軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1282 カオススラッシュ

ウルシの背とジャンの死霊馬車に分乗し、俺たちは王都を目指した。ウルシの背中に乗っているのは、絶対にフランの横を譲らなかったアマンダと、警戒力の高いフォールンド、比較的元気なシエラである。

マレフィセントは馬車内の寝具で休息が必要そうだったし、ペルソナはその付き添いだ。ユヴェルとオルドナに関しては、ジャンが話を聞きたがったので向こうに乗せた。

死霊術師的に、今のユヴェルたちは興味があるのだろう。

「アマンダ、称号変わってなんか変わった?」

「うーん? それがよく分らないのよねぇ」

ウルシの背の上で、フランがアマンダを心配している。子供の守護者という、代名詞ともいえる称号を失い、そのステータスなどに大きな変動が起きていてもおかしくはない。

「普段はあまり変わりはなさそうね。多分、戦いの時には力が湧いてくるんだと思うわ。新しい称号は、子供を守る時じゃなくて、救う時に力を貸してくれるみたいだけど……」

手をグーパーしながら、何か考え込むアマンダ。ラランフルーラを攻撃することで子供の守護者を失い、鬼子母神を得た。

つまり、救うというのはただ慈しむだけではないということなんだろう。

苦しみや悪心、狂気から救うため、手にかける。それを救いと認めるかどうかは人それぞれだろうが、神はアマンダの想いを救いと認めたらしい。

「ラランフルーラは、子供だった。口では大義とか恨み言とかを口にしてたけど、やってることは矛盾ばかりで、行動に一貫性がない。子供なんて、好きな物が毎日変わるし、昨日主張してたことと正反対のことを言い始めたりもする。そして、それが彼らの中ではおかしいことじゃない」

言われてみると、そうかな? 確かにラランフルーラは、何がしたいのか分からなかった。邪神の欠片を倒したいのか、復讐がしたいのか、東征公に報いたいのか、俺たちを倒したいのか。全部が中途半端だったのだ。

でも、内面が本当に子供なら、大局を見て判断するなんて無理だろう。その場その場で思いついた、やりたいことをやる。それが、ラランフルーラの本質だったのかもしれない。

「大罪人と言われるには十分な、とても酷いことをやったけど……。ああ育ったのは、大人の責任よ。クランゼルを憎み、破壊行動に躊躇がないように育てた。生まれながらの悪人なんていない。悪い子供がいるなら、それは大人が悪いの」

「そうなの?」

「フランちゃんがいい子に育ったのは、お父さんやお母さん、師匠がいい人だからでしょ?」

「ん! 確かに」

「ふふ。そうでしょ?」

自分がいい子という部分を否定せずに頷いたフランを、アマンダが不意に抱き寄せた。そのまま、息苦しくなるレベルでギューッと力を籠める。

「アマンダ?」

「少しだけ……」

「ん」

アマンダが望むならと、フランは抵抗をしない。まあ、アマンダは子供と接している時が一番安心できるんだろうし、少し落ち着く必要があるだろう。

その間に、俺はずっと黙ったままのフォールンドに話し掛けた。

『フォールンド、調子はどうだ?』

(師匠か? 消耗が回復しない。たった2度振るっただけで、これだ。やはり神剣は凄まじいな)

うん。ていうか、相変わらず念話だとメッチャ饒舌だな! まあ、話が早くてありがたいんだけどさ。

『神剣模倣なんて奥の手があったんだな』

(師匠とアースラースさんのおかげだ)

『どういうことだ?』

(王都でのあの事件の時、神剣の力をこの目で見たことと、師匠という準神剣ともいうべき剣に触れたことで、剣神の寵愛が成長したんだ。いや、俺が成長したと言うべきか)

クランゼル王国の王都でファナティクスと戦った時、フォールンドはまだ神剣模倣を使うことはできなかった。

いずれ可能になるという手ごたえはあったらしいが、形にはなっていなかったのだ。

だが、大地剣・ガイアの戦闘をその目に焼き付け、疑似神剣であるファナティクスと殺し合い、廃棄神剣である俺と触れ合った。

そのことで、上位の剣たちに関しての理解が深まったのだろう。

いずれできるという想いは、すぐにでも形にできるという確信に変わり、遂にレイドスでの激戦の中で神剣を模倣するという破格の能力へと成長を遂げたのだ。

以前に奥の手としていた、100以上の魔剣を実体化させたうえで過剰に魔力を注いで暴走させる攻撃も、今や消耗を抑えて使用可能であるらしい。ただ神剣模倣ができるようになっただけではなく、スキルの力そのものが増したようだ。

(だが、やはり疲労や魔力の回復が遅い。以前試した時も、そうだった)

『もしかして、神属性のせいじゃないか?』

(神属性? ああ、もしかして、神剣や上位魔剣が纏う、あの魔力のことか? そうか、神の力の一端か……)

神属性を知識としては知らずとも、感覚的には理解していたらしい。納得したように何度も頷いた。

その後、フォールンドに神属性について教えてほしいと頭を下げられたので、俺の知る限りを教えておいた。

そうして真面目な話をしていると、フォールンドの視線がずれた。俺を見ていたその眼が、フランを見つめる。

いや、フランの手元と口元というか。

『フラン?』

「もぐもぐ?」

いつの間にかフランとアマンダが、食事を始めていた。

『フランはウルシの背の上で飯を食べるのに慣れてるだろうけど、アマンダにカレーは難しいと思うぞ?』

しかも、シャバシャバ系のカレーに、ナンである。

フランがそういう気分なんだろうが、せめてカレーパンとかが良かったんじゃないかなーと思うのだ。アマンダはフランにベタ甘だから、必死に食べようとしてるけどさ!

「ん」

「ああ」

フォールンドも受け取ってるし!

『フォールンド、もっと食べやすいものがいくらでもあるぞ? 交換するか?』

アマンダはもうダメだ。手元をカレーで汚しまくりだし、メッチャお高いはずの最上級防具にちょっと飛び散ってるし。

頑張って最後まで食べてもらって、あとで浄化しよう。そもそも、アマンダがフランから渡された食べ物を無駄にするわけないしね。

だが、フォールンドは首を横に振ると、カレーをその場で食べ始めた。どうやらフランに付き合ってくれるらしい。

「む」

「こう」

「ほう」

「ん」

フォールンドは何故か今のやり取りで、ナンカレーの食べ方を完全に理解したらしい。うまくバランスを取りながら、ナンを千切って食べ始める。

はっ! カレーで思い出した!

『フラン。カレー斬りなんだけど、あれの名前をどうする?』

「ん? カレー斬り」

『いやいや、食べ物の名前はちょっと弱そうじゃないか? いい名前だけどさ! な? 他にいい名前があるって。そもそも、あの金色のオーラは混沌の女神様のお陰で使えたっぽいんだよ。だからさ、混沌神気か、カオスオーラっていうのはどうだろう? あの斬撃は混沌斬か、カオススラッシュ!』

カオススラッシュとか中二病全開だけど、カレー斬りよりかはマシだ!

「むー? カオス……混沌……」

『ど、どうだ?』

「ん。カオススラッシュにする」

『そ、そうか! いやー、良い名前だよね!』

「カッコいい」

「オン!」

『うんうん』

よし! よくやった俺! 超グッジョブ!