軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

194 金の炎

『良かったのか? 赦して』

「赦してない。猶予を与えただけ」

『まあ、フランがしたい様にすればいいんだけどさ』

青の誇りの野営地での騒ぎの後、フランは不機嫌そうな顔で道を歩いている。

青猫族であるにもかかわらず、ゼフメートとは仲良くなれるかもしれなかったのだ。そして、青猫族の中にもまともな奴が居ると知ることが出来た。そのはずだったのだが……。結局、青猫族は青猫族だった。彼が特別なだけだったのだ。

ゼフメートとの仲は、修復が出来るか分からない。フランも心の底ではゼフメートと仲良くしたいと思っている。しかし、この後の展開によってはまた戦うかもしれない。最悪は彼を殺すことになる可能性もあった。

フランにとって、ゼフメートの妹の発言はそれだけ許せなかっただろう。俺だってかなり頭に来ている。他人を売り払って当然と思っているような奴ら、ゼフメートが居なければあの場で殲滅していた。

フランの中で様々な負の感情が渦巻いているんだろう。今絡んでくる奴が居たらやりすぎてしまうかしれん。近寄ってくるなよ。

まあ、フランが放つ剣呑な雰囲気のおかげか、話しかけてくるような馬鹿はいなかった。

そのまま20分程歩いた頃。フランが足を止め、バッと背後を振り向く。

『この気配は……』

「……獣王?」

離れた場所からも感じられる程、凄まじく強力な魔力と闘気が、青の誇りの野営地から立ち上っていた。

慌てて来た道を走り始めるフラン。

この魔力は獣王の物だ。尋常な事態ではないだろう。ただの訓練などではありえない。

どうするかなど考えてはいないだろう。だが、フランはただただ全力で走った。ゼフメートへ感じていた友情、獣王への恐怖。そして、その両者に何があったのか。

『フラン、獣王がいるはずだぞ! いいのか!』

「……ん!」

野営地まではフランが全力で駆ければ、2分もかからなかった。

「はっはっ……!」

『やっぱ獣王か!』

息を乱して野営地に辿りついたフランの目に飛び込んできたのは、全身に金色の炎を纏い、野営地の中央に悠然と立つ獣王の姿だった。そして、その前に全身黒焦げで倒れ伏すゼフメートであった。瀕死であることは一目瞭然だ。

「馬鹿め……俺様に逆らうからだ。もういい、死ね」

獣王が火に包まれた右手を振りかぶる。その光景を目の当たりにしたフランの行動は迷いの無い物だった。

「師匠、いく!」

フランが俺の返答も待たずに飛び出す。右手に俺を、左手に即死効果のあるデスゲイズを取り出して装備し、弾丸の様に駆けた。

スキルと魔術を組み合わせた、リンフォード戦に見せた必殺の一撃にも引けを取らない超加速からの斬撃だ。当然、隠密系スキルで気配は消してある。

獣王リグディスの察知系はそこまで高くはない。いや、高いんだが、ランクSに相応しいかと言われたら、そうでもなかった。フランの不意打ちを獣王が察知するのは難しいだろう。

声をかけて制止するのは悪手だ。それで止まらなかった場合、確実にゼフメートは命を落とす。そして、獣王の隙も消える。ならば、先制攻撃を入れられるこの機会を生かした方が良かった。獣王と完全に敵対してしまうリスクを考えなければだが。

まあ、フランは既に獣王と戦う決心をしているからな。その行動に躊躇はなかった。

狙うは一撃必倒。つまり、獣王の首である。今のフランは、獣人国を敵に回すかもしれないとか、国際問題とか、そんなことは一切考えていなかった。ただ、ゼフメートを獣王の魔の手から救うにはどうすれば良いか、それしか考えていない。

