軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

415 魔力放出の使い方

フランが俺を振りかぶった直後、魔剣から凄まじい光と魔力が発せられた。全身から魔力を放出したのだ。目くらましだけではなく、かなりの攻撃力を伴った全方位攻撃だ。

『ちっ!』

障壁で防ぐが、地下道全体が揺れているのがわかる。すぐに魔力放出は収まったが、すでに魔剣の姿はそこにはなかった。

魔力放出でこちらを攻撃するだけではなく、その勢いを利用して移動したのだ。

「飛んだ?」

『逃がさん!』

魔剣はそのまま勢いを殺さず、凄まじい速度で地下道の入り口目指して飛んでいく。その速度は、俺の全力念動カタパルトに匹敵するレベルだ。

転移は――ダメだ。あの速度では、俺たちが転移した直後にもうその場にいないだろう。

俺は咄嗟に大火力の魔術を放とうとして、この場所を破壊するのはまずいと思い直す。結局、ファイア・ジャベリンを連続で撃ち出した。20本以上の炎槍が魔剣めがけて降り注ぐ。

だが、魔剣は感心してしまう程の鋭い動きで全てを避けるのだった。高速飛行しながら体を捻り、回転するような軌道を描く。あれだ、バレルロールってやつだろう。

そして、全ての攻撃を回避した魔剣は、勢いを殺さずにそのまま外へと飛び出して行ってしまう。

『追うぞ!』

「ん!」

慌てて後を追うと、外では阿鼻叫喚の光景が広がっていた。

「うわああぁん!」

「イタイイタイ!」

「た、助けて……」

「血、血が……!」

地下道の入り口付近で、十人以上の人間が血を流して倒れていたのだ。中には腕がもげ、瀕死の者もいる。

それだけではなく、遠くからも人々の悲鳴が聞こえていた。

『あ、あの野郎……。行きがけの駄賃に一般人を攻撃していきやがった!』

「……治す!」

『ああ! ウルシは魔剣を追え!』

(オン!)

俺たちは追跡を断念し、回復魔法で倒れている人々を癒していった。これが魔剣の狙いだろうと知りながら。

確実に知能があるな。そうでなければこれ程嫌らしい足止めの方法を思い付かないだろう。いよいよあの剣が俺の同類だという可能性が高まってしまった。

「あの剣、嫌い」

『俺もだよ』

「絶対に叩き折る!」

『次に出会った時に決着をつければいい』

「ん! 今度は逃がさない!」

『おう』

それにしても、逃走時の魔剣の挙動はまるで俺の念動カタパルトのようだったな。

だが、その原理は全く違う。どうやらあの魔剣は圧縮した魔力を噴出して、推進力を得ているらしい。

俺の念動カタパルトがそのネーミングの通り、最初に念動を爆発させて自らを射出し、その後は念動で舵を取るのに対して、あの魔剣の飛び方は常時魔力を噴き出し続けるロケットエンジン方式とでも呼べる方法だった。

多分、戦闘時にハムルスの肉体限界を無視したような異常な動きをしていたのも、この魔力噴出能力によるものだろう。

以前、ウルムットのダンジョンで戦った昆虫型魔獣のディザスター・ボールバグが、魔力放出スキルを使って急加速と方向転換を行っていたが、原理は同じだと思われた。

そして、魔剣が逃走時にしか使わないのも納得だ。なにせあれだけの速度を生み出すには凄まじい魔力が必要だろう。少なくとも、長時間連続使用を続けるのは無理なはずだった。

さらに、加速力はあっても小回りは利かないだろう。動かない相手を攻撃するならともかく、フランのように高速で動き回る相手に当てるのはかなり難しい。もし躱されたら、その間はハムルスも魔剣も無防備になるからな。その辺が弱点と言えそうだ。

人々の救護が終わり、とりあえず地下道に戻ってみる。すると、フランが小さく声を上げた。

「あ」

『どうした?』

「嫌なのが消えた」

『嫌なのって、地下道に入った時に感じたって言うやつか?』

「ん」

やはりそれも魔剣が関係していたんだろうな。相変わらず俺には全くわからんが。それとも、俺が魔剣に対して抱いていた嫌悪感が関係しているのだろうか。だが、フランとウルシは魔剣やハムルスに対しては、俺のような感情を感じてはいなかったらしいし……。

『わからんな』

「ん」

とりあえずハムルスの遺体をどうするかね。衛兵の詰め所に引き渡すのがいいのか? まさか殺人犯扱いはされないと思うが、拘束される可能性は高い。

この後どうするか悩んでいたら、地下道に誰かが入ってくるのが分かった。しかも両方の入り口から何人も。地下道に下りてきたのは、一般人たちのようだ。

考えてみたら、あれだけ激しい戦闘をしていたのにもかかわらず、誰も入ってこないのは不自然だったな。

それに、歓楽街にあるこの地下道にあれだけの時間、人っ子一人入ってこないなんてありえないだろう。

もしかして人の出入りを拒むような術やスキルが地下道にかけられていたのか? 人払いの結界的なやつだ。そう考えると、フランとウルシだけが感じた違和感も理解できる。俺は生物じゃないので、全く感じなかったということは有り得そうだ。

その場で考え込んでいると、見知った気配が地下道に下りてくるのが分かった。魔剣が逃げて行ったのとは逆側、俺たちが最初に入ってきた方の入り口だ。

「フラン、大丈夫なのですか?」

「黒雷姫、無事か?」

「ベルメリア。フレデリック」

それは、先程別れたばかりの2人であった。