軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

146 探し人の行方

ギルマスの執務室を出る前に、察知系、感知系スキルをどれくらいのレベルまで鍛えれば良いのか聞いてみた。

Lv8、もしくはLv6を3つ以上とは言っていたが、それで十分なのか?

「うーん、そうだね。例えば、鑑定は隠密性が高いスキルだ。僕には鑑定察知があるから見抜けたけど、無ければ難しい。目利きとか、看破系のスキルもそうだね」

だからこそ、後ろめたい奴らは神経質になるんだろう。気づかない内に自分の秘密を暴かれているかもしれないんだし。

「だけど、思考誘導や技能忘却は気配を隠すことは難しいね。僕レベルだったら、何かこちらに干渉するスキルを使ったなっていうことくらいは察知できる」

鑑定とか目利きなんかは、言ってしまえばただ見るだけのスキルだ。視るでも観るでも良いが、相手の情報を読み取っているだけ。

だが、思考誘導などは、相手に干渉するスキル。感付かれる可能性が段違いなんだろう。

俺の手持ちスキルで言えば、鑑定や、虚言の理の嘘感知は見抜かれづらい。だが、スキルテイカーなんかは気づかれやすいってことか。

「鑑定察知スキルを用いずに鑑定を察知できるようになるには、気配察知などをMaxにしても足りるかどうか……。干渉系スキルを察知するのであれば、Lv8で十分だね」

俺たちの場合、Lv8じゃ足りないかもな。普通の人たちに比べて、俺は自己進化によって一気にレベルアップしている。それが強みではあるが、同時に弱みでもあるのだ。同じスキルレベルでも、熟練の度合いがかなり低いはずだからな。スキルを完璧には使いこなせていないとも言えるだろう。

まあ、だからこそ東のダンジョンでスキルを習熟させるのは良い事なんだけど。当面の目標は察知系スキルを色々使いつつ、自己進化ポイントか魔石吸収によって気配察知のレベルを8以上に上げることだな。

「じゃあ、行く」

「うん。またね。クリムト殿のことはくれぐれもよろしくね?」

拝むようなディアスの言葉を背に受け、俺たちは執務室を後にした。

『資料室でダンジョンの情報を集めていこう』

「ん」

『時間もあまりないし、ちゃっちゃと下調べを済ませるぞ』

夜までに宿を探さなくてはならないし、何よりもある人物を探したい。

『ガルス爺さんはまだこの町にいるかね?』

2時間後、俺たちはガルス爺さんを探しながら、ウルムットの町をぶらぶらと歩いていた。

アレッサで別れたガルスは、俺たちよりも大分早くウルムットに到着しているはずだ。と言うか俺たちが遅すぎたんだが。

ガルス爺さんがこの町にたどり着いたのは間違いないと思う。アレッサと同じで、ガルス爺さんが作ったと思われる上質の鉄鋼の剣を所持している冒険者がチラホラといたのだ。

声をかけて確認したら、やはりガルス作の武器だった。どこで買ったのか聞いたのだが、みな違う店を挙げる。どうやらいくつかの店舗を間借りして、日によって販売場所を変えているらしい。

いくつかの武器屋を回って情報を収集し、道行く冒険者たちの話に耳を澄ませる。

ほとんどがダンジョンか武闘大会の話ばかりで、ガルスの話は聞けない。だが、ある3人組の冒険者たちの雑談から、1つ気になる話を耳にすることができた。

「1晩で邪神信奉者どもの砦が落ちたの? ミレニア砦って言ったら、奴らの世界最大の拠点じゃない?」

「というか、信奉者どもがあれだけ大量に集まってるのはあそこだけじゃないか。噂じゃ、邪神の力を与えられた奴までいるらしいぞ?」

「え? 邪神ってそんなことまで出来るの? 単に犯罪者やイカレた奴らが邪神を崇めてるだけだと思ってた」

「わしも会ったことないのう。じゃが、イビル・ゴブリンとかイビル・コボルトみたいに、邪神の力でパワーアップするらしいぞい?」

「そんな奴らがいるんじゃ、かなり厄介ね。どこかの国が本腰入れて討伐に乗り出したかしら?」

「ミレニア砦はレイドス王国にあるんだぜ? あの国がそんな真似するわけないだろ。利用しようってんならともかく」

「じゃあ、誰がやったのよ?」

「さあのう? じゃが、どうも仲間割れのようじゃったな。偶然近くに居合わせたわしの知人が、逃げ出してきた下っ端に聞いたらしいんじゃ。何でも、外部に出ていた最高幹部が戻ってきて、その日の内に騒ぎが起きたらしいぞい。その幹部が魔獣の様な姿に変わり、残りの幹部を一人残らず叩き切ったんじゃとか。変わり果てた姿で哄笑をあげながら「お前の力を食わせろ!」と叫ぶその姿は、まさに化け物の様じゃったそうな」

「うげー、何その話」

「怪談かよ!」

「いやいや、事実じゃ。噂話じゃから、誇張は入っておるかもしれんが」

邪神信奉者の砦なんて物があったというのも驚きだが、その砦が陥落したらしい。しかも、仲間割れで。

(今の話って、ゼロスリード?)

