軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

305 戦乙女と顔無騎士

突如出現した邪人の軍隊。

俺たちはその姿を見て闘志を燃やしていた。ただ、気になることもある。

(やつら、どうやって来た?)

そう、あれほど勇壮な軍隊が、どうやって俺たちに気づかれずにここまで来たかと言う事だ。

『気配は感じなかったが……』

(ん)

『だが、魔獣たちとの激戦の最中だったんだ。単に気づかなかった可能性もある』

もしくは、何らかの術かスキルだな。俺たちは邪人の軍隊を観察してみた。

最前列でパイクを構えるのはホブゴブリン・スピアラーたち。その背後にはホブゴブリン・アーチャー、ホブゴブリン・マジシャンの姿も見える。続くのはハイオーク・ウォリアー、ハイオーク・シールダー、ハイオーク・ブレイダー、ハイオーク・スナイパー達だ。さらに後ろにはミノタウロス・ソルジャー、ミノタウロス・ランサーがいる。これが主な構成員だろう。

ホブゴブリンたちが脅威度E。オーク、ミノタウロスたちが脅威度D。だが、そのさらに後ろに位置する場所にはより強力な、指揮官の親衛隊と思われる者たちが陣取っていた。

ミノタウロス・ハイマジシャン、ミノタウロス・ハイソードマン、ミノタウロス・アックスマッシャーたちは脅威度で言えばDだが、限りなくCに近いDであるらしい。

何せ、ハイマジシャンたちは火炎魔術などの上位魔術を使うし、ハイソードマンなど剣聖術を所有している。

そのミノタウロスたちの中でも頭一つ大きいミノタウロス・ダークパラディンは、文句なしの脅威度Cだった。斧聖技と盾聖術、暗黒魔術、を使うというトンデモ性能だ。それが4体も並んでいる姿は、壮観ですらあった。

だが、こいつらでさえ指揮官ではない。ミノタウロスの壁の中に、弓を射たと思われる指揮官がいた。その隣は副官だろうか。鑑定をした俺は、剣であるのに背筋が凍る様な感覚を味わっていた。

統制のとれた高位邪人の軍隊だけでも厄介なのに、指揮官たちの能力が群を抜きすぎている。

種族名:ワルキューレ・キリングアーチャー:妖精:天魔 Lv66

HP:1352 MP:2387

腕力:682 体力:563 敏捷:1339

知力:1002 魔力:1298 器用:889

スキル

威圧:Lv6、隠形:Lv3、隠密:LvMax、風魔術:Lv7、弓技:LvMax、弓聖技:Lv5、弓術:LvMax、弓聖術:Lv5、恐怖耐性:Lv7、警戒:Lv4、気配察知:Lv5、気配遮断:Lv7、幻影魔術:Lv6、剣技:Lv8、剣術:Lv8、剛力:Lv6、混乱耐性:Lv7、再生:Lv8、指揮:Lv8、状態異常耐性:Lv6、槍技:LvMax、槍聖技:Lv4、槍術:LvMax、槍聖術:Lv4、属性剣:Lv7、覇気:Lv4、光魔術:Lv4、魔力感知:Lv6、魔力放出:Lv6、暗視、気力制御、士気熱狂、痛覚鈍化、不動心、浮遊、歩行補助、魔力自動回復、魔力操作

固有スキル

戦乙女

称号

進軍の戦乙女

装備

戦乙女の槍、戦乙女の弓、戦乙女の装束

種族名:デュラハン:死霊:魔獣 Lv1

HP:1588 MP:693

腕力:781 体力:727 敏捷:587

知力:200 魔力:521 器用:714

スキル

威嚇:Lv5、隠密:Lv4、火炎魔術:Lv3、気配察知:Lv6、恐怖:Lv9、気配遮断:Lv3、剣技:LvMax、剣聖技:Lv2、剣術:LvMax、剣聖術:Lv2、剛力:Lv8、瞬間再生:Lv3、状態異常耐性:Lv9、盾術:LvMax、盾聖術:Lv4、盾技:LvMax、盾聖技Lv4、精神異常耐性:Lv9、属性剣:Lv7、火魔術:LvMax、魔術耐性:Lv6、魔力感知:Lv8、魔力吸収:Lv7、雷鳴耐性:Lv4、暗視、気力操作、痛覚無効、魔力操作

