらに刀身を伸ばした。切先に魔石を断ち割る感触がはっきりと感じられる。

「ぐぅ……!」

あまりの衝撃に、フランの足がマズい方へと折れ曲がっていた。俺の耐久値もかなり危険な水準だ。

『だが、やったぞ!』

「ブ……モ……」

かつてない満足感。流れ込んでくる魔力の量は、過去に覚えがないレベルだった。以前倒した悪魔を超える。同じ脅威度Bの魔獣でも、こっちの方が格上なのだろう。

フランとウルシのレベルも上がったようだ。ただ、今確認している余裕などない。

俺は即座にインビジブル・デスの死骸を収納すると、そのままフランの下に戻る。

『とりあえず、この場所を離脱する!』

「ん……」

「オン!」