軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

455 自爆

火炎魔術で周囲を焼き払う剣士。しかもただの火炎魔術ではない。大爆発を起こす術を無詠唱で、複数同時起動させていた。

一発で家屋数軒を破壊する魔術が十発以上同時に発動し、周辺の家々を木っ端微塵に吹き飛ばした。

逃げ遅れた人々が炎に巻かれ、悲鳴を上げている。

「あいつ……っ!」

その破壊行為を止める為、エリアンテが飛び出した。このままでは、人々を逃がす時間を稼ぐために自分を犠牲にしてでも男を止めようとするだろう。エリアンテの悲壮な顔を見れば、勝てないことを覚悟しているのだと分かった。

「やめなさい!」

「がぁぁ!」

「ぐうぁ!」

だが今の剣士は、何故か疑似狂信剣が神剣開放状態になったことで、突き抜けた強さを得ている。エリアンテが命を賭したとしても、時間稼ぎすら難しかった。

奴の放った剣の衝撃波によって10メートル近く弾き飛ばされて呻いている。手にしていた大剣の刀身が真っ二つになっているが、そのお陰で吹き飛ばされるだけで済んだのだろう。

しかもそこに容赦なく火炎魔術が打ちこまれた。無数の火炎弾が逃げ場なくエリアンテに降り注ぐ。

『ちぃ!』

俺は咄嗟に飛び出して、念動で火炎魔術を吹き散らした。

「え? なに……?」

勝手に動く剣を見て、エリアンテが驚いている。ええい、仕方ない!

俺は分体創造を使用して、エリアンテたちの前に出た。怪しがられるだろうが、インテリジェンス・ウェポンだとばらすわけにもいかん!

俺はまるで転移してきた風を装い、自分の柄を掴む。

『怪しいものじゃない。俺はフランの知人だ』

「カレー師匠じゃないですか!」

コルベルトは1度会ったことがあるだけの俺を覚えてくれていたらしい。コルベルトの言葉を聞いて、エリアンテの顔からも疑いの色が薄れる。

『奴とまともに戦ったら、瞬殺されるぞ! わかっただろ!』

「だからって……!」

『俺が行く! これでもフランの師匠だ、時間稼ぎくらいはできる! その代わりフランをキッチリ逃がしてくれよ! 頼んだ!』

「あ。ちょ――」

剣士の目がこちらを向いたのが分かった。これ以上問答している暇はない。俺はエリアンテたちの返答を待たず、剣士に向かって駆け出した。

これでエリアンテたちに躊躇されたら困るんだが――。

そこら辺はさすが冒険者。即断即決で撤退を始めた。

『さて、奴が自滅まで俺に付き合ってくれるかが問題なんだが――』

そこに赤い光線の雨が降り注ぐ。火炎を収束させて撃ち出すフレア・ブラストを20発程同時起動したのだろう。

俺の背後にあった石造りの建物がドロドロに溶けて穴だらけになって、最後は爆発炎上する。

しかし俺には一切のダメージがなかった。僅かに回復していた魔力を使って、ディメンジョン・シフトを発動させていたのだ。

次いで、俺を中心に風が渦巻き始め、すぐに巨大な竜巻へと成長する。暴風魔術だろう。周辺の瓦礫を巻き込みながら、より太く大きくなっていく。

しかし、このままだと町への被害がヤバそうだ。俺は転移と空中跳躍で一気に飛び上がり、空中に身を晒した。奴から見れば完全に隙だらけだろう。

剣士の顔には表情がなく、俺が無事なことに驚いているかどうかもよく分からない。だが、その矛先がこちらに向いたのは間違いないだろう。俺に向かって魔術が放たれた。

インフェルノ・バーストを同時に放って融合増幅させた、巨大な業火の柱が俺の姿を飲み込む。リッチ戦でアナウンスさんが放った攻撃と同種の、それでいて数倍の威力がある術である。

だが、その凶悪な攻撃でもディメンジョン・シフトを使っている俺には当たらない。魔力がガンガン減っていくが、それも数分持ちこたえればいいと分かっているからこその大盤振る舞いだった。

『しっ!』

俺に目を引き付けるために反撃も行う。放ったのは下位の雷鳴魔術だ。効くとも思えないが、派手で目を引くだろう。

案の定、剣士はこちらに反撃を加えてくる。今度は俺の周辺を赤い火球が取り囲んだかと思うと、一斉に膨張して爆ぜ飛ぶ。フレア・エクスプロードの同時発動により、空に爆炎の花が咲き誇った。

『効かねぇよ!』

ドオオォォ!

俺の反撃に、さらなる反撃が重ねられる。

やはり暴走状態で思考能力が低下しているようだった。奴にきちんとした判断能力が残っていれば、効果的な攻撃を繰り出さない俺なんか無視して周囲を攻撃するだろう。

能力はランクA冒険者オーバー。しかしお頭は猪突猛進の馬鹿。俺にとったら与し易い相手だった。

『このまま奴の目を引きつけながら、空に無駄打ちを続けさせる!』

だが、時空魔術を使用できる俺だから何とかなっているのだ。他の場所ではいったいどれだけの被害が出ているか……。

そして約3分後。

魔力の残存が気になりだした頃、ようやく奴の生命力が底を突いた。本当に長い3分間だった。

予想以上に奴の攻撃が激しく、ディメンジョン・シフトに割く魔力が大きかったことが理由である。奴が斃れるのがあと10秒遅かったら、一か八か転移からの攻撃を試す羽目になっていたはずだ。

そして、剣士の生命力が尽きたその瞬間だった。

ドオオオォォォォォォォォン!

『うおぉ!』

いきなりの大爆発。激しい爆風が家々の瓦礫を遥か上空まで巻き上げる。

奴が火炎魔術を放ったのかと思ったが、そうではない。火炎ではなく、大量に放出された魔力によって起きた爆発だったのだ。

どうやら剣士が死んだことで、その内で荒れ狂っていた疑似狂信剣の魔力が制御を失い、一気に溢れ出したようだった。

上空から見ると、巨大なクレーターが出来ているのが見えた。元々、魔術によって周辺は壊滅状態だったが、瓦礫さえ残っていない。40軒以上の家が消滅し、その周辺にも甚大な被害が出ている。衝撃波で家具が倒れたとかも併せたら、被害は数百軒に及ぶだろう。

だが、俺が地面に下りる間もなく、王都の中に連続で爆音が響き渡った。そちらを見ると、放出された魔力が柱のように立ち昇っているのが見える。

ここ以外でも、暴走した剣士たちが大爆発を残して倒れていっているらしい。断続的に爆音が響き続け、立ち昇る魔力の柱が50以上は確認できた。貴族街で特に多いが、住民区画や商業区画でも爆発が起きている。

特に激しいのが王城の近くだ。特に凄まじい魔力同士がぶつかり合っている近辺で、魔力爆発が集中して起こっている。

『自爆テロじゃあるまいし、いったい何が目的なんだよ!』

王都を破壊するのが目的なのか?

『フランは無事だろうな!』