軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑章 フランとクーネ 03

バーン!

「邪魔するニャ!」

コットンと依頼について話していると、凄まじい勢いで扉が開いて、誰かが部屋に入ってきた。ノックとか何もなしだ。

戦士っぽい格好をした、黒猫族の女性だった。左右に大きく揺れるポニーテールと、大きな犬歯が彼女のアグレッシブな性格を表しているようだ。

「クーネさん。ノックをしてほしいと何度もお願いしているでしょう?」

「おっと、そうだったニャ! すまんすまん、忘れてたニャ! まあ、細かいことは気にすんニャよ」

コットンがこちらをチラチラと見ている。確かに悪いやつではなさそうだが、このフリーダムさ加減は気分を害する人間がいるかもしれない。

まあ、俺たちは変人慣れしてるし、フランも同じくらいフリーダムだから大丈夫。

それに、俺は驚きすぎて彼女の態度なんぞ全く気にしていなかった。

『ご、語尾が「ニャ」だと?』

いくら黒猫族だからって、そんなことあり得る? あ、あざと過ぎんか?

フランも首を傾げているな。

「そのニャってなに?」

「ニャ? この語尾かニャ? 癖だニャ!」

「くせ?」

「オン?」

「小さい時から付けてたから、もう治せないんだニャ! 聞くも涙語るも涙の波乱万丈のクーネちゃん物語ニャ!」

「?」

「あれはニャーがまだまだ小さい、4歳の時のことニャ――」

勝手に語り出した! そして、そこからがめっちゃ長かった。あと、確かに波乱万丈でもあったな。

このクーネという女性、幼い頃は闇奴隷として裏組織に育てられたそうだ。暗殺者としての教育を受けながら。

その際、語尾にニャを付けるように指導されたらしい。いや、何でだよって思ったが、意外とちゃんとした理由があった。

その可愛い容姿と語尾で男に近づき、グサリとやるための手段なのだそうだ。確かに、小さい子供が「ニャー」て言って近づいてきたら、誰でも油断するだろう。

小さいときに癖づけられてしまったせいで、もう語尾の「ニャ」は直せないらしい。

紆余曲折あり裏組織は壊滅、他の闇奴隷商人に引き取られた後に北征公に買われた。

北征公は奴隷の子供たちをできるだけ買い上げ、戦士としての教育を施しながら育てているそうだ。他の公爵の横やりを防ぐために奴隷の身分のままだったが、かなり自由にさせてくれたらしい。

というか、命令されたことなんて数えるほどしかないという。彼女たちが今でも北征公に従っているのは自分の意思であり、北征公に恩を返すためでもあった。

北征騎士団の大多数がその奴隷たちで構成されているのだから、凄まじい話だ。北征公が育て上手というのもあるだろうが、彼らが自分の意思で鍛錬を積み、従わなければそこまで強くはならんだろう。

自分の半生を語り終えて満足げに「ムフーッ」とドヤ顔をしているクーネが、フランを見て何かに気付いたらしい。

「ニャ? し、進化してるニャ!」

ようやく気付いたか。眼を見開いて、フランを見ている。

「も、もしかしてお前が黒雷姫のフランニャ?」

「ん。そう」

「ふおぉぉぉぉ! お前には感謝してるんだニャ! おかげで、ニャーも進化できるかもしれんのニャ!」

レイドスに他国の人間が入ってくるようになったことで、クーネも進化の方法を知ることができたらしい。今は邪人を見つけては狩る日々なのだそうだ。

「今回の依頼は、フランが受けてくれるのニャ?」

「そうですよクーネさん。黒雷姫殿はランクS冒険者というだけではなく、料理にも造詣が深いのです」

「おー、それは凄いニャ!」

「ふふん」

フランが分かりやすくドヤ顔をする。同族のお姉さんに褒められて、気分がいいのかもしれない。

「ニャーはこれでも北部では顔が広いニャ! 手伝ってほしいことがあったら、何でも言ってくれニャ!」

「わかった。その時はお願い」

「任されたニャ!」

その後俺たちは、クーネの案内で物資を保管している倉庫へと向かった。そこで、余っている香辛料の種類などを確認するのだ。

道を歩いていると、何度も声をかけられる。

「黒猫の副長さん!」

「クーネちゃん、久しぶりだねぇ」

「クーネ、貸した金返せよ!」

「こらクーネ! 約束すっぽかしただろ!」

顔が広いというのは本当らしい。クーネは北征公の配下の中でも親衛騎士という特殊な役職であるらしく、多くの北部人に顔を知られているようだった。

半分はお叱りの声なのは愛嬌である。本気で怒っている人はいないしね。顔が広いというか、愛されポンコツって感じの立ち位置なんだろう。

「ここが倉庫ニャ!」

「香辛料の匂いする」

「オン!」

倉庫の中を調べてみると、辛いものや香りの特殊なものなどあわせて10種類近くの香辛料が相当量保管されていた。

カレーに必須の香辛料類もあるし、他にも色々な料理が作れるだろう。

あとは、聞いていた通りに米や蕎麦も置かれている。それだけではなく、豆味噌などもここに仕舞い込まれているようだ。

隣にある小麦や芋、塩や砂糖の倉庫はスカスカなのに、こっちはまだ大量に残っている。食べ慣れないと中々消費されないんだろう。

「マズくて食えんもんは全部ここに突っ込んであるニャ!」

マズいわけじゃない! 調理方法を知らないだけだ!

『うーむ。これは腕が鳴るぜ』

(おー、師匠やる気)

『これだけの食材が無駄になりかけているのを、黙ってみてられるか!』

米と蕎麦と味噌だぞ! 元日本人の名に懸けて、絶対に美味いと言わせてやる!