軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

152 ソラス

地面に倒れているソラスに、簡単にヒールをかける。

腕と足を失う大怪我だ。ヒール1発で治るはずもないが、とりあえず止血しておかないと話も聞けないからな。

「……」

その間も、ソラスは無表情でフランを睨んでいた。

「まずは鑑定遮断を解除しろ」

「はぁ?」

「とぼけても無駄」

「……なるほど、鑑定持ちか」

「ん」

「嫌だと言ったら?」

交渉をするつもりだったのか、単なる意地か。ソラスは強気な表情でそう言ってくる。だが、今はソラスとまともに交渉をするつもりはなかった。

謎のスキルの事も分かっていないし。まずはその正体を掴んでからだ。

「じわじわ嬲る。殺さない。回復魔術があるから、自殺もさせない」

「……っ」

こういう時、フランの無表情が役に立つよね。どう考えても本気に聞こえる。まあ、本気なんだが。

ソラスもフランの本気を感じ取ったのか、その瞳には明らかに怯えの色が混じる。

「……命は、助けてもらえるんだよな?」

ソラスが探る様な声色でそう言った瞬間だった。さっきまではチリッという変な違和感としか思えなかったのだが、今度は確実にソラスから何かされたと感じ取ることができた。

刀身を撫でられたかのような、無視することができない感覚。

悪意感知、危機察知、気配察知、魔力感知、この辺が働いてくれているんだと思う。結果、スキルが使われた気配を僅かに感じ取れているのだ。

『フラン、今の感じたか?』

「?」

『ウルシは?』

(オウ?)

やっぱりフランとウルシは感じ取れないか。だが、何で俺だけが? いや、俺には魔力の流れを感じ取る魔法使いスキルがある。物理的な感覚では五感をフルに使えるフランに負けるが、魔術やスキルを感じ取る面では俺の方が上なのかもしれない。

(何かされた?)

『多分な』

「ん」

フランはコクリと頷くと、腹這いで転がるソラスの背に俺を思い切り突き立てた。

「ぎいぃぃぃぃっ……!」

完璧に肺を貫いている。一般人なら即死かも知れないが、ある程度のレベルの冒険者だったことが災いしたな。生命力が高いせいで気絶さえできず、ソラスは口から泡と血を吹き出し、激痛に身をよじっている。

「ひぎぎぃぃぃぃぃ!」

「ミドル・ヒール」

「はうぁぁ……」

フランが傷を癒してやるが、ソラスの表情は寧ろ絶望に染まっている。フランの言葉が本気だと分かってしまったからな。

「鑑定遮断を解いて黙るまでは、余計なことは何一つ許さない」

「グルル」

「……はっ……はっ」

恐怖のせいなのか、肺を貫かれた後遺症か、急に息が荒くなってきたな。もはや恐怖を隠そうともせず、涙さえ浮かべてフランを見上げる。

「わ、分かった! 解除する! だが、装備品の効果なんだ! い、今外すから、ちょっと待ってくれ!」

鑑定遮断は指輪の効果だったらしい。ソラスは残った左手を顔の前に持っていくと、中指に嵌めた指輪に噛み付いた。ああそうか。右手を斬り飛ばしちまったからな。口を使って指輪を外す気なのか。

だが、指輪は全然外れない。指輪ってそうなんだよね。ちょっと太ったり、むくんでたりするだけで全然外れなくなるんだ。

ソラスは必死に指輪を外そうと試みるが、指輪は全く動かなかった。

「はっ……ぐむ……」

一向に外れない指輪に、フランは痺れを切らしたんだろう。

「もういい」

「え――ぎゃぁ!」

ソラスが間抜け面で指から口を離した瞬間、その指を切断した。まあ、手っ取り早いしね。ソラスは激痛で悲鳴を上げているが、俺は中指以外を一切傷つけていないその技に感心してしまった。

「ヒール」

「ひぃひぃ」

ちょっと残念だったのは、指輪が砕けてしまったことだ。フランのせいじゃなくて、使用者が外したら壊れる、使い捨てタイプの道具だったらしい。だが、鑑定が通じるようになったな。

