軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

457 超越者同士の戦い

すでに町中のバカデカい魔力は消えている。疑似狂信剣は全て自爆して果てたのだろう。残りはベルメリアだけだ。

そのベルメリアの現状を確認するために王城前の広場に近寄ろうとしたんだが、無理だった。なにせ、そこはすでに地獄の様相を呈していたのだ。

というか、王城前広場ってどれくらいの広さだったっけ?

元々は石畳が整然と敷かれた、綺麗な広場があったはずなんだが……。現在ではボコボコとクレータの開いた、剥き出しの地面が延々と広がっている。

いや、一部はまるでロードローラーで整地したかのように真っ平らだな。これには獣人国で見覚えがある。間違いなくアースラースの仕業だろう。

周辺の屋敷も、強固な結界で守られていたはずの王城も完全に崩壊し、どこからどこまでが広場だったのか分からなかった。しかも現在進行形で破壊は続いている。

ドゴオオオオオオオオォォ!

ゴオオォォォォォォオォン!

アースラースが開放状態のガイアを振るい、破壊をまき散らしている。広範囲が重力に押しつぶされたかと思うと、巨大な岩の弾丸が天に向かって撃ち出される。そして、地上に落下して大きな被害をまき散らすのだ。今も目の前で貴族の屋敷が下敷きになった。

すでに暴走しているかと思ったが、遠目にもその兆候は確認できない。狂鬼化が発動する際にアースラースを包み込んでいた、血のように赤々しい、不吉で禍々しいオーラが見えない。周辺の被害を気にせず戦わなくてはいけない程、相手が強いということなのだろう。

対するベルメリアは――あれはベルメリアなのか? 高速移動を繰り返しているので、僅かに動きを止めた瞬間にかろうじてその姿を確認できるが、外見があまりにも変貌し過ぎてしまっている。

水色の髪の毛はそのままだが、全身が堅い鱗で覆われていたのだ。腕なども肥大化して節くれ立ち、明らかに人間の範疇を逸脱している。しかも背には巨大な翼である。竜の翼と同種の物であるのならば、魔力を放って高速飛行も可能だろう。

解けたザンバラ髪の隙間から覗く目は、完全に爬虫類の目である。操られているせいで、殺意や敵意がベルメリア自身からは感じられない。ただそのせいでなんの感情も読み取ることが出来ず、より爬虫類感が強かった。

大地魔術を主体に戦うアースラースに対して、ベルメリアは多彩な術を放っている。なぜ空を飛ばないのかは分からないが、地上を駆けまわりながら魔術を連発していた。

そして、ベルメリアが太陽を顕現させる。

それはまさに地に堕ちた太陽の如く、空気を焦がし、大地を蒸発させた。離れた場所にいても凄まじい熱が叩きつけてくる。一瞬で俺の分体が消滅してしまう程の熱だ。

俺の横に転がる石柱の残骸が泡立ち、グズグズと溶けて崩れ始めていた。まだ距離があるはずなのに耐久値が減っていくのを感じ、俺は慌てて距離を取った。

そこに込められた魔力は、俺が全力で放つカンナカムイさえ軽々と超えているだろう。火炎の極大魔術だろうか? いや、今のベルメリアであれば、Lv8、9の術でもこの程度は可能かもしれない。

どちらにせよ、俺では不可能なほどの破壊魔術である。

小型の太陽の中から、アースラースが飛び出してきた。全身から煙を上げ、腕や顔の一部が焼け爛れているが、命は無事である。あの中からどうすれば命を失わずに脱出できるのか、想像もできんな。

アースラースは重力を操って跳びながら、疑似太陽に向き直る。直後、アースラースがガイアを横薙ぎにすると、疑似太陽が一気に収縮して、あっさりと消滅した。超重力で疑似太陽を打ち消したのだろう。

跡にはクレーターとも違う、真球状の綺麗な穴が残っていた。その穴のサイズは疑似太陽の直径の数倍はある。50メートルは下らないはずだ。触れていた部分はおろか、周囲の大地も綺麗に蒸発させて消滅させてしまったらしい。

