軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑章 フランとクーネ 05

レイドス料理をチェックし終えた俺達は、調理場へと移動していた。

現在は改修中の、冒険者ギルドの酒場になる予定の建物内だ。すでにキッチンなどは完成しており、料理をするだけなら十分使えた。

そこで、教えてもらったレイドス料理をアレンジして、香辛料を少し加える。

最初は、ハニーマスタードをちょっと辛くしてみたり、ハチミツに対してシナモン風の香辛料を加えてみたりと、やや控えめな感じにしてみた。

フランとウルシは美味しいと言ってくれたんだが……。

「うまくねーニャ」

試食役を間違えたな! クーネをレイドス人代表と考えるのは間違いでした。そこで、冒険者ギルドにいたレイドス人の大工さんたちにも試してもらったんだが、誰もが渋い顔だ。

「だめ?」

「ダメっつーか、なんか変な感じがするんだよなぁ……」

「あー、解る解る。いつもと微妙に違うっつーか」

「違和感があんだよ」

慣れた料理に少し香辛料が加わっただけでも、相当敏感に察知してしまうようだ。確か、甘いものに香辛料をかけて、より甘みを引き立たせるみたいな食べ方もあったよな?

中南米の方に、パイナップルにチリパウダーをかける国があったはずだ。ただ、僅かな香辛料でも違和感になってしまうため、この地域の人には受け入れ難いようだ。

その後、ポテトやパスタをアレンジして、料理屋の女将さんにも食べてもらったが、やはり微妙な反応だった。

「食べ慣れてないからねぇ……。マズいわけじゃないんだが、美味しいとは感じないかな?」

「そう。残念」

「オフ」

そこから数日、俺たちは町中の店で食べ歩きながら色々な試作品を作っていった。

麦粥に蕎麦の実を混ぜてみたり、クリームの隠し味に豆味噌を使ってみたり、半分米粉を使ったモチモチパンを作ってみたり。

「変な味だニャー」

「なんかくせーニャ!」

「このパン、へんな噛み応えでマズいニャ!」

うるせークーネ! お前には聞いてないんだよ!

だが、クーネ以外の住民たちの評価も、似たようなものだった。やはり、長年の食習慣は中々変えられないらしい。

正直、行き詰まっている。どうしたらいいか悩んでいると、今日もクーネがやってきた。ただ、その恰好がいつもと違う。

厚手の外套や、ごつめのブーツ。腰には魔力を放つポーチを付けていた。

「ずっと料理なんて変なことやってたら不健康だニャ!」

料理は変なことじゃねー! 女将さんに謝れ!

「狩りニャ! 狩りに行くのニャ! 気分もスカッとして食い物も手に入る最高の気分転換だニャ!」

まあ、一応フランのことを考えてくれているのは確かかな?

それに食料の確保も重要な任務だし、クーネが言う通り気分転換がてら出かけるのもいいだろう。

「ん。わかった」

「おー! 話が分かるニャ! 最近なまってたんだニャ!」

こいつ、自分が暴れたいだけか? まあいい、出かけるのは賛成だからな。

「どこいく?」

「こっから北に行くと、小さな入江があるニャ。そこはたまにデッカイ魔魚が迷い込むことがあるんだニャ!」

「それを狙う?」

「そうだニャ!」

「ん。わかった」

「オン!」

狙いは巨大な魔魚。その道中で小物を狩れたらラッキー。そんな感じであるらしい。一応、出る前に冒険者ギルドに報告しておく。

依頼を受けている最中だからね。

すると、狩ってきた魔獣は高く買うのでぜひ持ってきてほしいとお願いされた。ギルドとしては食料供給の実績を積んでみせて、少しでも現地で受け入れられたいんだろう。

実際、冒険者への風当たりはそれなりに強かった。南部や東部ほど偏った教育ではなかったようだが、やはり冒険者への印象は良いものではないらしい。

チンピラ紛いとか、兵士よりも弱いとか、何か知らないけど嫌いとか、散々なイメージであるのだ。

問答無用で敵認定とまではいかないけど、最底辺職業という印象は拭い切れないようだった。一応、北征公からそのイメージは違うという説明がなされたはずなんだが……。

まあ、あながち間違ってない場合もあるから、始末に負えないんだよな。結局、少しずつイメージを改善していくしかないってことなんだろう。

その第一歩が、食糧事情の改善というわけだ。食べ物の恨みは恐ろしいと言うけど、逆に食べ物の恩は大きい。

ランクSになったフランに指名依頼まで出すほど、冒険者ギルドがこの依頼を重要視しているのもそこが大きいのだ。

実は依頼料もすんごい額だしね。

「ニャハハハ! デカ狼、速いニャ! 行くのニャ! 地平のかニャたまで!」

「オンオン!」

ウルシの背に乗るクーネが、大喜びではしゃいでいる。普段は馬に乗っているはずだが、これほど速く大きな狼に乗る機会なんてそうそうないのだろう。

ウルシも、クーネのテンションに引っ張られて全力で走っている。途中で一回ウサギ型の魔獣に遭遇したけど、おやつ感覚で食っちまいやがったのだ。

さすがに叱ったけどさ。それだけハイテンションってことなんだろう。

「フラン! こいつ凄いニャ!」

「ん! ウルシは凄い」

「オンオンオオーン!」

2人に褒められてさらに速度が上がる。しかも最大サイズになって。これ、目撃されたら騒ぎにならんか?

「ふおぉぉ! 凄いニャ! もっとニャ!」

「オンオン!」

クーネが止めないなら平気か? いや、こいつを基準に考えちゃヤバイか?

結局その全力疾走は、岩山に足を引っかけてちょっとした災害を引き起こしたところで強制終了となったのであった。

さすがにこれはやり過ぎだ。

『ウルシ、反省』

「クゥゥン……」