それに、獣王は身代わりの腕輪を装備しているので殺してしまう恐れが無かった。さすがに獣王を殺したら色々とまずいことになるからな。国際問題とか。いや、攻撃するだけで十分問題だが、殺すよりは何倍もましだ。ある意味、身代りの腕輪のおかげで本気で攻撃できるとも言える。

そして身代わりの腕輪が発動するような事態になれば、いくら獣王とてその動きを止めるはずだ。その間にゼフメートを助けて離脱すればいい。

本当にフランの身の安全だけを考えるなら、ここで転移でもしてゼフメートを見殺しにし、獣王から逃げ回るのが最善だろう。それは分かっている。

ただ、それではフランは納得すまい。そもそも、フランの安全だけを考えているなら、とっくに冒険者を辞めろと説得している。それをしないのは俺がフランと冒険をしたいと言う事もあるが、それ以上にフランが冒険者でありたいと願っているからだ。

俺はフランの保護者であり、フランの剣。その身を守りつつ、その願いを叶えるのが俺の役割だ。その先が崖であっても、飛び込みたいとフランが言うなら一緒に飛び込むさ。そして、その身を守ってみせる。

つまり何が言いたいのかと言えば、フランはしたい様にすればいい。俺はただ全力でサポートするのみである。

一気に獣王の背に肉薄したフランは、双剣を持った手を体の前で交差させ、同時にその剣を左右に振り抜く。例え相手の防御力が高かろうとも、魔力を纏わせた二刀による一点集中なら突破できると考えたんだろう。双剣はまるで巨大な鋏の様に、獣王の首を切り裂――けなかった。

フランは何の抵抗もなく双剣を振り抜けてしまったことに驚きの表情を浮かべる。そして、剣を振り抜いたのに未だ無傷の獣王を困惑気味に見つめた。その後、俺へと視線を向け、驚愕の表情を浮かべる。

「ああ? 何だテメーは?」

ゼフメートへの攻撃は止めることに成功したが、獣王がフランに気が付いてしまったようだ。

だが、フランには獣王の問いに答える余裕はない。ただ真っ青な顔で、俺を見つめている。何せ、俺とデスゲイズの刀身が完全に消失していたのだ。フランが今手に握っている柄と、鍔しか存在していない。デスゲイズからは魔力が完全に失われてしまった。それだけではない。黒猫の外套についた僅かな焦げも一向に修復される様子が無い。いや、微妙にではあるが、修復はされているか? ただ、いつもと比べて非常に遅かった。

フランには何が起きたか分かっていないだろう。だが、当事者である俺には全てが理解できている。獣王が身に纏う金色の炎だ。俺もデスゲイズも、その炎に触れた瞬間に凄まじい熱量によって溶かされ、蒸発させられてしまったのだ。剣の刀身を瞬時に蒸発させるほどの熱量を持っていながら、周辺に目立った被害が無いのは、スキルによる炎だからだろう。

「師匠っ!」

「はぁ? 師匠? お前この青猫族の弟子なのか?」

『フラン、落ち着け。俺は平気だ。とりあえず念話で話せ』

(よかった……)

幸い、刀身をやられただけだ。この程度なら再生できる。ただ、魔力の籠った炎で焼かれたからか、デスゲイズと同じで魔力までゴッソリと減らされていた。

『にしても、ヤバいな……』

獣王は斬られた後にこっちに気が付いた、つまりあの炎は自動的に獣王を守ったってことだ。オートガードであの凄まじさである。もしあの炎で攻撃されたら? 防げる自信が無い。

「おい、黙ってないで答えろ小娘」

「……ゼフメートに何をした?」

「ふん。質問に質問を返すとは、育ちの悪さが知れるぜ黒猫族?」

揶揄するような言葉に、フランがギリッと奥歯をかみしめた。だが、怒りを押し殺して、獣王に問いかける。

「……どうしてゼフメートを殺そうとした?」

「耳が付いてないのか? まあいい、部下への制裁だよ」

部下への制裁ね。つまり、青の誇りは獣王の部下ってことか。そして、ゼフメートが何か命令違反を犯した? ゼフメートと言えば親黒猫族。獣王は反黒猫族。つまり、それが理由なのだろうか?