次にアースラースが反撃に出た。

疑似太陽があった場所に、今度は小さな黒い球体が生み出される。本当に小さな、30センチ程の球だ。だが、直後に異変が起きた。

周囲の瓦礫や大地が、凄まじい勢いで球体に向かって集まり始めたのだ。どうやら超重力によって周囲を引き寄せているらしい。

『やべっ!』

俺も僅かに引っ張られる。俺は再度転移を使い、その場から離れた。影響を与える範囲で言えば、ベルメリアの火炎魔術以上だ。

その間にも球体は引き寄せた大地や、王城のものだったと思われる瓦礫を纏うことで膨張を続け、巨大に育っている。治まらない地響きは、この近辺だけではなく、広い範囲で大地が歪むことで引き起こされているのだろう。

『ベルメリアは……』

いた! 宙に浮かぶ超巨大な岩塊の真下。大地に四つん這いで踏ん張っている。だが、次々と岩塊に向かって引き寄せられていく瓦礫に巻き込まれ、ついには大地から体が離れてしまった。

岩塊に叩きつけられたベルメリアを即座に新たな瓦礫が覆い尽くし、そのまま内へと飲み込んでいく。超重力と、引き寄せられた岩塊の重量により、凄まじい圧力だろう。

これでアースラースの勝利かと思ったら……。

ドオオオォォォオン!

空中に浮かぶ小山のような岩塊が内側から爆ぜた。弾け飛んだ大小様々な岩が周辺に降り注ぐ。その範囲は貴族街全域に及んでいるだろう。

小さいとはいえ、圧縮されて押し固められた岩々である。屋敷の屋根や壁は悠々と貫くだろうし、人に当たれば最低でも大怪我だ。近場は――元々荒野状態だし、今さらと言う感じだな。

交互に攻撃し合っているわけではないだろうが、次にベルメリアが水魔術を繰り出した。八つの頭を持った巨大な水の蛇が生み出され、アースラースに襲いかかる。

頭だけでも10メートル近い水蛇だったが、ガイアの一振りで吹き散らされてしまった。しかし、ベルメリアの攻撃はそれで終わりではない。

八頭の水蛇によってアースラースの動きを制限し、そこに本命の攻撃を放ったのである。それは俺にも馴染のある術だった。いや、あれを俺の使う物と同じだと言ってしまって良いのかは分からないが……。

『カンナカムイか……!』

ミューレリアとの戦いでも感じた敗北感。ただ、あの時はいつか追いついてみせるという希望のある敗北感だった。

だがベルメリアの放ったカンナカムイを見た俺にあるのは、今の俺では到底追いつけないという虚無感だ。追いつくビジョンさえ思い描けない。そもそも敗北と言って良いのかどうかさえ疑問だ。最初から勝負にさえなっていない、圧倒的な差があった。

ミューレリアの使っていた収束タイプのカンナカムイよりも、より高密度で高威力の極雷でありながら、その太さは数倍はある。

巨大な雷の柱が大地に突き刺さり、大爆発を起こした。爆風が俺のいる場所まで襲いかかってくるほどの威力である。

なるほど、極大魔術だ。これこそが、極大魔術である。ただの1撃で軍勢を壊滅せしめる程の、人の極限を超えた魔術。これこそがカンナカムイの本来の威力に違いない。

俺もそれなりに常識外れの存在だったはずなんだが、目の前の戦いはそんな俺から見ても常識という物が通用しなかった。広範囲大量破壊攻撃を互いに繰り出し合い、それでも決着がつく様子はない。

ダメージは見て取れるが、再生能力が高すぎて即死でなければ互いの命を奪うところまでは難しいのだろう。

しかし、戦いが終わるまで静観していられない。多少の無茶をしてでも、早期に戦いを終わらせなくてはいけない理由ができてしまったのだ。

『アースラースの角、薄っすら赤く光ってるよな?』

アースラースに暴走の兆候が見えていた。