軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

383 フランとドレス

剣神化を試した後。既に夜の時間帯なのだが、王城に戻ると宰相のレイモンドに出迎えられた。

俺たちはまだ剣神化による衝撃が抜けきっておらず、ちょっとばかり好戦的な気分になっていたらしい。特にフランは、落ち込みから一転してかなりのやる気だ。

「もっともっと鍛える!」

と宣言していた。ただ、そのせいで多少の闘気が漏れていたのだろう。レイモンドがちょっと驚いている。

「ど、どうかされましたかな?」

「ん?」

「いえ。何もないなら良いのです。実は黒雷姫殿に依頼があって参りました」

「依頼?」

「はい。今夜行われる慰労の立食会に関してなのです」

戦勝を記念するパーティーなのかと思ったら、それほど盛大なものではないという。戦勝記念の式典は獣王が戻ってから、正式に行われる予定であるようだ。

ただ、バシャール王国戦において初期からの防衛を担っていた部隊が一旦解散となり、将軍たちが王都に戻ってくるらしい。そのため、彼らの働きを労う簡単な食事会を行うことになったそうだ。

防衛部隊が一旦解散して大丈夫なのかと思ったが、すでに代わりの部隊が派遣されてバシャール王国に圧力をかけているらしい。そりゃそうだよな。

「それで、その慰労会がどうしたの?」

参加しろってことなのか? だが、それなら依頼とは言わないよな? 食事会用の食材の確保とかだろうか?

だが、首を傾げるフランにレイモンドが告げたのは、やはり依頼をしたいという言葉であった。しかも、フランに慰労会に参加してほしいという。

「……?」

「いえ、これには深い事情があるのです」

「どんな?」

「確かに慰労会に参加してほしいのですが、ただ参加していただきたいわけではないのですよ」

どういうことだ?

「その恰好ではなく、ドレスアップして慰労会に出席していただきたいのです」

「ドレス? なんで?」

「まあ、言ってしまえばネメア殿下のためですな」

レイモンドがフランへの依頼の真の狙いを教えてくれた。どうやら彼はメアにもドレスで慰労会に出てほしいらしい。だが、獣王の名代ということで慰労会への出席の約束は取り付けたものの、ドレス姿になるのだけは頑として承諾してくれないようだった。

王女というよりは冒険者として、戦士として、将軍たちを労うつもりであるのだろう。

そこでフランの出番である。

「友人である黒雷姫殿がドレスで参加して下されば、姫様も絶対にドレスで参加してくださるはずです」

なるほどね。確かにフランとのおそろいや、共通点を見つけただけであれだけ喜んでいたメアだ。フランが一緒にドレスを着ようと言えば、拒否はしないかもしれないな。

「いかがでしょうか? 無論、報酬はお支払いいたします」

レイモンドが提示した報酬はそれなりの額だった。しかもドレスアップすると言っても堅苦しい席ではなく、武闘派の将軍が多く集まる飲み会のようなものであるらしい。マナーは気にするなと言われた。しかも食事が食べ放題。

「ん。わかった」

『いいのか? ドレスだぞ?』

(別にいい)

即答するフラン。食事に釣られたな。というか、フランは服装に頓着が無い。それ故、どんな服が好きで、どんな服が嫌いという好みもないのだ。布の服だろうが、ドレスだろうが、同価値の服でしかないのである。

まあ、さすがに普段着は動きやすい服の方が好きだが。ただ、動きづらいドレスを短時間着込む程度、食べ放題に比べたら些細な問題なのだろう。あと、武器持ち込み可というのも大きいかな? 俺がいれば大概のトラブルはどうにかなるしね。

「では、参加していただけるということでよろしいですか?」

「ん」

「ありがとうございます」

とはいえ、俺たちはドレスなんか持っていないけど……。それは向こうも分かっていたらしい。メアが数年前に着ていた服を貸してくれるそうだった。

「……特にサイズの調整も必要なさそうですからな」

レイモンドがフランの胸や尻をさり気なく見ながらそう呟く。まあフランとメアを比べると、身長はメアの方が多少高いものの、他の部分のサイズはほとんど一緒だ。昨晩、風呂で確認済みだから間違いない。

ぶっちゃけて言うとツルペタだった。セクシーダイナマイトなクイナと並ぶと、気の毒になる程に。

いやいや、メアもまだ15歳。まだまだ希望はあるよね? 多分、きっと、メイビー?

『メア、強く生きるんだぞ……』

「ん?」

『いや、なんでもない。とりあえずドレスを試着させてもらおうぜ』

ということで、メアのおさがりのドレスをミアノアに着せてもらった。恐ろしい程にジャストフィットである。

『……か、可愛い……』

やばい! うちのフランやばい! 青と白の華やかなドレスが似合いすぎ! 今のロリータチックなドレスアーマーも可愛いが、こういった丈長スカートのクラシックなドレスも悪くないぞ! 本当のお姫様みたいだ!

頭の上に可愛いティアラを載せてもらい、後ろ髪は結い上げてお団子にしている。うなじがセクシー! いつもと違う髪型も可愛いぜ。

さらに、薄く化粧までしてもらった。嫌がるかなと思ったが、意外と気にしていないようだ。どうも、獣人用に香りや刺激が抑えめの化粧品が使われているみたいだな。

メイクの途中も食事をしながらだったので特に問題はなかった。獣人は短気でせっかちな人間が多いので、メイク中は食事などで気を紛らわせるのは普通の方法らしい。化粧の補助係のお姉さんが、流れるような動作でお菓子や肉を用意してくれていた。

「……ちょっと動きにくい」

『まあ、ドレスだからな。でも似合ってるぞ?』

「そう?」

こういう機会にしっかり褒めないとね。ちょっとずつ女の子らしいことにも興味を持ってもらいたいし。

『いやー、まるで白雪姫みたいだな』

「白雪姫?」

『ああ。俺の世界で有名なお姫様だ。悪い魔女に毒林檎を食べさせられてな』

「……毒も見分けられなかった?」

『いや、俺の世界に毒を嗅ぎ分けられるような超人、そんなにたくさんはいないから』

特殊な訓練を受けた人なら、もしかしたらいけるかもしれんが。

『毒のせいで永い眠りにつくんだが、王子様のキスで目覚めて幸せになるんだ』

「……毒なのに、キスで治るの? 特殊なスキル?」

言われてみたら、なんで王子のキスで目が覚めるんだっけ? 昔絵本を読んだだけだからな。それにあの手の話って原作が酷いんだよな。そうだ、そういえば白雪姫の原作を紹介するテレビを見たことがあったな? 詳しく覚えてないけど、王子が死体に興奮するド変態だったんだっけ?

『うん。俺もよくわからないや』

「ふーん」

シンデレラにしておけばよかった。いや、あれも原作は酷い話だったか?