軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

281 黒雷姫暗殺未遂事件

俺たちは暗殺者を衛兵に引き渡すため、出発したばかりのグリンゴートに戻って来ていた。

「あれ、君はさっき出発した……?」

出発から30分も経っていないからな。門番兵もフランを覚えていたらしい。

「ちょっと用事ができた」

「その用事って、狼に結ばれて引きずられて来たせいで、ズタボロになってる男性たちに関してでしょうか?」

「ん。街道で襲われた」

「お、お怪我は?」

「へいき」

「しかし、この辺に盗賊とは……。昨年、獣王様によって軒並み潰されたと思ったのに」

「盗賊じゃなくて、誰かに雇われた殺し屋。私を殺す様に言われてた」

「あ、暗殺者? し、少々お待ちください! すぐに上の者が来ますので! おい、応援を呼んでこい!」

「おう!」

しばらく待っていると、兵士長と呼ばれる人物が泡をくった様子でやって来た。某妖怪漫画のネズミ男に似てると思ったら、本当に鼠族だったよ。

「黒雷姫殿! お怪我はないですか!」

「ん。へいき」

フランの言葉に安堵した顔をすると、部下に状況を確認し始める。

「そうですか。おい、賊はどうなっている?」

「は! 牢にぶち込んであります!」

「よし、なんとしても背後関係を喋らせろ!」

「は!」

「では黒雷姫殿はこちらへどうぞ」

丁重な態度で詰め所の応接室の様な場所に通された。進化した目上の相手として扱ってくれているらしいな。

「黒雷姫殿に一番良い茶をお出ししろ」

「かしこまりました」

下にも置かない扱いだ。兵士長の指示通り、高級そうなお茶が出て来た。そこまでは良い。

だが、この分厚いステーキは何だ? 一瞬ツッコミ待ちかと思ったが、真面目な顔だ。フランの前に座る兵士長も、ステーキを持ってきた小間使いも、早速モギュモギュとステーキをほおばっているフランも、全員が真面目な顔だった。獣人族の底知れぬ食生活を垣間見たぜ。お茶請けに極厚ステーキとは。

そうやってステーキを食べつつ、兵士長に暗殺者たちと遭遇した時の状況などを説明していたら、誰かが階段を駆け上がってくる気配があった。かなり急いでいる様で、ドンドンと荒々しい足音が聞こえてくる。

それでも部屋に飛び込まない程度の分別は残っていたらしく、応接室の前で足を止めて扉をノックをした。まあ、ガンガンガンと勢いがあり過ぎの荒っぽいノックだったが。

「どうぞ」

「失礼する! おお、黒雷姫殿ですか?」

「ん」

「私はグリンゴートの領主を務めております! 翠山羊族のマルマーノと申します! お見知りおきを!」

声がデカイな。山羊と言うが、ムキムキマッチョで肉食系にしか見えん。その体つきといい、腰に吊るした武骨な剣といい、武人であるようだった。

「兵士長、事態はどうなっている?」

「は! 現在賊共は尋問中であります」

「絶対にバシャールの仕業に違いない!」

「私もそう思います」

「絶対に口を割らせろ! 犯人を逃がすな! 何せ我ら獣人の英雄たる黒雷姫殿を狙った、暗殺未遂事件なのだからな! まことに許しがたい行為だ!」

いつの間に英雄扱いに? だが、兵士長はマルマーノの言葉に大きく頷く。

「了解であります! それと、黒雷姫殿が賊に遭遇した場所にも、すでに兵士を派遣しました」

「うむ。良い判断だ。町中の捜査はどうなっている?」

「そちらも、チンピラどもがたむろしている場所を重点的に取り締まるつもりで、兵士を編成中です。ただ、バシャール王国との国境に半数を派遣しているため、人数が不足しております」

「ちっ、ここでもバシャールか! よし。騎士団からも人数を回そう」

「良いのですか? 城の守備が……」

「構わん! これはバシャール王国から我らに売られた喧嘩である! 必ず後悔させてやるのだ!」

いやー、町の中を捜査して手がかりが得られるかね? 仮に暗殺者たちが単なる嫌がらせ要員だったとしたら、黒幕は奴らが負けて捕まることも織り込み済みだろう。

だとしたら、町に潜伏している可能性は低いと思う。俺だったらとっとと逃げ出す。

とは言え、手がかりが得られる可能性もあるし、他にもバシャール王国に繋がっている人間がいるかもしれない。ここは下手なことは言わずに、捜査を続けてもらった方が良いだろう。

領主には捜査が済むまで町に滞在してほしい、館で持て成すと言ってきたが、急ぐ旅だと言って丁重にお断りすることにした。噂の黒雷姫とぜひお近づきになりたいのだと明らかだったからな。

まあ、ここの領主の場合は権力や権威を求めたのではなく、純粋に進化した相手への敬意から出た憧れに近い感情だったようだが。食事でもしながら武勇伝を聞きたかったらしい。

とは言え急いでいるのは確かだし、今回はごめんなさいすることにした。煩わしいのは確かだしね。

「あれが、町の人が言ってた川?」

『多分そうだろうな。あの川を越えれば、シュワルツカッツェはすぐそこだぞ』

引き止められるのを振り切ってグリンゴートの町を飛び出した俺たちは、再び北を目指してひた走っていた。

もう少しでシュワルツカッツェだ。取り調べやら何やらで少し時間をとられたので、ウルシには少し無理をしてもらっている。

町を出た後も少し遠回りしたしね。

実は、暗殺者を差し向けて来た黒幕に目的地を知られない様に、色々と小細工をしてみたのだ。南に延びる王都への道をあえて選択し、その後転移で大回りをして、当初の予定通り北へ続く街道に戻ったのである。

転移した場面を見られないように、森の中で転移をしたし、その後も出来るだけ姿を隠して行動をしてきた。ウルシの速さと、転移があれば、多分見つかってはいないと思う。

「師匠分かれ道」

『グリンゴートで聞いた話では、川を渡った後は、右を進めって言ってたはずだ』

「オン!」

『そんでもって、そのまま道なりに進めば――』

「師匠! あれ!」

『おう!』

シュワルツカッツェへと続く細い道。その先に、背負子を背負って歩いている数人の獣人が見えた。離れていても分かる。

『どう見ても黒猫族だな!』