名称:ソラス 年齢:33歳

種族:獣人・赤猫族

職業:迷宮斥候

状態:平常

ステータス レベル:34

HP:208 MP:187 腕力:101 体力:98 敏捷:187 知力:111 魔力:84 器用:191

スキル

暗殺:Lv3、演技:Lv6、隠密:Lv6、欺瞞:Lv5、気配察知:Lv3、消音行動:Lv4、短剣技:Lv3、短剣術:Lv6、投擲:Lv4、毒耐性:Lv3、魔力感知:Lv2、罠感知:Lv6、罠解除:Lv6、気力操作

ユニークスキル

強制親和:Lv6

称号

裏切り者、殺人者

結構強いな。ランクC並だぞ。それに、スキルのレベルが結構高い。

『ユニークスキルがあるな。強制親和?』

「強制親和? どんなスキルなの?」

「それは……。ああ、分かった。分かったよ! 答える! だから剣を下ろして、狼ももっと離してくれ!」

「グル」

そうそう、無駄口叩かずにとっとと話せ。

「このスキルは、使うと周囲の親近感を得られるっていう地味なスキルだ。相手は俺のことをまるで仲間や友人の様に感じて、多少の疑問や違和感は無視してくれるようになる。恋人や親友じゃないところがミソだな」

だからか。俺たちがこいつの言葉や行動に違和感を覚えず――いや、覚えた違和感を自分の気のせいだと無視してしまったのは。

「ちょっとの切っ掛けで強い疑問を持たれたら簡単に解除されてしまうスキルだよ」

「このスキルで冒険者のパーティに潜り込んで、仲間に襲わせてた?」

「ああ」

やはりそういう事か。罠をわざと発動させたりした手際からも、この迷宮内で相当な間活動しているんだろう。

「他に仲間はいる?」

「いない。お前に殺された奴らで全員だ」

『嘘だな』

「嘘。仲間は何人いる?」

フランが俺をソラスの眼前に突き付ける。

「もしかして……嘘看破スキルを持っているのか?」

「ん」

「……折角注意していたのに……」

そうか、鑑定遮断と強制親和があるんだ。あとは嘘看破にさえ気を付けていれば、正体に感付かれる確率は格段に下がる。

考えてみれば、ソラスの発言は曖昧でどっちともとれる発言が多かったな。こっちの勘違いを誘いつつ、嘘ではない。そんな感じだ。強制親和があれば、相手は勝手に納得してくれるし。さっきまでの俺たちみたいに。

虚言の理は有用だけど、それだけには頼れないってことか。質問の仕方を注意しないと、同じようなことがあるかもしれない。それが分かったのはデカイ収穫だ。

「素直に喋るか、拷問の後に喋るか――」

「部下があと4人いる!」

「ん」

素直でよろしい。しかしこいつがリーダーだったか。

「どこにいる?」

「……今日は、冒険者ギルドにいるはずだ」

ソラスが潜入して情報を集めてから、仕事に及ぶのが毎回の流れらしい。そこそこ稼いでいるパーティを狙う事が多いらしいが、そういうパーティはイケイケで、迷宮で消えたとしても周りは「やっぱりな」と納得してしまう事も多いらしい。

しかも事に及ぶのは月に1度ほどな上、何もせずに見逃すことも多いんだとか。ソラスが入ったパーティが毎回全滅するという噂が出るのを防ぐためだ。周到だな。

ソラスに仲間の所に案内させたい。ゴミは掃除しないとね。

『でもスキルが色々ばれてるんだよな。このまま生かしていたら、俺たちの情報がソラスから漏れるかもしれん。どうしようか?』

(斬る)

『それがいいかな……』

ソラスの仲間を捕えれば、今までの犯行の情報なんかは分かるだろうし。でもリーダーであるソラスしか知らない情報があるかもしれないんだよな。お宝の隠し場所とか。

『いや、待てよ。一つ試したいスキルがある』

要は俺たちの情報がソラスの口から出なければ良いんだ。

「そいつらの所に案内すれば、これ以上痛めつけることはしない」

「分かった……」

「ただし、契約をしてもらう」

「契約? もしかして契約魔術までもっているのか?」

「私たちの情報の一切の漏洩を禁ずる。破れば命を貰う。この契約に同意してもらう」

「するよ!」

さすがに察しが良い。ここで断ったら殺されると分かっているんだろう。

「じゃあ、契約をする」