軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1303 神剣開放と足跡の絆

〈自らの志によって神剣へと昇りつめた、史上初の存在。所有者を守り、援けることだけを望んだ神剣。異界の魂よ。貴方が神から与えられし新たなる名は、師匠剣・フランズ・マスター〉

『師匠剣・フランズ・マスター……!』

うん? なんか、頭痛が痛いとか、力isパワーみたいな感じになってない? え? これで決定? まじ?

ただ、アナウンスさんがそう宣言した瞬間、頭の中でギャンギャンと喚いていたファナティクス、ファンナベルタの声が消え去った。

〈師匠、大丈夫か?〉

『あ、ああ。むしろ爽快だ』

フェンリルさんの声を聴いても、痛みが襲ってくることはない。

〈――〉

『……まあ、礼を言っておく』

邪神の欠片が謝ってくる。ファナティクスたちを黙らせようとして、自分も騒いだことを後悔しているようだ。なんか、邪神の欠片のくせして憎めないんだよな……。

(師匠?)

『フラン、すまなかったな。もう大丈夫だ』

(ん……)

フランが涙をグシグシと拭うと、ニコッと笑った。その顔を見て、後悔が襲ってくる。俺は、なんでフランを悲しませるような真似を……。

だが、謝ったってなかったことにはできないし、フランだって謝罪なんか望んでいないだろう。

(師匠、神剣になった?)

『ああ。分かるか?』

(なんか、超かっこよくなった)

『え? どっか変わった?』

(ん。おーら凄い。それに、神剣開放スキル手に入れた)

『おー! なるほどな!』

俺の使い手たるフランには、当然ながら神剣開放スキルが与えられたらしい。それで、俺が神剣化したことを理解したようだ。

フランの顔には、不安や恐怖は微塵もなかった。俺が俺のままだと、確信しているらしい。

(声聞けば、分かる。師匠は師匠)

『そうか』

(ん!)

フランは確信を持って頷いた。声を聴いただけで分かるだなんて、凄いなフランは。

(何て名前になった?)

『えーっと、師匠剣・フランズ・マスターだな』

(ほほー)

フランが目を輝かせる。でも、師匠剣・フランズ・マスターだよ? ちょっとアレじゃない? 変じゃない?

そりゃあ、他の神剣にも頭痛が痛い的な感じの名前はあるよ? 大地剣・ガイアとか? でも、あっちはカッコいいでしょうが!

神様、もうちょっとどうにかならなかったんですか!

〈個体名・師匠剣・フランズ・マスターの名付けは、神の意思だけで行われたわけではありません〉

『え? そうなの?』

〈是。仮称・師匠の希望と、個体名・フランの願望が反映されています。特に、使用者である個体名・フランの望みは神も重要視したようです〉

つまり、この名前はフランの好みって事? うぉぉぉぉぉ! だったら受け入れるしかないじゃなぁぁい!

オオオオオオオオォォオン!

「!」

邪神の欠片の咆哮が響き渡り、俺たちは意識を引き戻される。やつの視線は、確実に俺たちを見ているのだ。

俺が神剣になったことが、伝わっているらしい。

それは仲間たちも同じだ。フランと、その手に握られた俺を凝視している。急激に膨れ上がった存在感と、湧き上がる神気を無視できないんだろう。

「師匠。いく」

『おう。やつをぶっ倒さなきゃ、皆に説明もできんしな。俺の使い方は、分かるか?』

「ん! わかる!」

神剣開放スキルと共に、その使い方もフランにインプットされているようだ。フランなら、問題なく俺を使えるだろうという確信がある。

神剣とその使い手となったからなのか、フランのことが今まで以上に伝わってくるのだ。

「師匠剣・フランズ・マスター。超かっこいい最高の名前! 師匠に相応しい」

『そ、そうか』

フランが超本気っていうのが伝わってくるなぁ! そうかぁ、最高の名前かぁ……。

「師匠が最高で最強だって、みんなに見せつける」

フランがユラリと前に出た。

俺の刃に軽く手を添えながら、呟く。開放の言葉を。

「我が剣よ。私だけの剣よ。力を、希望を、可能性を、我が手に」

これが開放されるということか。フランの言葉が紡がれるたびに、俺の内で何かの扉が開いていくのが分かるのだ。

「私たちに勝利を!」

そして、最後の扉が開かれる。

「神剣開放、師匠ぉぉぉ!」

『これは……!』

神域と繋がった! どこか違う場所から、力と膨大な情報が流れ込んでくる! 神剣っていうのは、これほどとんでもない存在だったのか!

素晴らしい。この力はフランのための力。フランを守り、導くための力だ。

魔術もスキルも今までのように使用できるし、強化されている。攻撃力も耐久値も倍以上だ。魔力伝導率なんて、脅威のSSSである。

それでも、神剣と名乗るには少々物足りないだろう。姿も変わっていない。フランが望めばどんな姿にもなれるが、今までだって変形は不可能じゃなかった。

だが、俺自身の権能に属する分野だけは、突き抜けている。神剣に相応しい力を得ている。

俺の得た権能は、フランのサポート。怖ろしく限定的で、ひたすらに特化した力だ。これだけはどんな神剣相手でも負けない自信があるっ!

