軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

409 ベルメリアとコルベルト

謎の襲撃者、ベルメリアとフレデリックを無力化するため、雷鳴魔術を使用することにした。

「はぁっ!」

『喰らえ!』

俺たちが発動した雷鳴魔術サンダーチェインは、雷の鎖によって相手を縛り上げ、麻痺させることで自由を奪う術だ。範囲はそこまで広くはないが、多重発動して相手を囲むように放つことで、その短所を補っていた。

中級以下の魔術であれば、今やフランが2発、俺が3発は瞬間発動可能である。本気を出せば、俺は5発は放つことが出来た。

「くあぁ!」

「むぅ!」

7条の雷鎖がのたうつ蛇のように暴れ回り、ベルメリアたちを確実に絡めとる。次々と雷鎖による電撃をその身に受けたベルメリアは、その場でぐったりとして動かなくなった。

だが、フレデリックがしぶとい。自らに向かってきた雷の鎖を、魔力を纏わせた剣で斬りはらっている。魔力放出スキルの応用だろう。

『やるな。こっちも多少無理しないとな!』

「!」

「……くっ! 無詠唱魔術! しかもこれ程連発できるのかっ……!」

さらに俺たちが放った10発の雷鎖。7本目までは斬り払ったのだからさすがだな。だが、いくらフレデリックでもこの数は防ぎきれなかったらしい。サンダーチェインがその体に巻きつき、フレデリックの意識を奪っていた。

ただでさえ威力よりも麻痺させることを重点に置いた魔術だ。それを普通ではありえない連発で食らったのである。見たところ麻痺耐性がそれほど高くないベルメリアたちに抗うことは難しかっただろう。狙い通りだった。

並んで地面に倒れ伏す2人に、俺たちはダメ押しの魔術を放つ。大地魔術で体を拘束するのだ。蔦のように変化した地面が、足と体に巻きつき縛り上げる。

それでも、俺は安心しない。特にフレデリックは暗黒魔術があるからな。影渡りで逃げられる可能性はゼロではない。

『ウルシは、暗黒魔術に備えろ』

(オン)

暗黒魔術の使い手であるウルシであれば、相手が影の中でも攻撃可能なのだ。

『さて、尋問をするか』

「ん」

まずはベルメリアからいこう。フレデリックが大人しく情報を喋ってくれるとは思えないからな。念動でベルメリアとフレデリックを引き離す。

いつもなら腹を何発か蹴りつけて叩き起こすところを、フランはベルメリアの傍らに膝をついてその頬を軽く叩いた。よしよし、ちゃんと手荒な真似は慎んでいるな。

雷鳴魔術で麻痺させておいて今さらとも思うが、自衛のために戦闘を行うのと、捕らえた後に暴力を振るうのはどうしても印象が違うのだ。コルベルトの知り合いの可能性がある貴族の令嬢。さすがに痛めつけるような真似はできないよね。

「うぅ……」

「起きた?」

「くっ……何が……」

目覚めた途端、目の前には黒猫族の少女がいて、自分は何故か拘束されている。当然だが、混乱しているな。

しかし、すぐに直前の状況を思い出したのだろう。フランを睨みつけて叫ぶ。

「何を、したのですっ!」

「質問するのはこっち」

「私の配下は無事なのっ!」

「余計なことを喋らず、質問に答える」

フランが王威スキルを発動した。ベルメリアの心を折りに行ったのだろう。フランの威圧感に呑まれ、彼女の体にビクンと震えが走った。明らかにその顔に怯えがある。

「くっ……誰が……」

しかし、ベルメリアが覚悟を決めた表情で、すぐに言い返してきた。この後、自らの身に降りかかるはずの災難を想像し、それを受け入れたらしい。多少未熟なところはあるが、一人前の戦士としての矜持はあるようだ。

