軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

365 改修完了

「――――」

ふと、何の音も聞こえないことに気が付いた。

静寂。

自分が上げていた絶叫が消えたのだと理解するのに、数秒かかった。

『終わったのか?』

あれから――改修が始まってからどれだけの時が経ったのだろうか。全身を苛む激痛がすっかり治まり、消え去っている。

『終わったのか?』

再度自問する。痛みはない。倦怠感もない。違和感もない。むしろ爽快感のようなものさえ感じている。

ただ、時間の感覚だけが妙に曖昧だった。

俺はどれくらいの時間、苦痛に呻いていたのだろう。窓から見える外は暗い。夜は明けていないようだな。あれから数時間といった感じか?

『いやー、まるで一昼夜くらいは経った気がするぜ』

正直記憶は曖昧だが、それくらい、きつかったってことだ。

これで数分しか経ってませんよって言われたら、自分の時間感覚が信じられなくなりそうだな。

『フランは――』

いた。俺の置かれた作業台の下で寝息を立てている。大分心配させたらしい。その寝顔はまるで苦悶の表情だ。

目の下には大きなクマができているし、髪は数日風呂に入っていないかのようにボサボサである。俺が悶絶し始めた時に大分取り乱していたからな。

耳に入ってくる可愛い寝息を聞いていると、このまま寝させておいてやりたい気もするが、やはり起きたことを教えて安心させてやった方がよいだろう。

俺は念動を使ってフランの頭を撫でてみた。少し不安だったが痛みもラグもなく、スムーズに発動する。むしろ前より滑らかな気もするが、単に気分がすっきりしていて爽快だからそう感じるだけかね?

『フラン。フラン』

念話も問題なし。改修は上手くいったらしい。声をかけながら、フランを軽く揺する。

『フラン、起きれないか?』

「むにゅ」

さらに揺すると、フランの目が薄らと開いた。そして、俺が浮いている姿を確認すると、目を見開く。

「師匠……!」

勢いよく立ち上がったフランが、覆いかぶさるように抱き付いてきた。とっさに形態変形で刃を潰したが、こちらも問題なく発動してくれたな。いつもなら無意識なんだけど、今は使えるかどうかわからないから、一瞬ヒヤリとしたぜ。