俺は、湧き上がる想いのままに、心の内に浮かび上がってきた言葉を叫んだ。

『汝が歩む旅路は宝! 汝が足跡こそが縁! 友よ! 仲間よ! 同胞よ! その力をフランに貸してくれ! 足跡の絆!』

フランは強くなった。出会った頃とは格段に。だが、強くなれたのは、フランの頑張りだけが理由ではない。多くの仲間と出会い、研鑽し、一緒に戦った経験がフランを強くしてくれている。

仲間がいなければ、負けていたこともあった。命すら危うかったことも一度や二度ではない。

それら全てが、フランの糧となっている。

縁と絆。それが、フランを支えていた。神剣となった俺は、その縁と絆をさらに強め、フランの力とすることができるのだ。

巨大な漆黒の魔法陣が、大地に描き出される。邪気と同じ色だが、そこに悍ましさや恐ろしさは微塵もなかった。

自分が作り出したからそう感じる訳ではない。清浄な神気が、溢れ出しているのだ。

膨大な力は意志を持つようにうねり、フランへと流れ込んでいく。

「師匠すごい!」

『これは俺だけの力じゃない。感じるか?』

「ん。みんなの声が聞こえる……」

Side ネル

「?」

ふと、何かに呼ばれた気がした。気のせい? 何でか分からないけど、胸の内が温かい。懐かしいような、楽しいような、不思議な感覚。

首を傾げていると、これが勘違いではないことが分かった。私に呼び掛けている誰かがいる。

これは――。

「フランちゃん?」

そう。これはフランちゃんだ。フランちゃんが、助けを求めている。フランちゃんが、力を貸してほしいと願っている。

何故か、そう確信できた。

いいわよ。何をすればいいの? 祈るだけでいいの?

言われた通りに、両手を握り合わせて祈る。フランちゃんの無事を。フランちゃんの勝利を。

すると、体からほんの少しだけ力が抜ける気がした。魔力を使った時ともちょっと違うような?

これでフランちゃんに祈りが届いたの? ああ、フランちゃんが剣を構えている姿が見える。彼女に、たくさんの祈りが届けられているのも分かる。

だって、この冒険者ギルドの中にも、私と同じように祈りを捧げている者が大勢いるもの。ここはフランちゃんが冒険者になった町、アレッサ。

彼女の知り合いはたくさんいる。ドワーフのエレベントさんや竜の咆哮のクラッドさん、樹海の目のフリーオンさんたちも静かに目を閉じていた。

誰もが、それぞれのやり方で祈っているのだろう。

「フランちゃん、頑張って」

「嬢ちゃん頑張れ」

「負けんじゃねぇ!」

「フランさん。勝ってください」

Side エリアンテ

フランのために祈れって?

あの子が戦っている存在が、私にも見える。なんて悍ましい……。あんな化け物と戦っているの? 素直に尊敬するわ。

「フラン、勝ちなさいよ」

尊敬する少女のため、彼女の視界に映り込んだ馬鹿団長ナイトハルトのため、祈る。

どうか、無事に帰ってきて。

道を歩いている人々の中にも、老若男女問わずその場で立ち止まって祈り始める人々がいた。ここ王都では、彼女に救われた者がたくさんいるのだ。

「黒猫のお嬢さん」

「黒猫聖女様……」

「しぇいじょしゃま……」

Side ナディア

「フラン?」

なんだいこれは? フランが力を貸してくれって言ってるのか? いいよ、いくらでも持っていきな!

周囲にいるシュワルツカッツェの住人たちの中には、跪いて祈っている者もいる。まあ、あの子がこの村にしたことを思えば仕方ないだろうがね。

隣にいたメア様とクイナ殿にも、フランの声が聞こえているらしい。静かに目を閉じている。

「フランよ! 頑張るのだ!」

「勝利を」

む? メア様から流れ出す力が、途轍もないね! あたしらの10倍じゃきかないよ! これは、大丈夫なのかい?

「我らは、と、友達だからな! いくらでも持っていくがいい!」

Side ソフィーリア

広場で演奏会をしていたら、フランのために祈ってほしいと頼まれた。誰に? 分からない。でも、とても暖かな力を感じる。

広場にいる人たちにも同じように呼びかけられている人々がいるらしい。彼らと一緒に、フランのために祈る。

この町にいる人々は、皆あの戦いを経験している。歌で戦士たちを鼓舞し、共に戦ったあの戦いを。

だからだろう。誰からともなく、歌い出していた。

「俺たちゃ冒険者~♪ 黄金の冒険者~♪」

「どんな敵にも怯みはしない!」

「ドラゴン、デーモンどんとこい!」

「抗魔の群れもなんのその!」

「酒と仲間と金のため! 戦う冒険者~♪」

私たちにフランの声が聞こえているなら、きっとこちらの歌だって届く。そう信じて、歌い、奏でる。

「フラン。頑張って」

Side フランが関わった大勢の人々

「フラン。勝ってくれ」

「フランちゃん、がんばるんだよ」

「嬢ちゃん。負けるな!」

「フラン殿、勝ってください!」

「黒雷姫様、そんなやつぶっ飛ばして!」

「小娘、勝つんじゃ!」

「我らの姫、どうかご無事に」

「姐御、やっちまえ!」

「「「「「がんばれ!」」」」」