ただ、ベルメリアが想像した悲惨な未来が、彼女に訪れることはないだろう。

『フラン。気づいてるな?』

「ん」

背後からゆっくりと近づいてくる気配があった。こちらを警戒しているようだが、敵意や悪意は感じられない。

「よう。久しぶりだな。その嬢さんを解放しちゃもらえないか? フラン嬢ちゃん」

現れたのはコルベルトだった。やはり襲撃者と仲間だったらしい。まあ、あのタイミングの良さから考えると、そうだろうとは思っていたが。

敵意がないことの証のつもりなのだろう。両手を軽く上に上げて、ゆっくりとフランに近づいて来る。とりあえずいきなり攻撃してくる気配はないな。

「コルベルト殿! 知り合いなのですか!」

「知らない仲ではないな」

「では、この娘はアシュトナー侯爵家の密偵ではないのですか?」

「フランがか? ありえないだろう」

「なぜそう言い切れるのです」

「その娘が黒雷姫だ。そう言えば分かるか?」

コルベルトの言葉を聞いたベルメリアは、目を見開いて驚きの声を上げる。

「ほ、本当に? 黒雷姫と言えば、セルディオ・レセップスの死の原因となった冒険者ではないですか!」

そこまで知られているのか。

「済まないなフラン嬢ちゃん。俺の後を尾行する相手がいると連絡が入ってね。拘束するっていうから任せたんだが……。まさか嬢ちゃんだったとは」

コルベルトたちは風話の宝珠という魔道具を揃って装備している。離れた場所にいる相手の声を、風を介して拾う事が出来るアイテムらしい。ただ使い捨てアイテムらしく、コルベルトの宝珠は破損状態となっている。これで連絡を取ったに違いない。

「では、なぜコルベルト殿を尾行していたのですか!」

「怪しい格好してたから。コソコソしてた」

「う……」

ベルメリアが顔をしかめる。コルベルトが怪しい格好で、怪しい行動をしていたことは認めるのだろう。それにフランは嘘を言ってないぞ? もし普通の格好をしていれば尾行なんかせずに声をかけただろうからな。

「こいつらは、誰?」

「あー、なんというか俺の雇い主の部下的な? とりあえず俺の今の同僚だな」

ベルメリアの姓から考えれば、その雇い主って言うのはベイルリーズ伯爵だろうか?

「にしても、フラン嬢ちゃんが王都にいるとは思わなかったぜ。ガムドのおやっさんに聞いたが、獣人国に行ってたんだろ? 王都には何が目的で来たんだ? オークションか?」

「色々」

「色々か~。にしても、フラン嬢ちゃん、また強くなったな」

「ん」

「正直、今の俺じゃ勝てんな」

「なっ!」

コルベルトの敗北宣言に驚いたのがベルメリアだ。彼女から見て強者であるコルベルトが、戦わずして負けを認めたのが信じられないらしい。

「その2人も嬢ちゃんを殺そうとしてた訳じゃないんだ。解放しちゃもらえないか?」

「何で攻撃してきた? アシュトナー侯爵家を監視してたことと関係がある?」

「はぁ。そこまで見られてたか。こうなっちまったらもうしかたねーよな」

コルベルトが諦めた様子でため息をつく。この場はフランが圧倒的に有利だ。そもそも、人質がいるし。ウルシがどこかに潜んでいることも分かっているだろう。それが逆にプレッシャーにもなる。いつ人質がウルシによって攻撃されるかも分からないからだ。

そして、フランとコルベルトであれば、フランが勝つ。あの武闘大会からコルベルトも成長しているが、俺たちの方が数段強くなっているからな。まあ、それでも楽勝ではないだろうが。

下手な駆け引きをするよりも、素直に事実を明かすことを選んだらしい。コルベルトが自分たちの事情を語る。

「俺は確かに、アシュトナー侯爵家を監視していた。目的はアシュトナー侯爵に仕える密偵をおびき出すこと」

つまり、コルベルトはあえて怪しい行動をしていたってことか。そのコルベルトを尾行してきた相手を、ベルメリアたちがさらに尾行して捕える。そういう作戦だったのだ。しかし、その作戦にアシュトナー侯爵家の密偵ではなく、フランが引っかかってしまった。

うん、色々と不幸な事故だったな。そういう事にしておこう。

「じゃあ、アシュトナー侯爵家とは敵対してる?」

「ああ、そうだ」

嘘ではない。もしかして、コルベルトたちはガルスの情報を持ってないかな? 俺たちはコルベルトにこちらの事情もある程度明かすことにした。

「私の知り合いが、アシュトナー侯爵家に捕まっているかもしれない。その人の居場所を探してた」

「なに? だからあの辺にいたのか?」

「ん。コルベルトを見つけたのは偶然」

「はぁ……よりにもよって……。だが、そうか」

コルベルトが数秒間考え込む。

「何か情報を持ってない?」

「……とりあえずここを離れよう。あれだけ派手にやり合えば、すぐに人が来る。詳しい話が聞きたい」

「わかった」

コルベルトの言うことももっともなので、とりあえず従う事にした。ベルメリアたちの大地魔術の拘束を解く。フレデリックはベルメリアがどうにかするだろう。

「それで、どこに行くの?」

「それなんだが……。フラン嬢ちゃん。俺の雇い主に会ってみないか?」