軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1300 Side 超越者たち

Side 魔王剣ディアボロスの使用者、ルシフ

悪魔王アスモデウスが、巨大な邪神の欠片と相争っている。

ここ以外の戦場も、なんとか戦えているようだ。北征公からの使者がやってきた時には罠かと疑ったが、その言葉に嘘はなかった。

まさかフィリアース、ベリオス、北征公で連携することになるとはな。ただ、最後の最後で、作戦通りにはいかなかった。

それぞれの準備が完了後、我らと北征公の配下が同時に王都へと雪崩れ込む計画だったのだが……。王都が消滅するなど、誰が想像するだろうか?

しかも、レイドス王国の切り札と思われる赤い金属のゴーレムが、危険な状態に追い込まれていた。

結果、北征公が計画を変えて、先に突撃することとなってしまった。そのおかげで、我らは楽に接敵できたがな。

「はははは! 久方の殺し合い! 中々楽しいぞ! 周囲に被害を出さぬようにという縛りも、悪くない!」

哄笑を上げながら戦うアスモデウスは、こちらの軍勢に被害が出ぬように戦っている。それが、私の命令だからだ。

悪魔の王にして、地獄の主。その権能により、地獄と呼ばれるダンジョンをある程度制御することが可能だ。お陰でフィリアースの民たちを地獄へと避難させ、結界の影響から守ることができた。

ダンジョンは、通常の空間とは切り離された空間だからな。

だが、アスモデウス自身は、非常に危険な存在だ。人間など羽虫程度にしか思っておらず、ただ「戦え」などと命じたら、周囲の人間を巻き込むような攻撃を平然と放つだろう。それどころか、あえて被害が大きい攻撃をしかねない。

しかも厄介なことに、アスモデウスは強力な魅了の力を持つ。それこそ、親兄弟恋人どうしでも殺し合いをさせてしまうほどの。

過去には、無思慮な使用者が戦場で自由に暴れていいと命令してしまったことで、互いの軍が同士討ちをし始めて全滅なんてこともあったらしい。恐ろしい力だった。

そして、邪神のもつ最も忌み嫌われる能力も、他者を支配し狂わせる権能だ。人の心を支配し、操り、狂わせる。

アスモデウスの魅了と、邪神の支配。両者は、何が違う? 同じではないか? つまり、邪神が邪悪と言われるなら、アスモデウスもまた邪悪なのではないか?

いや、邪悪なのは我が王家か? アスモデウスこそフィリアース王家の闇の象徴。聖女を贄に手に入れた、力。

周辺国に対抗するため。地獄から国を守るため。神級鍛冶師の要請を断れなかった。様々な言い訳はあるだろうが、大罪を犯したことに違いはない。

せめてもの贖罪に、民を守る? 聖女の命を無駄にしないためにも、ディアボロスを守り抜く? 何を言ったとしても、罪人の言い訳ではないか?

アスモデウスを見る度に、そんなことを考えてしまう。この思考もあの魔王に伝わっているはずだが、やつは薄く笑っているだけだ。

ディアボロスの使い手は、初代の血縁の中から選ばれる。神剣と融合し、人工の子宮を埋め込める男子であれば誰でも構わないはずなのだが……。

時折、神剣から直接選ばれるものがいる。俺もそうだ。初代と似た魔力を持っているだとか、神剣との相性が関係しているとか色々と言われているが、俺は違うと思う。

アスモデウスが選んでいるのだ。自身に嫌悪を抱く使い手が、ディアボロスを使って悩む姿を見て嗤うために。アレは、そういう存在なのだ。

「眷属どもよ! 力を寄こせ!」

俺からも魔力を吸い上げているな。アレをやるか。

「ははははは! 悪夢の中で溢れ出せ! 『最後の色欲』よ!」

アスモデウスの放つ精神崩壊術式が、邪神の欠片を呑み込む。邪神の欠片にも、精神は存在する。あれを食らえば、例え神であっても――。

Side 戦騎剣・チャリオットの使用者、カレード

「強い、な!」

邪神の火炎袋と激しく戦いながら、僕は狭いコックピットの中で額の汗をぬぐう。

どれだけ攻撃を加えても、すぐに再生されてしまう。まあ、それはこちらも同じだが。

ただ、奴らが吐き出す邪気が周囲に充満しているせいで、こちらの燃費は最悪だった。このままでは、こちらの魔力が先に尽きてしまうだろう。

対抗できる手段と言えば、相手を体内から破壊し、再生を阻害するブラッド・メイデンだ。しかし、まだ再使用はできない。もう少し時間が必要だ。それまで、チャリオットの魔力は持たないだろう。

奥の手であれば、倒せるかもしれないが魔力の残量が――。

「ふふ。今更何怖がっているんだ僕は。どうせ長くないのだ。だったら、足りない分を自分の命で補えばいい。それくらいの意地を見せろ、紛い物の王よ」

ろくに教育も受けていない僕が、王。なんとも不思議な気持ちだ。でも、引き受けた以上、王であらねばならない。

どれだけ相応しくなくとも、チャリオットに認められた王なのだから。あの黒猫族の冒険者と話して、覚悟を決めたのだ!

