軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27 またまた奴ら

宿で迎えた初めての朝。

もちろん『知らない天井』と呟くのはお約束だろう。まあ、俺は眠らないから、寝起きとかないけどね。

朝にあまり強くないフランを起こして着替えさせる。浄化魔術で体を綺麗にしてやり、魔術の水で顔を洗ってやる。フランの髪型は、先端にクシュッとしたクセの付いた、ショートカットだ。クセ毛故に朝の髪型が凄いので、水で寝ぐせを直すのも忘れない。

それで、ようやくフランの目が覚めてくる。

「おはよ」

『よく眠れたか?』

「ばっちり」

その後は、食堂に向かい朝食だ。

「はいよ。朝定食お待たせ!」

フランの前に、木製のランチプレートがドンと置かれる。載っているのは硬い黒パンと卵焼き、ソーセージ2本、茹でたニンジンだ。これに具の少ないスープが付く。

『どうだ?』

「美味しい」

奴隷だったフランは、大概のものは美味しく感じるようだ。モリモリ食べていく。よしよし。たくさん食って、でかくなれよ。

(でも、師匠の方がずっと美味しい)

昨日の夕食の時にも、同じこと言ってたな。

『はは、嬉しいこと言ってくれるね』

(本当にそう。師匠の料理が食べたい)

まあ、料理スキルカンストしてるしな。今、この町一番の料理上手が剣の俺という、不可思議な状況だ。前世の記憶のお蔭か、スキルレベルが同じでも、フランより俺の方が料理の幅などが広いようだし。料理王の称号まであるのに、だ。まあ、どれだけレベルが高くても、この世界に存在しない料理は作れないという事だろう。

これは、本当に料理の大量作成と、大量保存を考える必要があるかもしれない。

『依頼を受けて町の外に出れば、昼は俺が作ってやるから』

「楽しみ。早く外行こう」

『じゃあ、依頼を探しに行かないとな』

「ん」

という事で、冒険者ギルドにやってきた。

「こんちわ」

「こんにちは。依頼を探しに来たんですか?」

「ん」

「依頼ボードはそちらです。Gランク冒険者が受けられる依頼は、1番左のG、Fランク依頼だけですので、ご注意を」

まずGランク依頼から見てみる。

Gランク冒険者の数が少ない上、早朝という事もあり、ボードの前には誰もいない。

『薬草採取、イノシシ狩り、屋敷の草むしりに、道路のゴミ拾い?』

「しょぼい」

『そうだな。依頼料も安いし』

Fランク依頼はどうだろうか。

『ちっとはましだが……』

ゴブリン5匹の討伐、牙ネズミ駆除、森でのキノコ採集。

やはり、しょぼいことに変わりはない。まあ、それ以上の依頼を受けられないんじゃ仕方ない。それに、フランのレベルが低いのは確かだし。フランのレベルが上がるまでは、雑魚を狩ってよう。

「じゃあ、これ」

『薬草採取ね。まあ、初めてなんだし、いいんじゃないか?』

ヒール草という、5級ポーションの材料になる薬草だ。これなら、森の中にたくさん生えていた。

「これ」

「はい。じゃあ、こちらの依頼ですね。確認しました」

「ん」

「ヒール草の形などは分かりますか。分からないのであれば、資料がありますが」

「大丈夫」

「そうですか。依頼を5つ達成されれば、ランクアップとなりますので、頑張ってください」

「ん。ありがとう」

「はい」

昨日あんな騒ぎがあったのに、受付嬢のネルさんからの好感度は高そうだ。良かった良かった。

『よーし。行くか!』

「ん」

門はギルドカードを見せるとあっさり通過できた。門番の男性はフランを覚えていたようで、冒険者だと言うと凄まじく驚いていた。

『どっち行く?』

「ん……あっち」

『その心は?』

「勘」

いい答えだ。どうせ急ぐ依頼じゃないし。好きに行動すればいいのだ。

『途中でヒール草以外の薬草とかも拾っておこうぜ。そうすれば、戻ってすぐに達成できる依頼があるだろうし』

「師匠天才」

『はっはっは。もっと褒めてくれてもいいんだぜ?』

「師匠すごい天才」

俺たちはのんびりと森の中を進んでいった。すでにヒール草は規定分採取できている。そのほかの薬草や、キノコ、木の実なんかも大量だ。

採取、薬草学、料理のスキルで、有用な草かどうかを見分けることができる。それに加え、危機察知も有効だった。名前や効果が分からなくても、その草やキノコが、ヤバイものだと感じることができる。つまり、毒素材として、利用法がある可能性があるのだ。

