軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

236 模擬戦依頼

『時間もちょうど良いし、ガムドの所に行こうぜ』

「ん」

『若手冒険者との模擬戦か……』

「腕が鳴る」

『いやいや! 鳴らさなくていいから!』

「ん?」

と言うか、どれだけ手加減できるかの方が重要だろう! フランはかなりやる気だが、やり過ぎたら体にも心にも傷が残ってしまうかもしれん。

ガムドが目をかけているって言ってたけど、本気のフランとやり合えるレベルではないと思うしな。

でも、ガムドだってそこらへん分かってるよな? と言う事は想像以上にその冒険者たちのレベルが高いのか? フランとまともに模擬戦が出来るくらい?

もしくは子供を千尋の谷に叩き落とすタイプの教育方針なのかもしれないな。崖から落ちる程度のダメージじゃ済まないかもしれんが。

まあ、会ってみれば分かるだろう。

俺たちはレグスと会話していた会議室を出て、一旦冒険者ギルドの一階に向かった。ギルマスの部屋に直接行っても許される気もするけど、依頼だからね。きちんと受付をしていた方が良いと思ったのだ。

「ガムドいる?」

声のかけ方は適当だけど。

「フラン様。承っております。こちらへどうぞ」

受付嬢が案内してくれたのは、執務室ではなく、ギルドの奥にある部屋だった。中に入ると、壁や床に所狭しと武具が置かれている。武具庫みたいだな。

中には武装を整えたガムドが待っている。

「よく来たな!」

「ん。なんで鎧? 模擬戦に参加するの?」

フランが期待に満ちた声で尋ねる。これは完全にガムドとの戦闘を期待しているな。だが、ガムドは首を横に振った。

「いや、審判役をするからな。巻き込まれても平気なように、防具を身に着けただけだ。俺は戦闘には参加せん」

「そう」

残念そうに呟くフランだったが、すぐに冒険者相手に頑張ろうと思い直したらしい。何やらやる気の表情で頷いている。

「むん」

『適当でいいぞ?』

「ん。頑張る」

おう。グッと手を握って、かなりやる気になっておられる。……うん、冒険者諸君の冥福を祈っておこう。

「準備は良いか?」

「いつでも」

「じゃあ、行くか。もうガキどもは裏の訓練場に集まってるはずだ」

ガムドに案内された訓練場はかなり大きかった。直径30メートル程度はあるだろう。壁も厚く、内部で多少やんちゃしても外に影響が出ない作りになっている。

「おうガキども! 集まってるか!」

「ちぃーす」

「おはようございます!」

「こんちゃー」

「いえーい!」

せいぜい2、3人かと思っていたら、9人もいるぞ。どうみても地球のヤンキーにしか見えないような態度ゲキ悪の奴らから、これはこれで暑苦しそうだな~というピシッと背筋を伸ばして整列している奴まで、個性も様々だ。

鑑定をしてみると、意外に強かった。2人程、頭一つ飛びぬけている奴らがいるな。レベル27の幻剣士と、レベル26の火炎術師だ。ランクD冒険者並じゃないか。

この2人は別格としても、平均でレベル22くらいはある。戦闘力が一番低い奴でも、レベル20の斥候職だ。

「今日の訓練は模擬戦をするぞ」

ガムドがそう声をかけると、やいのやいのと騒ぎ出した。舐められてると言うよりは、軽口をたたく様な親しい間柄なんだろう。

「またですか?」

「フォールンドさんの方が良いんだけど」

「ガムドさんは手加減苦手だし」

「うるせぇ! 黙れ!」

ガムドの怒声で、冒険者たちの騒ぎがピタリと止まる。

「おい、自己紹介してやってくれ」

「ん。フラン」

フランが前に進み出ると、冒険者たちの視線が一斉にフランに向く。そして、そのまま一人の冒険者に向かった。

何だ? 全員がその男を見つめているぞ? だが、鑑定して見るとその理由が分かった。

そのレッドという名前の盾士の冒険者は鑑定Lv7を持っていたのだ。多分、フランの実力が良く分からず、レッドの鑑定結果を頼りにしているんだろう。

だが、それは無駄だぞ? なにせ、鑑定偽装スキルによってデタラメなデータを表示してあるからな。

とは言え、この程度の冒険者が、ただ立っているだけの状態のフランを見てその実力を理解するのは無理なことだろう。

レッドは、すぐにフランを馬鹿にするような表情を浮かべると、皆に向かって肩をすくめた。多分、大したことが無いと言うことを教えているんだろう。

すると、冒険者たちの雰囲気もどこか弛緩したものになった。自分たちの後輩になる少女の顔合わせ的な場だと考えたんだろう。

「今日はフランと皆で模擬戦を行ってもらう」

「……いいんですか?」

冒険者の1人が聞き返す。

「ああ。フラン、手加減無用だ。せいぜい揉んでやってくれ」

「ん」

ガムドの言葉にフランが頷くと、冒険者たちがニヤニヤと笑い出す。笑っていないのは例の真面目そうな冒険者だけだ。

せいぜい揉んでやってくれと言うガムドの言葉が、自分たちに向けられたものだと勘違いしたらしい。多分、少し調子に乗っているフランにお灸を据えてやって欲しい的な意味に捉えたんだろう。

「わかりやした」

ガムドも性格が悪いな。わざと冒険者たちが勘違いする様な言葉を選びやがった。これでフランの実力を見せつけられたら……。プライドは粉々になるだろうな。

まあ、俺から見ても若くて才能がある冒険者たちだし、少し天狗になってしまうのも分かる。ここでフランにコテンパンにされて、ポッキリ鼻を折られた方がこいつらのためかもね。

「まずはデュフォーからだ」

「いきなり俺ですか?」

「何か不満か?」

「いえ……」

いきなり最強の幻剣士が相手か。フランがガムドをチラリと見ると、ニヤリと笑いながらウィンクしてきた。おっさんのウィンク気持ち悪い! まあ、最初にガツンとやってやれってことなんだろう。

『やりすぎるなよ?』

(ん。グレーター・ヒールで治せる程度にしておく)

『いや、それはやり過ぎだから!』

せめてミドル・ヒールくらいにしてあげて。だが、フランは俺を抜き放つと、ワクワクとした表情で訓練場の中央へと歩き出すのだった。