腹を決めた僕だったが、戦場に何者かが入ってきたのが見えた。あれは、アンデッド?

「王よ! 失われし宝具をお持ちいたしました! こちらを! 我らが母の最期の願いをお受け取り下さい!」

ローブの紋章は、見た記憶がある。黒骸兵団のアンデッドだろう。しかも、理性があるということは、幹部だ。

その手には、強い魔力を放つ短い杖が握られていた。あれは、チャリオットのレプリカの1つ。失われた風属性の宝具だろう。

チャリオットは無数のゴーレムを生み出すことが可能だ。そのゴーレムの中でも、配下が魔道具のように使うために特殊な調整をしたものが宝具と呼ばれている。

当然、産み出すためには魔力が必要だし、その分維持に力を割かねばならない。チャリオットの力を維持するためには、あまり多くの宝具を作り出すことは避けねばならなかった。

それに、宝具を奪われて封印等されてしまうと、維持の力だけが無駄に消費されるだけになる。実際、幾つかの宝具が行方不明となり、回収できずにいた。あれは、そんな行方不明の宝具の1つだ。

しかも、その中でも最も強力な、風属性ゴーレムの指揮が可能なレプリカワンドの1つである。

「うがぁぁぁぁ!」

「!」

アンデッドが、火炎袋の放つ熱で……! 考えている場合ではない!

僕はチャリオットを操り、アンデッドをそっと手で包んで持ち上げる。だが、すでにその全身が炎に包まれ、消滅寸前だった。それでも、その手に握った宝具を差し出してくる。

「宝具、確かに受け取った。大儀である」

「おぉぉ……! このハイドマン、母の意も汲めぬ不肖の息子でありましたが、最期に一仕事できましたぞ! アレッサの守護者に頭を垂れて懇願した甲斐があったというもの……! 母よ、これで我のことも息子と……!」

そっと握り合わされたチャリオットの手の内で、ハイドマンと名乗ったアンデッドが燃え尽きた。なぜこのようなことをしたのかは分からない。

しかし、本当に助かったことは間違いなかった。ハイドマンの持ってきた風のレプリカワンドを、チャリオットが吸収する。

数%のことではあるが、確かにチャリオットの魔力が回復した。これで、奥の手が起動できるかもしれない。本当に、助かったぞ!

「神力励起! 収束魔導砲起動!」

少し、足りないか……! 全身の魔力がもっていかれる! 耐えろ……皆も命を懸けて戦っているのだ!

「赤き閃光よ! 我が敵を討てぇぇぇぇ! スカーレット・ブレイカァァァァ!」

Side ランクS冒険者、不動のデミトリス

ふははは! よいぞ! 我が拳は、確かに邪神に届いておる! 龍気であれば、邪神の欠片の肉を穿つことができる!

濃密な邪気によって心身ともに弱らされ、肉体も気も制御が甘くなっておる。だが、それがよい!

この状態での戦い! それも、どんな攻撃も僅かなダメージにしかならぬ格上が相手!

これほどの修練の場、二度とないわ!

「ぬん! はぁぁぁ!」

「ギャガァゥ!」

「皆の者! 我に続け!」

北征公のやつも猛っておるな! 高位の邪人を一刀両断し、部下たちを鼓舞しておる。その大剣の冴えは、見事の一言じゃ。冒険者ランクに換算すれば、Aは確実だ。少なくとも、フォールンドの小僧やナイトハルトよりも強いじゃろう。

まさか、遥か北の地にこれ程の強者が隠れておったとはな! 惜しむらくは、その強さが対魔獣に特化しておるところか。死合はなかなかできんからのう。

まあ、いずれ復活するであろう邪神の欠片との戦いのため、何代にもわたり愚直に準備をしてきた家系じゃ。仕方ないんだろうがのう。

「ふはははははははは!」

「グオオォォォォォ!」

「ガアアアア!」

邪神の涙腺とやらが生み出した邪人どもを砕きながら、制御の質を高めてゆく。邪神の欠片が放つ龍気に似た力に触れる度、その本質が我が身に刻まれているのが分かるのだ。

我が流派の奥義たる龍気。その神髄を、今確かに掴んでいる。

これならば! 終ぞ到達できなかった、真なる奥義が放てるやも知れぬ。いや、放てる!

邪神の欠片の力の流れを見よ! 真似よ!

あれこそが、神髄。神の領域。だが、儂ならば――。

「ふはははははは! こうだ! こうするのだ! この歳で、また一つ武の階を登ることができるとはな! 感謝するぞ! 貴様で試し撃ちをしてくれよう!」

全身を駆け巡る龍気を拳打に乗せ、爆発させる。一撃が魔龍を屠るほどの打撃を用いた、一瞬での八連突き。

「ぬおぉぉぉぉ! 『天龍八部』!」

連続する衝撃が邪神の欠片の肉を叩き、穿ち、貫く!

これこそが、思い描き続けてきた究極の殺し技! 神であろうが、当たればただでは済まさぬ!

北伐騎士団――いや、外征は北征騎士団じゃったか? ともかく、やつらや赤騎士どもによって装甲が剥ぎ取られておるところに、完璧に入った! 手応えありだ!

「ふははははは! 深く入ったなぁ!」