『フランもそう思うか?』

どう考えても、ゼロスリードが共喰いのために仲間を斬りまくったっていう話だろう。もしかしてゼロスリードを放っておけば、あいつ以外の邪神信奉者を全滅させてくれるんじゃ? で、最後にゼロスリードを倒せば完璧だ。まあ、それまでにゼロスリードがどれくらい強くなっているか分からんけど。

(グルル)

『ウルシはやる気だな』

(いつか倒す)

『おう。そのためにはもっと強くならないとな』

(ん)

(オン!)

その後も俺たちは噂を拾いつつ、ウルムットの町を歩く。そして3軒目の鍛冶屋で、遂にガルス爺さんを知っているという人物を発見していた。ガルス爺さんと同じ、ドワーフの鍛冶師だ。

「じゃあ、もうこの町に居ないの?」

「ああ、バルボラの騒ぎを聞いてな。自分にも何かできるかもしれんからと、数日前に旅立ってしまった」

なんと入れ違いだったか。

「武闘大会までには戻ってくると言うとったから、待ってりゃ会えると思うぞ」

「わかった」

「お前さんのことはガルスから聞いておる。それがネームド装備か……。素晴らしい」

鍛冶師の男が黒猫シリーズをキラキラした目で見ているな。装備を見ているのは分かるけど、傍から見たら幼女をジロジロと恍惚の表情で眺める変態に見えるぞ。

実際、前を通る人が微妙な目で男を見ているし。中には厳しい表情で睨んでいる人もいる。通報とかされてないよな。

男は他人の目など全く気にならないようで、時折外套の生地を触ったりしている。フランも自分の装備が褒められるのは悪い気がしないようで、じっと待っていた。

5分ほどフランの装備を観察して、ようやっと満足したらしい。男は良い笑顔で礼を言ってくる。

「いやはや、眼福だわい。良い物見せてもらった礼に、この町にいる間はワシのところにくりゃ、装備の修復なんかは安く請け負ってやるぞ。あとはダンジョンに必要な道具の調達なんかもな」

修復は自前でどうにでもなるけど、物資の調達は嬉しいな。ダンジョンに潜ってれば、何か必要になることもあるかもしれないし。

『そうだ。ついでに宿も紹介してもらえないかな?』

「ん。いい宿知ってる?」

「まだ決めてないのか? なら大通りにある穴倉の剣亭がいいぞ。なにせ酒が美味い」

さすがドワーフ。そこか。でも、酒飲みが集まる宿ってうるさくないのか?

「酒場は地下にあるからうるさくないぞ」

「分かった。行ってみる」

「おう。また来いよ」

「ん」

紹介してもらった宿は、重厚な外観をした落ち着いた雰囲気の宿だった。

地下の酒場も覗いてみたが、バーのような作りで、飲んで騒ぐような雰囲気ではない。料理を食べるための食堂は別にあり、そちらは普通の大衆食堂風だった。酒が提供されない分、騒ぐ輩は少ないようで、これなら騒音も気にならないだろう。

部屋も清潔で、ベッドもフカフカだ。しかも、小型化している状態のウルシだったら、別料金を支払えば部屋に入れることも出来た。

いい宿を紹介してもらったぜ。

「ん。わるくない」

「オン」

フランたちも気に入った様でよかった。

『さて、これからどうする?』

「もちろんダンジョン」

「オンオン!」

やる気があるのは良いことだ。まあ、依頼をこなさなくちゃいけないしな。

『じゃあ、行く前に依頼書の確認だけはしておこうか』

「そうだった」

とりあえずベッドの上に依頼書を並べていく。しかし、こんなに沢山もらってきちゃって良かったのだろうか? 他の冒険者に知られたらえこひいきと言われそうだ。

『フラン、この依頼書のことは、他の冒険者に黙ってた方がよさそうだ』

「ん」

とは言え、半分は討伐依頼。しかもゴブリン討伐なんかと同じ、上限なし期限なしの、常時依頼だった。

あと半分は、素材の納品だな。

「ハイ・オーガの角に、人食いモグラの爪」

『聞いたことのない魔獣ばかりだな』

「オン」

『えーと、資料室で写してきた魔獣情報によると、東のダンジョンの10階層以降に出現か』

「楽しみ」

ランクD依頼なだけあって、下級冒険者にはたどり着くのが難しい場所だな。東のダンジョンでは、ランクF以下の冒険者は9階までしか入っちゃいけないことになっているらしいし。

『ファントム・ドッグに、ダーク・ストーカー。やはり隠形からの不意打ちがメインの敵が多いんだな』

ディアスが言っていた通りだ。

その後、依頼書を確認してたら、かなり時間が経っていた。フランとウルシは完全に飽きてきている。いくら俺が覚えているとは言え、情報収集は冒険者としての基本だよ? フランももう少しその辺の集中力が続いてくれたらなー。

まあ、勉強嫌いのフランが1時間も依頼書とにらめっこしてたんだから、むしろ成長したのかな? 今までだったら5分で舟を漕ぎ始めてたんだし。

『じゃあ、行くか』

「待った。まだ行かない」

お? もしかして情報をもっと頭に入れてから、とか?

「ご飯を食べてから行く」

「オン!」

『ああ、そうだねー』