称号

無貌の騎士

装備

邪神石の騎士剣、抗魔鋼の全身鎧、抗魔鋼の盾、障壁の指輪

種族がワルキューレにデュラハンという、ファンタジーの中でも強者とされる種族である。どちらも脅威度C以上は確定のステータス。ワルキューレはB、デュラハンも下手したらBに片足を突っ込んでいる上、2体とも隙のないバランス型だ。

特にワルキューレの強さが凄まじい。見た目は金髪ロングの美少女だ。朝日を反射して輝く金色の鎧は荘厳ささえ感じさせる。神々しくさえあり、モンスターにはとても見えなかった。なのに、この距離でさえ感じ取れる程の威圧感を放っていた。

対するデュラハンは漆黒のフルプレートアーマーを着こんだ大柄な人型のモンスターだ。よくある頭部を小脇に抱えた姿ではなく、普通に首の上に頭が乗っている。外れるかどうかは分からないが。全身が隙間なく完全に覆われているため、顔の造作や性別などは分からない。

そして、それぞれに恐ろしい能力を備えている。ワルキューレの固有スキル『戦乙女』は、武術スキルの補助、反応速度の上昇効果という地味だが強力なスキルだ。さらに、称号である『進軍の戦乙女』が恐ろしい力を秘めていた。

進軍の戦乙女:条件を満たした戦乙女に与えられる称号。

効果:100名以上の軍勢を率いた時、戦乙女の持つ隠密系、移動系スキルの効果が軍勢全てに及ぶ。直接指揮しない場合、その効果は大幅に減少。

これが、俺たちに察知されずに邪人の軍勢がここまで現れたからくりだろう。なんだこの壊れ性能は!

直接指揮しない場合と注釈が入っていることから、その配下であると認められれば、離れた軍勢に対しても効果があると思われた。魔獣の軍勢にも効果があったのか? まあ、効果が大幅に下がっていたおかげで俺たちは気づいたが。ただ、もしかしたらその効果が無ければもっと早くに発見できていたんだろう。

デュラハンのもつ無貌の騎士の称号は、再生の強化と、吸収系スキルの効果上昇だった。地味だが、滅ぼしづらいってことだ。

ワルキューレをBと言ったが、個体としてはBでも、軍勢指揮能力があることを考えたらAかもしれん。その配下によるだろうが。

「ふむ。中々の反射速度だ。雑魚とは言え、この数の魔獣たちを単騎で食い止めるだけはある。我が矢を初見でかわすとは」

風魔術を使っているのだろう。ワルキューレの声がこちらに届く。

「誰?」

こちらも同じ様に風魔術を使って質問を返してみた。

「魔術も使うか。まあいい。私はミューレリア様が下僕。軍勢を司る戦乙女なり」

「ミューレリア? それが今回の首謀者?」

「さて、どうだろう?」

「……何でこんなことをする?」

「やはり何も知らないのだな。どちらにせよ、ここで死ぬ貴様には関係のない事だ。大人しくその首を差し出すというのであれば、苦しまずに逝かせてやるが?」

「それはこっちの台詞」

「魔獣たちと夜通し戦い続けて消耗した君が、我らに勝てると思うかね?」

「思う。楽勝」

「ふははは、いいな! それでこそ、外に出て来た甲斐があったというものだ! 獲物は活きが良くなくては! せいぜい我らを楽しませてくれよ!」

戦闘狂かと思ったら、どちらかというと狩人タイプ? 勝てる戦いが好きなタイプっぽい。

「アーチャー部隊! 矢を射よ!」

ちっ。もっと会話して情報を引き出したかったんだが、これ以上は無理か!