次元収納のお蔭でいくらでも持つことができるし。気になった物は片っ端から採取しているのだった。フランは俺が作ってやった食事に満足なようで、上機嫌で歩いている。

「師匠」

『おう』

フランが唐突に足を止めた。だが、俺も驚かない。俺にも感じ取れているからな。

『ゴブリンか。数は10匹以上いるな』

「ん」

『しかし、この辺は本当にゴブリンが多いんだな』

フランは既に俺の柄に手をかけ、臨戦態勢だ。俺も止めはしない。ゴブリンだったら、安全に狩れる、ちょうどいい経験値だし。

普通の初心者にはお勧めしないけどな。

『冒険者が囲まれてるか?』

「あそこ」

『冒険者が3人。ゴブリンは……』

「13匹」

『しかも、上位種までいるじゃないか』

ソルジャー、シーフ、アーチャーが、群れを率いているようだ。

対して、冒険者たちはまだ駆け出しのようだ。安物の武具に身を包み、自分たちを包囲するゴブリンの群れを、青い顔で睨みつけている。

『戦士1人、レンジャー1人、魔術師1人か。バランスのいい構成だけど、あれだけ接近されたら、なかなかやばいだろうな』

しかも、全員がそれなりにダメージを受けている。魔術師にいたっては、大怪我を負っているようだ。

「助ける」

『分かった』

「魔術で削って、割って入る」

2人同時に、土魔術を詠唱する。俺の詠唱するストーン・バレットは、小さい石の礫を、散弾の様に放つ魔術だ。ただ、通常の5倍以上の魔力を込めて発動させる俺の魔術は、礫の1つ1つが弾丸の様な威力を持っている。敵が固まっていれば、複数体を巻き込むこともできるし。

どうやら、魔法使いスキルを持つ、俺だからこそできる荒業らしい。共有化できないスキルなので、フランは普通にしか魔術を使えないのが残念だ。

火魔術を使えば1発でかたがつくんだが、森で火は怖いし。

「ストーン・アロー」

『ストーン・バレット!』

フランの魔術が1匹、俺の魔術が5匹で、計6匹撃破だ。うち一匹は、ゴブリン・シーフだった。

〈フランのレベルが、6に上がりました〉

ここでレベルアップが来たか。まあ、今は置いとくしかないな。

何事が起きたのかわからずに、双方ともに混乱している間に、フランはゴブリンたちに急接近している。

「ふっ」

すれ違いざまに、2匹を叩き斬り、冒険者たちと、ゴブリンの間に滑り込んだ。無論、俺だってちゃんと仕事をしている。冒険者たちにとって最も厄介であろう、ゴブリン・アーチャーを、ストーン・アローで始末したのだ。

「え? なんで子供?」

「強っ!」

冒険者たちが驚いている。ゴブリンたちは驚きから回復し、ソルジャーを先頭に襲い掛かってきた。

「ギャギャオウ!」

ほほう。強いと理解した相手に、躊躇なく全員で襲い掛かるとは。ゴブリンながら、良い判断だ。

『ま、無駄だけどな! ストーン・バレット!』

俺は戦闘中、常に詠唱を続けていた。何せ、息継ぎも必要ないからな。すでに、ストーン・バレットの詠唱が終わっていたのだ。

右の2匹が、石礫を喰らって血反吐を吐き散らし、命を落とす。

左から来ていた2匹も、フランの敵ではない。

「遅い」

ダブル・スラッシュが放たれ、最後の2匹も一瞬で切り捨てられたのだった。

僅か20秒ほどで事態が一変し、冒険者たちが間抜けな面で呆けている。このまま間抜け面を眺めていたい気もするが、さすがに怪我人を放っておくのはまずいな。

『早速、回復魔術が役に立つぜ』

ステータスを確認すると、単にHPが減っているだけだ。肉体の欠損も、状態異常もない。

『普通にヒールでいいぞ』

「――癒しの光、サークル・ヒール」

回復魔術のLv7呪文、範囲回復魔法サークル・ヒールだ。無事な2人も多少のダメージがあったので、ついでに回復してやったんだろう。優しい娘やで、ホンマに!

「こんな小さい子が、サークル・ヒールだと?」

「うぇ! それって、中等魔術じゃない!」

驚いてるな。戦士の男の言葉に、レンジャーの女性が目を見開いている。

「しかも、あれって魔剣?」

おお、俺に気づいたか。まあ、他の剣とは一線を画す高貴な姿をしてるし、見るやつが見れば気づいちゃうよな。いやー、困ったね。

「それよりも、ユースタス! 大丈夫か!」

「あれ? 怪我が治ってる?」

怪我をしていた魔術師も、問題ないようだ。これでフランにおかしな言いがかり付けてきたり、丸め込んで利用しようとしたりして来たら、ちょーっと怒っちゃうかもしれんぞ?

「大丈夫?」

「あ、ああ。助かったよ」

「ありがとう。ほら、あんたも!」

「え? あ、ありがとう?」

うむ、まずはお礼。基本だな。どうやら、先日の馬鹿どもとは違うようだ。

「あなたは、その……冒険者なの?」

「ん」

「えっと、名前を伺ってもよろしいですか?」

「フラン」

その言葉に、冒険者たちが目線を交わし合う。

(知ってるか?)

