軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1249 邪神の信頼

牽制のつもりか、フランに向かって幾つもの攻撃が叩き込まれる。

前朱炎騎士団長の放つカーマイン・フレイムの熱線や、ロブのハルバード。さらには、血死騎士団長の赤い霧に、茜雨騎士団長の赤い矢もあった。

クランゼル王国が捕えた間者や赤騎士たちから聞き出した情報によると、赤騎士団は6つあり、それぞれの団長が象徴となる宝具を持っている。

赤剣騎士団のレッドソード。

朱炎の銃型宝具、カーマイン・フレイム。

軍団強化能力を持つ紅旗のカーディナル・フラッグ。

対吸血鬼用の能力を持つガントレット、血死のブラッド・メイデン。

茜雨が持つ対軍用の魔弓、ダスク・レイン。

緋眼騎士団の持つ、視力などを強化可能なヴァーミリオン・アイ。

この中で直接攻撃力を持つのは、紅旗、緋眼以外の4種類だ。

ただ、これらとは既に戦った経験があり、幾つかへの対処方法は分かっている。

俺は浄化魔術を連発して赤い霧を無効化するとともに、対火炎結界を幾重にも展開した。マールの守りもあるし、普通なら厄介な2種を封じ込められる。

問題は赤い矢だが、これは念動と風の魔術で方向を逸らすことで何とか防ぐしかないだろう。乱戦であるせいで、手数よりも一撃の威力に比重を置いてくれて助かったぜ。逸らすだけなら、数が少ない方がやりやすい。

「おいおいおい! これだけの宝具に狙われたのに、無傷だって? ふはははは! 化け物だな娘!」

アポロニアスが嬉しそうに笑うが、他の団長たちは悔しそうだ。悔しがるだけの意識が残っているのだ。

ただ、これで調子に乗るわけにはいかない。現在、攻撃を仕掛けてきているのは、6名。前騎士団長たちだ。

しかし、ユヴェル王とその部下らしき少年はなにやらこちらを観察しているし、まだ動きを見せない2人の赤騎士もいる。

なぜか宝具はないが、弱いわけがない。多分、6騎士団のどれかの、さらに古い団長なのだろう。

明らかに隙を窺っている。

(負けない! 絶対にクリムトを守る!)

『ウルシ! 参戦してない奴らを引き付けて、牽制しろ!』

(オン!)

アポロニアスたち6体の英雄ゾンビ相手に戦えているとはいえ、向こうはまだ本気ではないだろう。そこに他のゾンビが加わっては、かなり不利になる。

牽制役が必要だ。本当は、さらに分断したいところだが、手が足りていない。

いや、喚べる存在がいたな。

『今はうるさいとかウザいとか言ってる場合じゃないからな! 出てこい!』

「ふははははは! 我が神よ! 喚んでいただき有難き幸せ! 中から状況は見ておりましたぞ! そちらの、高貴そうな2人をお任せください!」

『頼む』

「お願い」

「うおおおおおお! 神と猫耳巫女からの御下命! 承りましたぞぉぉぉ!」

突如現れた邪気塗れのグールに、ユヴェルとオルドナが驚いているのが分かる。しかも、エキセントリックな叫び声をあげながら、自分たちに向かってきているからな。

あの様子なら、少しの足止めはできるだろう。

アヴェンジャーを喚び出したことで、俺は一つ手を思いついていた。

この英雄ゾンビたちは、その内側に濃い邪気を秘めている。情報からの再現にも、邪神の欠片の力を利用しているんだろう。だったら、その邪気を通じて、干渉できるんじゃないか?

つまり、アヴェンジャーたちの支配権を奪った時と同じようなことが可能なのでは? そう考えたのだ。

あの時と違い、今は邪神の信頼を持っている。さらに支配力は上がっているはずだった。

『とりあえず試してみますかね!』

「ん!」

俺は邪神の信頼を発動させる。邪気征服以上に、邪気の流れが感じられた。邪気を操る力も上がっているのが分かる。

ただ、さすがに相手も強者だ。軽く干渉した程度では支配下に置くことはできなかった。しかも、戦闘中であるので、この作業に全力を傾ける訳にもいかない。

今もアポロニアスたちの攻撃を防ぎながら、必死に邪気への干渉を試みているのだ。どうしても、集中しきれない。

「何かやろうとしたようだが……集中を乱していいのか?」

「くっ!」

「ほれほれ! ここにいるのはアポロニアスだけではないぞ!」

ハルバードで結界を破壊された瞬間に、カーマイン・フレイムが撃ち込まれた。

フランの腕が焼け爛れ、煙を上げている。

マールの守りもぶち抜いてきたのだ。かなり弱らせてはくれたが、高熱を完全遮断することはできなかった。

傷を即座に回復するが、均衡が僅かに崩れてしまう。より防戦に追い込まれるフラン。それでも、敵の連携の隙間に反撃をねじ込んでいるが、アポロニアスは尽くを回避してしまう。

普通なら目視すら難しい速度とタイミングの、凶悪な斬撃のはずなんだがな……。アポロニアスは、破壊力だけではなく、防御も一級品だった。

奥の手を叩き込んで短期決戦を狙う方がいいかとも思うが、1体でも生き残れば、力を使い果たしたこちらが不利になる。

それなりの相手なら賭けに出るのもいいが、まだ本気を出していない英雄が相手だからな。迂闊に動くこともできない。

くっそ! せめて、相対する敵が減ってくれれば――。

『うん?』

北と南から近づく気配があるな? 北のは敵の増援だろうか?

だが、そうではなかった。北から一直線に向かってきているのは、見知った人間たちだったのだ。

(アマンダ! フォールンド!)

『無事だったか!』

しかも、その後方には数百の人間の気配が有る。どうやら、ここでの戦闘を察知して、2人が先行して偵察に来ているらしい。

生きていることも嬉しいが、今は本当に心強い援軍だ。

むしろ、南からくる気配の方が問題だろう。それは、シビュラとマドレッドだったのだ。これ、敵に回ったりしないよな……?