軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1265 華麗なる斬撃の結果

「てやああぁぁぁ! カレー斬りっ!」

待て待て! ネーミングッ!

だが、既に攻撃は放たれてしまっている。

大上段の空気の鞘から解き放たれた刃が、超神速でネームレスに叩き込まれた。金色の軌跡が墜ちるように奔り、ネームレスを一刀両断する。

「ぎいぃぃぃいいいぃぃぃぃぃぃぃ!」

ネームレスの悲鳴と共に、その内側を金色のオーラが迸った。ネームレスの魔力が削り取られ、乱れているのが分かる。

『効いてるぞ!』

「ん!」

強いぞカレー斬り! 金色のオーラがカレーっぽいな! でも、名前が……!

「なめ、るなぁ!」

フランがさらに追撃を放とうとしたが、ネームレスは転移でその場から逃げ出した。

『再生できてないぞ』

「ん!」

頭頂部から股間まで、一刀両断してやったのだが、その傷は未だに再生されない。魔力で無理やり断面をくっつけているようだが、それだけだった。

「なおらぬ……!」

しかも、ネームレスの内部の魔力と邪気が、大きく目減りしているのが分かる。半減どころか、最大時の3割程度だろう。

「なにが……ぐご……」

再生しない自身の肉体に、ネームレスもかなり混乱しているようだ。ああもう! 技名については後で相談だ! 今は、ネームレスに追撃を加えねば!

『今がチャンスだ!』

「ん!」

ネームレスの体内には、未だに俺の魔力が残留している。それが、奴の魔力を乱し、再生を妨げているのだ。今なら、倒せる!

そこに、ウルシが再度襲い掛かった。今度はネームレスの影からの奇襲だ。しかも、その一撃はただの噛みつきではなかった。

『あれは、神気か!』

(ウルシ凄い!)

なんとウルシの牙からは、神気が感じられたのだ。

「まいどまいど、われのじゃまをぉぉ!」

「ガルゥ!」

ネームレスが必死にウルシの攻撃をかわすが、その反応は非常に遅く、地面から襲い来るウルシの大きな顎を躱しきることができなかった。

真っ二つになっているのを、無理矢理くっつけているだけだからな。

「ぬぅぅ!」

「オフッ! ボリボリ」

「われの、ほねをぉぉぉぉ!」

足首の先しか噛み千切ることはできなかったが、挑発するかのように音を立ててかみ砕いているウルシ。やつの意識を自分へと引き付けようとしてくれているのだ。

しかも、足が再生しないらしい。再生阻害はアンデッドには効果がないはずだ。つまりあれは、神属性の効果だろう。

金色のオーラによって体内を乱された今のネームレスに対してなら、神属性がバッチリ効くらしい。

『フラン! やつに止めを刺すぞ!』

(ん!)

ネームレスをここで倒す! しかし、殺気を気取られてはいけない。

戦意は内に秘め、静かに力を練り上げる。しかし、俺たちはすぐに集中を乱されることになってしまった。

なんと、防戦一方に見えたラランフルーラが、突如動いたのだ。

「死ねぇ! 鞭使い!」

それまで見せていた回避行動など一切忘れたかのように、アポロニアスたちの攻撃をその身に受けながら前に出る。

障壁を全開にして、攻撃を弾きながら向かう先には、一人の女性がいた。

ラランフルーラの狙いは、マレフィセントとペルソナを守っているアマンダであった。

アマンダが普段通りの力を発揮できれば、躱せない速度ではないはずだ。だが、アマンダの動きは非常に遅い。ノロノロとすらいえる動きだった。

「やはりなぁ!」

凶相のラランフルーラが、何かを確信したように叫ぶ。どうやら、アマンダが自分と相対した時だけ、動きが鈍ってしまうことを理解しているようだ。

だが、ラランフルーラの真の狙いは、アマンダを殺すことではない。ラランフルーラの狙いは、ネームレスへの追撃を止めることにあるだろう。

なぜなら、その速度は絶妙に調整されているのだ。

周囲の強者たちが今すぐ止めに入れば、ギリギリ間に合うかもしれない。それでいて、アマンダでは回避しきれない。そんな速度なのである。

いや、いきなり加速した! そうか、俺たちが一瞬でもラランフルーラに意識を向ければ、ネームレスが逃げるには十分だからか!

まずい! 転移がギリギリ間に合わない! 発動前に、アマンダが斬られる!

英雄ゾンビたちも、その動きは鈍い。彼らにとってアマンダは最優先で守る相手ではないからだ。狙われたのがフランだったら、なりふり構わず庇ったのだろうが……。

アマンダとラランフルーラの距離は、もう数メートル。強者であれば一瞬の距離である。2人の間には、ジャンが呼び出していたスケルトンが1体立っているだけだった。

ラランフルーラにとっては、紙が1枚あるのと変わらないだろう。

フランは攻撃の手を止めて飛び出している。黒雷転動を使う暇もなく、ただ自身の全速力で一直線にアマンダを庇おうと駆けていた。

しかし、追いつけない。

俺もフランも、咄嗟に回復魔術を準備し始める。アマンダの傷を即座に直せるようにだ。即死だけ免れてくれれば――。

しかし、ラランフルーラが振り下ろした戟が切り裂いたのは、アマンダではなかった。

「がふっ! ふはは、残念であったね」

アマンダの代わりに斬られたのは、いつの間にか間に割って入っていたジャンだった。配下のスケルトンと、場所を入れ替える術があったらしい。

それを使い、アマンダの盾となったのだ。ただ、アマンダの代わりに犠牲になったわけじゃない。

「マークよ、よくやった!」

ジャンの言葉に応えるように、ジャンの背中から生える4本の骨の腕がわさわさと蠢く。まあ、半ばから圧し折れて、肘から先はない状態だが。

ジャンがネームレス対策に生み出した、新しいアンデッド、マークだ。

意思のある骨の鎧であり、背中から生える4本の腕は剣を巧みに操ることができる。今の攻撃もマークが腕全てを犠牲にして、その威力を大分弱めたらしい。

しかも、本体である鎧も、かなりの防御力を秘めている。

ラランフルーラが必殺のつもりで放った一撃は、ジャンの体を深々と切り裂きはしたが、命を奪うにはほど遠かったのだ。

その間に、ジャンはアンデッドに命じて、アマンダたちを逃がしている。

(ジャン、すごい!)

『ああ! とりあえずジャンを回復させるぞ!』