軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

138 魔石が欲しいのです

「この度は色々と助かった。礼を言う」

「ん」

料理コンテストの参加者たちで料理を配った日の夜。俺たちはフィリップの訪問を受けていた。とりあえずフランが部屋に通す。ウルシは影の中でグッスリだ。

護衛も連れずにやって来たよ。いや、あれだけ強けりゃいらないのか? それに今は人手が足りてないだろうしな。

フランはフィリップから、黒檀の箱を渡される。大きさは1辺30センチくらいか。

「これは僅かだが謝礼だ。本当は大々的に式典を開いて、君たちの働きを労ってやりたいんだがな……」

「目立ちたくないから構わない」

「そう言ってもらえると助かる。代官からは、我が家の者が関わったという事を伏せる様に言われていてな」

侯爵家の醜聞は、国家の醜聞。国としては大事にしたくないんだな。すでに大事だけどさ。ちょっとでも軽くしたいんだろう。

それに今のバルボラで犯罪の増加や、民の暴動が抑えられているのはクライストン家の働きが大きい。遺族への手厚い補償や、物資を民に配ったり。その侯爵家が民の信用を失ったら? せっかく落ち着き始めたバルボラに、再び大きな混乱が起きる可能性があった。

海の玄関口であるバルボラの復興は国家としての最優先事項だ。なので、今は侯爵家の罪を公表するよりも、事態の沈静化を優先したんだろう。

「私や父上は全てを公表するべきだと思うのだがな。国の意向には逆らえない。おかげで弟たちも表立って裁くことも出来ん」

「ブルックはどうなった?」

「ブルックとウェイントは、処刑が決定した。執行の方法は未定だが。2人とも化け物と化していて話も聞けん。早々に処刑されるだろう。表向きは病死としてな……」

まあ、そうなるか。

あんな奴らでも、家族の情は捨てられないんだろう。弟たちのことを話すフィリップの表情は晴れない。色々な葛藤があるのだろう。

「ブルックの捕縛に尽力してくれた君の功績を公表することが出来ない。すまん」

「別にいい」

謝礼も貰えたしね。フィリップは帰り際まで申し訳なさそうに頭を下げていた。俺達としては、式典とかパレードとか絶対にお断りだし。こうやって謝礼だけ渡しに来てくれてむしろ有り難いんだけどね。

「師匠、箱開ける」

『おう。どれくらい入ってるかね?』

フィリップが去った部屋で、フランが小箱の蓋を開ける。まず目に入ってきたのは大量の金貨だ。数えてみたら100万ゴルド入っていた。それ以外に宝石と宝飾品が数点だな。元々タダ働きのつもりだったから、思いがけない報酬は嬉しい。

『バルボラでは結構儲けたよな』

「ん。これで色々買える」

『お、何が欲しいんだ? 食いものか?』

「それも欲しい。でも違う」

フランが食いもの以外を欲しがるなんて珍しいな。何だ? 女の子らしく可愛い小物とか? もしくはお洒落な服とか?

うん。ないな。

「魔石を買う」

『? 魔石?』

「ん。師匠が吸収するための魔石を買って、ランクアップを狙う。バルボラだったら魔石が沢山あるかもしれない」

『いいのか?』

吸収する用の魔石を買って集めるのって、何となく後ろめたいんだよな。ズルしてるとかそういうことじゃなくて、稼いだ金はフランの物っていう感覚なのだ。ポーションとか防具と食材はフランのためって思えるけど、魔石は自分のためって感じだし。

俺が強くなればフランも強くなるし、フランの為でもあるっていうのは分かってるんだけどさ。

でもそろそろ必要か。

むしろ今後は積極的に魔石を買っていかないといけないかもしれない。俺のランクアップに必要な魔石値はドンドン増えているし、ランクアップするのが難しくなっていくだろうからな。

「色々いらないものも全部売る。必要な物も買う。そして残ったお金で魔石を買う」

『そうだな。冒険者ギルドとルシール商会に頼めば、色々な魔石も手に入るだろうし』

未吸収の魔石でも上位の魔物の魔石を狙っていきたいね。次元収納の中身も混沌としてきたし、いらない物は全部売っちゃおう。

翌朝。

「お待たせいたしました。こちらがお代となります。商品はすぐに運ばせますので」

「ん」

俺たちはルシール商会にやってきていた。いらないものを処分するためだ。弱い魔道具や武器防具、宝石など、相当な数を売り払った。

実はこの前に冒険者ギルドへ行って、魔獣素材も売ってきたのだ。バルボラ周辺で相当溜めこんでいたからな。

あと、今後必要になりそうな食材や、ポーション類もここで買っておくことにした。結果、俺達の所持品はこんな感じである。

幻輝石の魔剣、魔剣デスゲイズ、アイテム袋(謎)、最上級ライフポーション×3、上級ライフポーション×5、全状態異常回復薬×3、上級マナポーション×3、中級マナポーション×5、最上級錬金薬×3、上級武具修復薬×1、スキルレベル上昇薬×1、マイナス作用軽減薬×3、食材多数、キャンプ用品。あとは死体と毒水だな。