「とにかく、お前はこいつらに味方するってことで良いんだな? 黒猫族のクセに?」

「……ん」

「ほう。瞬間的に再生するとは、面白い剣だな」

瞬間再生で刀身を回復させたが、正直俺を使っての攻撃は効果があまり見込めない。魔術を中心に攻めることになるな。

相手は炎。水か氷雪かね。ここは温存とか言ってないで、スキルのレベルを上げた方がいいだろうか。

「……フラン……やめ、ろ……」

「ゼフメート、今助ける」

「はっはっは、黒猫族と青猫族の麗しい友情だなぁ! 滑稽すぎて哀れになるわ!」

「だま、れ……」

「その状態でまだその口が利けるか。残念だよ。お前は見込みがありそうだったのに。小娘、教えてやる。獣王リグディス・ナラシンハの真の恐ろしさをな。俺に逆らった愚かさを嘆くがいい!」

獣王の纏う炎がユラリと揺らめき、より猛々しくその勢いを増していく。あの金色の炎は危険だ。掠る事さえ許してはいけない。

俺はいつでも転移を行えるように身構えた。

フランと獣王の闘気がぶつかり、両者の殺気が高まっていく。だが、両者の殺気はすぐに霧散してしまった。

「ちょっと、何をしておられるのですか! 陛下!」

「む、ロッシュ……」

「まったく、ちょっと目を離したらこれなんですから!」

突然現れた男が獣王に説教をし始めたのだ。見覚えがある。馬車の御者をしていた男だ。

名称:ロッシュ 年齢:37歳

種族:獣人・白鼬族・白呪鼬

職業:猟魔師

ステータス レベル:62/99

HP:556 MP:558 腕力:251 体力:302

敏捷:539 知力:248 魔力:306 器用:417

スキル

足裏感覚:Lv4、穴掘り:Lv6、隠密:Lv8、風魔術:Lv4、弓技:Lv9、弓術:LvMax、弓聖術:Lv1、御者:Lv7、警戒:Lv8、気配察知:LvMax、気配遮断:Lv7、柔軟:Lv4、瞬発:Lv8、消音行動:Lv5、状態異常耐性:Lv4、生活魔術:Lv3、精神異常耐性:Lv5、短剣技:Lv4、短剣術:Lv5、調香:Lv8、跳躍:Lv6、登攀:Lv5、毒知識:Lv8、毒魔術:Lv5、土魔術:Lv7、土中潜行:Lv5、火魔術:Lv5、魔術耐性:Lv3、魔力感知:Lv7、夜陰紛れ:Lv7、罠解除:Lv6、罠感知:Lv8、罠作成:Lv4、気力操作、嗅覚強化、感覚強化、魔力操作、聴覚強化

固有スキル

覚醒、呪撃

称号

キマイラスレイヤー、ダンジョン攻略者

装備

冥界樹の弓、次元の矢筒、黒影獣の革鎧、黒影獣の隠密靴、魔影鋼の仕込み手甲、隠密黒蜘蛛の外套、器用の指輪、収納の腕輪

狩人か。だが斥候もこなすし、戦闘も魔術も行ける万能タイプだ。

「そもそも、相手が黒猫族って……。今回の目的を完全に忘れてますね!」

「いや、でもその小娘は、青の誇りの味方をしたから」

「だからと言って、戦う必要あります? 本当に脳筋なんですから!」

「まあまあ、そのくらいにしておけロッシュ。リグ様、青の誇り内で奴隷売買に携わっていた者たちの捕縛、全て完了いたしました。逆らった者は処分済みです」

さらにロイスまで現れやがった。しかし奴隷売買にかかわっていた奴らを捕縛したとか言ってたか? え? 獣王たちの目的は一体なんだ?