「師匠、夢、じゃない……?」

『おう。正真正銘、俺だぞ?』

「ん」

おいおい、激しいな。だがフランはそのまま俺を胸に掻き抱くと、肩を震わせ始める。

「……よかった……」

『心配かけたみたいだな』

「……ん。心配した」

『そうかそうか。ごめんな』

「ん」

ポロポロと涙を流しながら、俺を離さないフラン。俺は落ち着くように、その頭と背中をゆっくりと撫でてやった。

しばらくすると、ようやく落ち着いてきたらしい。フランが俺を抱きしめる力が緩まった。だが、代わりに俺に体重を預けてもたれかかってきた。

『どうした? 甘えん坊だな』

「……ん」

『フラン?』

「スースー」

え? また寝ちゃったんだけど……。寝起きが悪いのは知っているが、この場面で寝る? フランの凄まじいマイペースっぷりを改めて実感してしまったぜ……。

『フラン? おーい、フランさーん』

「寝かせておいてやれ」

俺がフランを再度起こそうとしてると、アリステアが2階から降りてきた。フランと同じように髪の毛がボサボサで、目の下にはクマができている。

「調子はどうだ?」

『絶好調だ。念話も念動も今のところ問題はない。気分も爽快だしな!』

「そうか、そりゃよかった……ふわぁ」

『アリステアも眠そうだな』

フラン程ではないが、目をシパシパと瞬かせて、今にも眠ってしまいそうだ。

「そりゃあ、アタシのこの体でも、5日間徹夜っていうのは応えるからね」

『は? 今なんて言った? 5日?』

「ああ、分かってないか。そうだ。今日は改修の儀式を開始してから、ちょうど5日目の夜だよ。緊急事態が起きた時のためにも、アタシが眠る訳にはいかないからね」

『マジか……。そんなに時間が経ってたのか? てっきりあの日の夜なのかと』

「まあ、あの状態じゃ時間が分からなくても仕方ないけどね」

『じゃあ、フランが寝ちまったのも……』

「5日間、一切眠らずにあんたの横で見守ってたんだ。あとで褒めてあげな。まあ、3時間くらい前に力尽きて寝入っちまったがな」

そうだったのか。普段はむしろ寝坊助のフランが、5日間寝ない? そりゃあ、こうもなるか。しばらくは起きないだろうな。

それでも俺の刀身に回した手を離そうとしないフランの頭を撫でながら、俺はその体をそっと床に横たえた。勿論、俺はフランに抱き付かれたままだ。これだけ心配してもらったのだから、抱き枕になるくらいはしないとね。

先程までの苦悶の表情とは違い、安心したような顔で眠るフラン。本当に心配かけたらしい。いい夢を見てくれ。

『それで、改修はこれで終わりなのか?』

「さあ?」

『さ、さあって……』

「アタシだって初めての経験なんだ。むしろこっちが色々と聞きたいくらいだ。もう、痛みはないか?」

まあ、それはそうか。

『大丈夫だ。さっきも言ったが、爽快なくらいだ』

「そりゃあ羨ましい。アタシも早くベッドにもぐりこみたいぜ」

『なんか、すまん』

「はは、冗談だ。神剣を作る時には10日以上不眠不休になるんだ。この程度なら、まだまだ問題ないさ」

うわー、神剣を作るのは大変だろうとは思っていたが、10日間不眠不休? 肉体最盛スキルって、そのためにあるんじゃね?

「外見はアタシが見たところ、前と変わっていないな」

『え? そうなのか?』

体が作り変わる感覚があったから、勝手に外見も変わるかもしれないと思っていたんだけどな……。アリステア曰く、全く変わりはないそうだ。

『改修されたんだよな?』

「だから、アタシもそれが知りたい。スキルの方はどうだ? 統廃合は上手くいったか? 性能の変化もあれば知りたいな」

『まだ見てない』

ちょっと怖いが、見ない訳にもいかない。恐れと不安、希望と期待の入り混じった不思議な感覚を押し殺しながら、俺は自らを鑑定してみた。

『え?』

俺は自分でも呆れてしまうほど、間抜けな声を上げていた。幾ら俺でも、自分のステータスはしっかり覚えている。

『こんなに変わるのか……?』

外見は変わってないと言われたが種族が変化していた。インテリジェンス・ウェポンから、インテリジェンス・ユニーク・ウェポンに変わっている。ユニークね……。変わり者って意味なのか、唯一無二的な意味なのか……。悩むところだ。ただ種族が変わった効果なのか、能力も上がっていた。

攻撃力が300、保有魔力、耐久値が3000程度上昇し、魔力伝導率がS-からS+に2段階も上昇している。物理面、魔力面、ともに驚くほど成長しているな。

次は自己進化系だが……。こっちは逆に壊滅的だな。魔石値0、自己進化ポイント0だ。魔石値0は予想していた。暴走中、潜在能力解放を限界まで使い続けたらしいからな。自己進化ポイントもどうせ1しか残ってなかったし、仕方ないか。

だが、俺を真に驚愕させたのはこの先、スキルのリストである。幾つかスキルが消えていた、念動小上昇、攻撃力小上昇、保有魔力小上昇、メモリ中増加だ。ただ、それが無くても能力が上がったということは、むしろそれらがステータス面に吸収されて、スキル無しでも能力が強化されたってことなのかもしれない。

スキルテイカーで手に入れたばかりの狂鬼化も消えている。これは嬉しいが、驚くほど都合よく消失してくれたな。

さらに驚いたのが、メモリの項目が大幅に減ってしまっていることだ。どういうこと? いや、処理能力を考えれば当然のことなのかもしれない。使わない大量のスキルをただ装備しているだけでも、処理能力を圧迫するのだろうし。

次はメモリスキルを確認してみる。恐る恐るリストを見てみたが、スキルがすべて消えているようなことはなかった。

『良かった……うん?』

だが、安心したのもつかの間。俺は表示されるスキルを見て、再び声を上げてしまっていた。数が大幅に減っている。それだけではない、見たことのない名前のスキルが大量だった。

『ええ?』