王毒牙スキルのある王蛇蝎の短剣や、冥王のマントなど中には売るのを迷う物もあったが、ここは断捨離することにした。おかげですっきりしたね。

装備品で購入したのは、腕力を20上げてくれる剛力の腕輪と、魔術の威力を高めると言う魔術師の首飾りだ。これが現在の装備品である。

黒猫シリーズ(名称:黒猫の闘衣、黒猫の手袋、黒猫の軽靴、黒猫の天耳輪、黒猫の外套、黒猫の革帯)、剛力の腕輪、身代りの腕輪、魔術師の首飾り

そして、最終的な所持金は450万ゴルドとなった。いやー、金銭感覚おかしくなりそう。剛力の腕輪とか120万ゴルドもしたのに、ちょっとお安く感じちゃったし。

『あとは魔石を買うだけだな』

「ん」

「それで、お望みの魔石なんですが……」

おや、レンギル船長が口ごもっているな。もしかして売れないとか?

「現在バルボラは深刻な魔石不足なのです」

「なんで?」

「少し前に錬金術ギルドによる買い占めがありまして。脅威度D以上の魔石はほとんどありません」

「少しはある?」

「はい。ですがフランさんが事前にいらないと言っていた、グリンブルスティ、アピスのものでした」

この辺で採れる魔石しか残ってないのか。

「しかも魔石不足のせいで高騰しており、普段の倍近くしてしまいます」

ゼライセめ! 腕一本じゃ甘かったな! どこまでも祟りやがる。

(どうする?)

『どうするったって、ここで買えないんじゃもう無理だろ』

実は冒険者ギルドでは個人への魔石の販売を行っていなかった。なので、ルシール商会でも入手できないとなると、バルボラで魔石を手に入れるのは難しそうだ。

「残っているのはクズ魔石ばかりでして」

「クズ魔石?」

「ゴブリンや牙ネズミと言った、脅威度G以下の魔獣の魔石のことです」

「それならあるの?」

「はい。しばらく前から魔石不足に陥っていましたので、試験的に買い取ったんですが……。やはり使い道がなく、在庫がかなり余っていますね」

(師匠?)

『ああ、悪くないぞ』

ゴブリンの魔石はスキルに期待できるし。とりあえず色々買っちゃおうか。

俺たちは格安のクズ魔石を200個程と、今まで吸収したことのない魔石を上限の15個程買うことにした。スキルは全然分からないが、魔石値が手に入るだけでも十分だしな。

「本当によろしいのですか? クズ魔石ですよ?」

「かまわない」

「こちらとしても助かりますが。多少色を付けさせていただきますね」

魔石は全部で10万ゴルドにまけてくれた。どうやら、ランクD以上の魔石から値段が跳ね上がるらしい。E以下の魔石は日用品などに使われるので、安いんだとか。一番高かったアイスロック・エイプの魔石でも3000ゴルドだった。

宿に戻って早速吸収だ。

「師匠、はい」

『おう! ひゃっほーい!』

俺はフランに頼んで、空の湯船に魔石を敷き詰めてもらった。そして、そこにダイブする。

何してるかって? あれだよ、魔石風呂。地球でも成金の極致、お札風呂とかあったじゃん? それの魔石版だ。

ヤバイ、四方を全て魔石に囲まれ、至福の時だ。

「師匠、楽しい?」

『楽しいぞ! わふーい!』

魔石を1個1個吸収するのが面倒になって、一気に吸収できないかと思って考えたやり方なんだが、メチャクチャテンション上がる! お札風呂をやる人間の気持ちが理解できた! 俺ってば俗物! でも楽しいからオッケーだ!

『ひゃっははー!』

俺が少し動くだけで魔石が吸収され、間断なく力が流れ込んでくる。ああ、気持ちいいー。

10分後。

「師匠……」

「オン……」

『すんませんした』

冷静になったら、保護者としてあるまじき姿だったかもしれん。やばい、フランとウルシの目が痛い!

『ほ、ほら。お前たちも何かしたいことあったらしていいから』

「……明日から1週間カレー食べほうだい」

「オン」

『わ、分かった! それでいいぞ』

「ん」

「オフ」

くっ、保護者の威厳を取り戻さねば。

『ま、魔石値は700くらい手に入ったぞ』

「結構行った」

「オン!」

因みにこんな感じだ。

自己進化〈ランク11・魔石値5169/6600・メモリ100・ポイント2〉

新スキル

悪意感知:Lv1、曲剣技:Lv1、幻影魔術:Lv1、細剣技:Lv1、細剣術:Lv1、杖技:Lv1

だめだ、まだ2人の目が冷たい気がする。

『そ、そうだ! ウルムットに旅立つ前に、王子様たちに会いに行かないか?』

「賛成」

『じゃあ行こうぜ!』

「ん」

「オン!」

何とか誤魔化せたか?

そう思った直後、フランとウルシがシンクロした動きで同時に小首を傾げて、俺を上目遣いで見上げた。

「カレー食べ放題忘れないで?」

「オンオン」

『はい』