(知らない。こんな目立つ子がいたら、知らない訳がない)

(だよな)

(俺も知らない)

多分、文字にしたらこんな感じだろう。

「俺はクラール。彼女がリリー、彼がユースタスです」

礼儀正しく自己紹介をしてくれた。でも、フランはもう彼らに興味がないようだ。

「そう。じゃ」

というか、早くステータスを確認したいらしい。

『いいのか? 謝礼くらいはもらえるかもしれないぞ?』

(不要。それに、早くステータスみたい)

まあ、そうか。こいつら見るからに駆け出しだし。たいした謝礼は期待できないもんな。だが、さっさと去ろうとするフランを引き留めたのは、リーダー格の戦士、クラールだった。

「ま、待ってください」

「?」

「このゴブリンは、仕留めた貴女のものです」

「は? このお嬢ちゃんがゴブリンどもを仕留めた? 何言ってんだ」

「いいからあんたは黙ってなさい!」

「命を助けてもらって、その上施しまで受ける訳にはいきません」

良い心がけだ。ここで断ると、逆に印象が悪いかもしれない。

『上位種の素材くらいは、貰っといていいんじゃないか?』

「わかった。上位種だけもらう」

「え? 上位種が混じってたのか!」

おいおい、それすら分かってなかったのか? 確かに、見た目じゃ分かりづらいが、体も角も少し大きいのに。

「ん」

フランは、驚く3人を放置して、マイペースに剥ぎ取りをする。ソルジャー、シーフ、アーチャーと進むにつれ、冒険者たちの顔が凄いことになっていくな。

フランは角と魔石を、腰に下げていた袋に仕舞う。この袋はダミーだけどね。袋に仕舞うふりして、次元収納に仕舞うという訳だ。

「上位種が、3匹だって?」

「これって、ヤバいんじゃない? ギルドに知らせないと……」

「いやいや、待てって。本当に上位種なのか?」

「多分本当よ。あの3匹、明らかに体が大きいし」

俺たちの想像以上の慌てようだな。どうやら、何か問題が発生したみたいだ。

「どうしたの?」

「いや、上位種が同時に3匹も出現したんなら、冒険者ギルドに報告しないと!」

「なんで?」

「何でって、知らないの?」

「?」

「上位種がいるってことは、キングもいるかもしれない」

「ん」

冒険者たちの説明をまとめると、こうだ。

ゴブリンの群れは、キングがいると統率力が格段に上がり、戦闘力が増す。これは俺も知ってるぞ。

すると、より多くの魔獣が狩れる上、死亡個体も減り、上位種に進化する個体が増える。するとさらに戦闘力が増し、より群れが大きくなっていくという、最悪の循環が生まれるのだ。

そして、群れがある程度大きくなると、クイーンが生まれてしまう。平原にクイーンがいなかったのは、周辺に強い魔獣が居て、群れが一定以上に大きくなれなかったからだろう。

重要なのは、キングとクイーンの間に生まれる子供は、全てホブゴブリンになるという事である。そして、ホブゴブリンと、普通のゴブリンの間に生まれる子供も、全てがホブゴブリンになってしまう。

ホブゴブリンの脅威度は、個体でF。キングに率いられる群れは、脅威度D以上になるらしい。

「そうなったら、手が付けられなくなる。魔獣災害の発生だ」

「どれだけの村が消えることになるか、想像もつかないわ」

なるほど、この辺の冒険者にとっては、死活問題だろう。俺にとっては美味しいエサの群れにしか思わんが、今のフランにとっても、脅威になる。ならば、早めに潰しておく方がいい。

「俺たちは、直ぐに冒険者ギルドに向かって、報告します」

そう言って、上位種の死体をそれぞれが担ぎ上げる。素材はなくても、死体があれば証拠になるからだ。

「ん」

「それじゃあ、失礼します」

「今日は本当にありがとうね」

「なんか助けられたみたいだな。ありがとうよ!」

結果的に、ゴブリンの素材も手に入ったし、前途有望な若者を助けたし。悪くない成果だったな。

『じゃあ、魔石を吸収しちゃうか』

駆け出しパーティから離れた場所で、魔石を取り出して吸収する。スキルは持ってる物ばかりだったけど、こういう小さいことの積み重ねが、大事だからな。有り難くいただきました。

「ねえ、ステータス、見て?」

『はいはい、今見るぞー』

「ん」

名称:フラン 年齢:12歳

種族:獣人・黒猫族

職業:魔剣士

状態:契約

ステータス レベル:6

HP:80 MP:71 腕力:45 体力:34 敏捷:46 知力:30 魔力:36 器用:47

結構ステータス値が上昇してるな。特に、腕力と魔力は、4も上昇している。魔剣士の効果だ。

実際、魔剣士の効果はこうなっている。

魔剣士:中級職。剣系技と、魔術1種類を、Lv5以上で取得している場合に転職可能。

効果:レベルアップ時に、腕力、魔力が上昇しやすくなる。また、剣系技、魔術の熟練度入手効率が上昇し、剣系技、魔術の威力が上昇。

非常にバランスがいい職業だ。俺は、上昇の値をフランに教えてやる。

「いい感じ」

『そうだな。このまま頑張ってレベルアップしようぜ』

「おー」

無表情で拳を突き上げるフランもかわいいな~。よし、俺も気合入れて、獲物を探そう!