軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1254 従属化完了

邪神の信頼によって英雄ゾンビたちを次々と配下に加えていく。残っているのは、ユヴェルとオルドナのコンビに、アポロニアスである。

アポロニアスはシビュラと1対1で激しく楽しそうに戦っており、このまま任せておけばいいだろう。

『まずは、ユヴェルたちからいくか』

どうも、本気で戦ってないっぽいんだよな。やる気が感じられない。王の仕事じゃないとか言っていたが、術者の命令に反するような真似はできないはずだ。

だとしたら、何か目的があって本気じゃない?

『とりあえず、ユヴェルからだ!』

邪神の信頼を使い、ユヴェルを配下に加えようとする。だが、俺の干渉はあっさりと撥ねのけられてしまった。

ユヴェルの青い瞳がこちらを射抜く。

「ようやくか。だが、弱き者の下に付くつもりはない」

「実力を見せてよ!」

ユヴェルが自身の身の丈よりもさらに巨大な大剣を担ぎながら、ゆっくりと前に出てくる。大剣の重さなど全く感じさせない、軽やかな足取りだ。

その動きを見ただけで分かる。

こいつ、強い。

明らかに鑑定の情報と合っていなかった。まあ、身につけている宝飾品はほとんどが魔力を秘めているし、鑑定偽装系の魔道具があるんだろう。

ユヴェルの間合いに入る瞬間、フランが軽く後ろに下がった。それを見たユヴェルが、感心したように微笑む。

「目はいいようだな」

「だねぇ。完璧に間合いを切ってるじゃん」

「まあ、いい。いくぞ」

「もう1人、誰か選んでいいよ? 2対2でやろうじゃないか」

2対2って……。こちらはシビュラ以外全員で戦ったっていいんだぞ? だが、オルドナは随分と偉そうというか、自分の言葉が受け入れられることを確信している口調だ。

フランの挑まれたら受けたくなってしまう性格を、短時間で見抜かれたらしい。

「じゃあ、私が加わるわ!」

「アマンダ、お願い」

「任せてフランちゃん!」

アマンダと並ぶフランは、笑顔だ。一緒に戦えることが嬉しいんだろう。

そうして、2対2の戦闘が始まる。フランと打ち合うユヴェルは、やはり強かった。剣王に達しているかもしれない。

しかも、その膂力がとんでもないのだ。フランでさえ、正面からの打ち合いでは負けてしまう。技術では互角。パワーは上。スピードでも大きく違いがあるわけではない。

ゴブリンの軍勢を殲滅して有名らしいが、この男にとって30万程度のゴブリン、大した手間じゃないんじゃなかろうか?

フランは楽し気だ。剣でここまで互角の相手、久しぶりだからだろう。互いにまだ本気ではなく、奥の手を隠しているのもワクワクに繋がっているかもしれない。

横目で見ると、オルドナもかなり強いだろう。魔術師かと思ったら、アマンダの鞭を避けまくっている。ただ、それでもアマンダよりも強いわけじゃない。

次第に追い込まれ、遂にムチの一撃を食らっていた。その後はしばき回され、防戦一方だ。それどころか、アマンダは鞭でこちらに援護を送る余裕があった。

「降参こうさーん! これ以上は変な性癖に目覚めちゃいそうだから! もうやめて!」

「オルドナめ! 諦めるのが早すぎる」

「アマンダは強い」

「そのようだ――ちっ!」

鞭に脚を取られたユヴェルに対し、俺の魔術が連続で叩き込まれる。爆風によってユヴェルの体勢は崩れ、大きな隙を晒していた。

そこに、渾身の斬撃だ。ユヴェルの右腕が斬り飛ばされ、大剣ごと遠くに飛んでいた。

「……俺の負けだ」

「あーあ、負けちゃったねぇ」

「お前がもっと耐えればよかったんだ」

「仕方ないじゃーん。あの人強かったし!」

口で言うほど、ユヴェルたちも悔しそうではない。まあ、模擬戦みたいな感じだったしね。

「ふふん。私たちの勝ち!」

フランはドヤ顔である。2対2でユヴェルとオルドナに勝利したのが嬉しいのだろう。隣にきたアマンダを見上げて、笑った。

「アマンダ、勝った」

「ええ! そうね!」

アマンダもニッコリだ。フランの頭を火が出るんじゃないかってくらい高速で撫でている。禿げそうだから、やめれ。

「おい。やるならやれ」

「そうそう。できれば痛くしないでほしいな!」

「もう我らは痛みなんぞ感じん」

「言葉のあやってやつじゃーん」

やはり緊張感が感じられない。結局、どちらもあっさりと俺の支配を受け入れていた。

『さて、残るはアポロニアスだけなんだが……』

(シビュラ、楽しそう)

『だよな』

俺たちの目の前では現赤剣騎士団長と前赤剣騎士団長が、高笑いを上げながら楽し気に殺し合いをしていた。

「ははははは! 親父! そんなちんけな炎じゃ、火傷もしないよ! 肉焼くにはちょうどいいかもねっ!」

「ぬかせ! そっちこそ! みょうちくりんな剣を使うじゃねぇか!」

「こいつはダンジョンコアを元に作り出された、新たな宝具! 赤剣騎士団の宝具さ!」

「ほう? あの実験の産物か! まあ、王の下賜品じゃなけりゃいいさ!」

「はははは! 当たり前だ! 赤き剣の名において、私たちは民のために!」

「おう! 赤き剣の名において!」

どういう会話だ? 赤剣騎士団の宝具は、何か特別なのか? いや、アポロニアスが詳しく知らないってことは、シビュラの代になって完成したっぽいか?

ともかく、楽し気なところ悪いが、アポロニアスを支配下に置かせてもらおう。

「シビュラ! 時間切れ!」

「ちっ! わかったよ! それじゃあ、これが最後だ! この剣の力の一端、見せてやろう!」

「こいやぁ!」

シビュラの魔力が、その手に持った赤い剣に流れ込む。すると、赤い剣から今度はシビュラに力が逆流するのが分かった。

結果、シビュラの肉体に変化が現れる。

「おお? なんだそりゃ! すげぇじゃねーか!」

「だろ! 食らって見ろよ!」

シビュラの腕が、竜のように変化していた。サイズも数倍に膨れ上がり、本当にそこだけが竜の物と置き換わったかのように見える。

その状態で剣を振りかぶり、アポロニアスに叩き付けた。ハルバードで受けようとしたアポロニアスだが、何かがそのハルバードを弾く。

シビュラの背後から伸びる尻尾だった。腕だけではなく、尾も生み出されていたのだ。

「おらぁぁ!」

「ぐおぉぉ!」

シビュラの一撃はアポロニアスの右腕を斬り飛ばし、大地に巨大なクレーターを生み出した。アポロニアスはその場で倒れ伏す。膨大な魔力をシビュラに吸収されたのだ。

ドレイン系の効果もあったらしい。

「ははは! どんなもんだい!」

「くっそ! その剣ズルいぞ!」

「あっはっはっは!」

とりあえず、支配しやすくなったから、とっとと干渉しちまおう。