軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

285 フランのゴブリン虐殺講座

ゴブリンたちを麻痺させて動けなくしたフランは、遠くから見守っている黒猫族を呼びに戻った。

「みんな、来て」

「は、はい」

「わかりました」

黒猫族たちはフランの言葉に素直に従って、後について歩き出す。そして、 興奮した面持ちで、ゴブリンの死体を観察している。

「す、すごい!」

「さすがです!」

「進化すげー!」

自分も進化を目指すかどうかはともかくとして、彼らがフランの力を目の当たりにして進化に対する憧れを強めたことは確かだろう。

「いやー、さすがですね」

案内役の男性はさすがに兵士なだけあって、ゴブリンの死体を見ても落ち着いているな。ただその尻尾がブンブンと振られ、フランの強さに対する興奮はあるようだ。黒猫たちと同じような憧れのこもった瞳でフランを見ている。

だが、黒猫族の興奮もそこまでだった。

「ひえぇ! このゴブリン、まだ生きてる!」

「ええ? うわ、本当だ!」

「ぎゃぁぁ!」

息をするゴブリンの上下する腹に気づいた1人が悲鳴を上げると、他の黒猫族たちもゴブリンが生きていることに気づいて顔を青ざめさせる。

「持ってる武器で、こいつらに止めを刺す」

「え?」

「皆がこいつらを殺す」

「ええ?」

「なんで?」

「な、何のためにですか?」

まあ、混乱するよな。

「ゴブリンを殺して邪人を殺すことに慣れる。一回殺れば、自信もつく」

フランが説明するんだが、自分から動き出す者はいなかった。まあ、今まで武器さえまともに握ったことが無いだろうしな。狩猟ではない、殺すための暴力は振るったこともないだろう。躊躇うのは分かる。

「早くしないと、麻痺が解けるよ?」

「ひぃっ!」

「じゃあ、右端の3人。やる」

「いや、でも……」

「き、今日じゃなくてもいいんじゃないかな~って思うんですけど」

「そ、そうそう」

決心がつかないのか、指名された3人の青年たちは何やかやと言い訳して、前に出ようとはしない。

邪神の配下である、邪~という奴らを総称して邪人と言うらしいが、こいつらは一般人にとっても世界の敵だ。殺すこと自体には忌避感はない様なんだが……。

ゴブリンを殺すことがと言うよりは、武器を振るう事に慣れていないんだろう。

しかし、フランはスパルタだった。

「ダメ。今やる」

「でも――」

「む、ゴブリンの麻痺が解けそう」

「ひぃい!」

「早くする」

「は、はぃぃ!」

「そっちの2人も」

「ああ、なんでこんなことに!」

「や、やるしかない!」

フランが一切妥協する気が無いのが伝わったんだろう。3人が武器を構えて、恐る恐るゴブリンに振り下ろした。武器スキルもない、腰も入っていないヘナチョコの一撃だ。ペシンと言う気の抜けた音がした。

これではゴブリンが相手であっても、命を奪えるはずもない。斬られたことに対する防衛反応によってビクンと痙攣するゴブリン。それを見た3人は、情けない悲鳴を上げてその場から飛びのいた。

逃げる時だったら速く動けるじゃないか。

「もっと腰を入れる」

「で、でも~」

「もう一度。こうして、こう」

フランが剣の振り方を示してみせる。

「は、はい……」

「うう……」

「もう嫌だー!」

フランの圧力に自棄になった3人は、先程よりも力の籠った攻撃をゴブリンに浴びせた。今度はきちんと頭や腹を狙っているし、一発で止めないで数度振り下ろしている。

「はぁはぁ……」

「どうだ?」

「やった……のか?」

「ん。良くやった。ゴブリンを殺した」

「「「おおお!」」」

フランの言葉に、3人は頬を紅潮させて雄叫びを上げた。邪人を殺したという事実に興奮しているんだろう。

だが、調子に乗り過ぎないように、釘をさすことも忘れない。

「無抵抗のゴブリンを殺すのに、3人がかりで10回も攻撃が必要だった。雑魚のゴブリンだったら、1撃で殺せる様にならないとダメ」

「う、そうですか……」

「そうだよな」

「俺たち、何浮かれてるんだろう」

「でも、初めてにしては悪くなかった。訓練をしてスキルを得れば、ゴブリン程度には後れを取らなくなる」

「「「はい!」」」

良い飴と鞭だ。上げられて下げられて、3人は完全にフランに心服したな。まあ、元々フランを崇拝していたけど、今はちょっとした洗脳レベルかも?

ただ、黒猫族の青年たちに、自信と目標を植え付けることは出来たようだ。実際に進化を目指そうとするかは分からないけどね。

「じゃあ、次の3人」

「は、はい!」

その後、フランは全ての黒猫族の若者たちにゴブリン殺しを経験させていった。皆もっとグズるかと思ったんだが、フランの圧に負けて声をかけられればすぐに前に出て来た。仲間がやっているのを見て、多少覚悟が出来たというのも大きいだろう。

レベルが上がった者もおり、若者たちは静かな興奮に包まれている。村に戻ったら早速鍛錬を始めようと話している者もおり、フランの目論見は成功した様だ。

中にはどうしても戦いに慣れることが出来ず、終始腰が引けた者もいたので、全員がとはならないだろうが。

「ん。この辺にはもう魔獣いないから、村に戻る」

「わかりました。この死体はどうされますか?」

「とりあえず仕舞っとく」

フランは全てのゴブリンを次元収納に仕舞うと、皆を先導して帰路へとつくのだった。