だが、こいつらのボス。多分ダンジョンマスターだと思うが、そいつの名前がミューレリアと言う事は分かったな。

ワルキューレの号令により、弓を持った邪人たちが整然とした動きで一斉に弦を引き絞った。そして、全く同じタイミングで矢を放つ。そして、それが死闘の始まりであった。

『まずはこっちを塞がないと!』

俺は矢の防御をフランに任せ、グレイト・ウォールを使って隘路を塞ぐ。あの邪人軍を相手にしながら、魔獣の侵攻を防ぐのは不可能だ。だから、ここから先に行かせない様にと思ったんだが……。

「獄炎の強矢!」

ワルキューレが放った1本の矢が俺たちから少し離れた場所の壁に突き刺さった。同時に大爆発が起き、壁に巨大な穴が開く。

『ちっ!』

「ふははは! 獄炎の強矢!」

再度グレイト・ウォールを使用しても、ワルキューレの矢で破壊されてしまった。やばい、これはどうにもならない。

魔獣たちがその穴に向かって進軍し始めた。その間にも邪人たちからの遠距離攻撃が降り注ぎ、それを防ぎながら魔獣に攻撃を仕掛けても碌な成果は上がらなかった。魔獣は諦めるしかない……? いや、それはできない。フランの願いに反する。

何かできないか? 何か?

俺は同時演算をフル回転させて、最適な道筋を探した。ワルキューレがいる限り、壁で閉じ込めることはできない。ならば、出来る限り魔獣の数を減らす。もしくは殲滅するしかない。

俺の手持ちでも最も広範囲を攻撃できるのは、100本の雷を降らせるエカト・ケラウノスだ。これを広範囲に連続してばら撒けば、かなりの魔獣を倒せるだろう。雷の1本1本が下位の魔獣を粉砕する威力な上、周囲を麻痺させる効果まであるのだ。

だが、仮にも上位の魔術だ。3千以上の魔獣を殲滅するために撃ちまくっていたら、あっと言う間に魔力が枯渇するだろう。その後の邪人たちとの戦闘が不利になる。というか、瞬殺されてしまう。

魔石値はもう少しで溜まるので、魔石を吸収出来ればいいんだが……。魔石も食えて、広範囲を攻撃できる方法……? そんなもの――。

いや、あるな。今の俺なら、やれるんじゃないか? 俺は意識を集中して、形態変形を発動させてみた。想像以上に、自分の刀身を操ることができる。これなら行けるぞ!

その前に、魔力を使っちまおう。何せ、ランクアップすれば全回復するのだ。俺はエカト・ケラウノスを連続して発動させた。

『はぁぁぁ! 食らえ!』

魔獣の軍勢の後陣に向かって500本近い雷が降り注ぐ。狙いを付ける余裕はないが、あの様子であれば相当数を葬れただろう。直撃して粉々になる魔獣や、至近距離で落雷を受けて黒焦げになる魔獣たちの姿が見えた。

さらに、邪人たちにも一発放っている。これはダメージよりも、目くらましの意味が強いが。少しでも削れたら御の字だろう。

直近の魔獣ではなく、後方の魔獣に攻撃したのはあえてである。あえて、近くの魔獣たちは残した。なぜならば、近場の魔獣はこの後俺の餌になってもらわないといけないのだ。

『フラン、しばらく矢を耐えてくれ!』

「ん!」

よし、俺はこっちに全力集中だ!

『はぁぁぁぁ! 魔石、よこせぇぇ!』

俺は形態変形を全力で発動させる。ただ、変形させるのはいつもの様に刀身ではない。武器が無くなったら、フランが危険だからな。俺が操るのは、柄から垂れ下がる組紐だ。もともと、形態変形では刀身ばかりを操って来たが、柄や紐も、俺の一部だ。再生すると、刀身と一緒に再生するし。だったら、操ることもできるはずだった。

魔力制御、気力制御、同時演算。それらをフル活用した結果、俺の形態変形はこれまでとは比べ物にならないレベルに達してる。

組紐が俺の意思に応えて、一〇本もの鋼糸へと姿を変えた。そして、天へと伸びる木の枝々の様に、さらに枝分かれしながら横へ横へとどこまでも伸びていく。無論、その道々で魔獣の魔石を貫き、食い荒らしながら。

『くっ、そろそろ限界か……』

魔力よりも、俺の処理能力の問題だ。脳もないのに、頭が焼き切れるような感覚があった。いやむしろ脳もないのにそう感じてしまう方が、ヤバいのではなかろうか。

『だが……来たぞ!』

今日2回目のランクアップだ! 大量の魔獣の魔石を吸収した結果、魔石値が一気に溜まったのだった。