軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

418 師匠の価値

魔石オークションの午前の部の最後。

当日持ち込みや、鑑定不能品などが出品される、掘り出し物ゾーンである。

「お次はこちら! 鑑定しても全てが不明と出てしまう、謎の魔石! 出品者である冒険者も、盗賊のアジトから押収したため、この魔石の持ち主であった魔獣に関しては一切の情報がありません!」

運ばれてきたのは、小振りな魔石であった。しかし、その形はそれなりに整っており、魔石と言うよりは宝石としての価値を期待して出品されたらしい。

「最初は1万から!」

パラパラと入札は入るが、そこまで人気じゃない。持ち主の名前が分からないというのがネックなのだろう。だが、俺はそれを絶対に落札する気であった。フランに頼んで、入札してもらう。

そのまま競合し続けること3分。謎の魔石を12万で落札に成功した。

(落とした)

『おう。サンキューな。これでイビル・ゴブリン・ジェネラルの魔石が手に入った』

そう、謎の魔石はゴブリンの上位種。イビル・ゴブリン。それもジェネラルの物だった。イビル種はより邪気が強いせいで、鑑定しても不明って出るからな。誰も分からなかったんだろう。

しかし、俺の場合は天眼スキルのおかげで名前程度なら読み取ることができるのだ。邪人の魔石では俺の中の謎の魂さんの回復には役立たないから、申し訳ないけど、ジェネラルならスキルを期待できるかもしれないからな。

その後は、コダートが順調に魔石を落札してくれた。最初から狙っていた8つ中、7つをゲットである。唯一失敗したのが、ケットシーという妖精種の魔石であった。

脅威度Cの魔獣な上に、数も少ない。さらに色も形も最高峰ということで、相場の10倍以上に値段が吊り上がってしまったのだ。特殊スキルなども期待できそうだったが、さすがに仕方ないよね。

最も欲しかった悪魔の魔石はなんとか落とすことができたし、コダートには感謝である。今日一日で1000万ゴルド以上散財したが。まあ、お金は使わないとね。

俺たちはオークション会場の前でコダートと別れ、宿に向かう。

『なあなあ! 早速宿に戻って、吸収しようぜ! な?』

「ん」

『いやっふー!』

いやー、テンション上がるわー。なにせ、邪人の魔石を除けば一番安い物でも脅威度D。脅威度Cも3つゲットしている。しかも悪魔の魔石は伯爵級。つまりアレッサで倒した悪魔と同じ脅威度Bだ。

これだけ質の高い魔石を一度に吸収できる機会なんてそうそうない。早く吸収したいのだ!

『マッセッキ! マッセッキ!』

(師匠、楽しそう)

なんてやっていたら、後ろから誰かが駆け寄ってくる気配を感じた。一瞬身構えかけたが、すぐに警戒を解く。相手が完全に素人だと分かったからだ。

気配も消さず、それどころか走る音が普通に響いている。雑魚冒険者未満。完全に一般人だろう。

「お待ちください!」

走り寄ってきたのは、初老の男性だった。仕立ての良いゆったりとした服を着た、文官風の男である。走るたびに腹の肉が揺れている。

「お、お時間宜しいですか?」

「ん?」

「そうあなたです! 耳寄りなお話がございまして! 絶対に損はさせませんよ? ぜひ聞いてはいただけませんか?」

(師匠?)

『まあ、少しだけなら』

本当は早く宿に帰りたいけどね!

「ん。ちょっとだけなら」

「おお! では、あちらへ。ささ、どうぞどうぞ」

なんと馬車を用意していたか。準備がいいな。だが、こいつ馬鹿なのか? 自分の名も名乗らず、いきなり馬車に乗れ? それで馬車に乗る阿呆がいたらお目にかかりたいものだ。

いや、子供のフランを侮っているのだろう。つまり、フランの素性は調べてないらしい。いったい何のつもりだろうか? 耳寄りな情報とか、損はさせないとか、詐欺師にしか見えん。

男を鑑定してみると、悪人という感じではないが……。一応貴族だな。男爵となっている。

「名前は?」

「え? ああ、申し遅れました。私、ベッケルトと申します」

貴族が家名も名乗らずへりくだっている。怪しさしかないな。

「話って何?」

「えー、何分長くなりますので」

「ここでいい」

怪しい人に付いて行ってはいけないのだ。

「しかしですね……」

「じゃあ、聞かない。帰る」

「ああ! お、お待ちを! 後悔しますよ!」

「……脅すつもり?」

「ち、違います! ああ、そんなつもりではないのです! ちょ、ちょっとお待ちください! おい! 出てこい!」

フランが踵を返すと、男が慌てた様子で馬車の中に声をかける。すると、中から屈強な男たちが2人降りてくる。気配で分かっていたが、明らかに馬車の中でフランを脅すか、襲うつもりだったよね?

しかしフランが馬車に乗るのを断固拒否したため、こちらに威圧感を与える為に急遽出てくるように指示したらしい。

男2人が、フランを囲むように仁王立ちする。これ見よがしに腰の剣を鳴らして見せたり、怒っているかのように顔をしかめている。こういった仕事に慣れているようだ。

実力的には大したことがない。見せかけの筋肉と、ファッションにしかなっていない武器。剣術よりも、演技スキルの方が高いのがいっそ滑稽だ。昨晩ベイルリーズ伯爵家にいた一般兵士たちなら、1人で制圧可能だろう。

「それで、話って?」

「え? それはですね」

全くビビッていないフランに、逆にベッケルトが驚いている。しかし、彼も目的を思い出したのか、その場で声を潜めながら自分がフランに声をかけた理由を話し始めた。

「実はですね。我が主があなたの背負っている剣を所望しているのです」

「主? 誰?」

「それは明かせないのですが……。貴方の剣を譲っていただけるのであれば、5000万ゴルド支払います。いい話でしょう?」