軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1243 出発前のギルドで

俺の火炎魔術と、フランの雷鳴魔術。そして、ウルシの闇魔術が死霊たちの先頭を打ち砕いた。邪気で強化されているとはいえ、俺たちにとっては雑魚に変わりはないのだ。

威力よりも範囲を重視した魔術でも、十分倒せる。

『うーむ。1000や2000倒したところで、焼け石に水だな』

(戻る? それとも、もっとやる?)

魔術で結構倒せたのを見て、フランはここで自分たちが防衛し続ける形でも行けるんじゃないかと考えたようだ。

『いや』

他の場所からも死霊は入り込んできているのだ。ここをスルーして南下されてしまえば、意味はないだろう。

『やっぱり、一度アレッサに戻って報告をするぞ』

(わかった)

さらに数発魔術をぶっ放してから、俺たちはグレイトウォールを使用する。

あえて巨壁同士に隙間を作ることで、死霊どもがそこに殺到するように配置した。奴らがギュウギュウと押し合うことで、行軍を少しでも遅らせる目的なのだ。

さらに浄化魔術を使って、周囲に結界を張っておく。これも、遅滞と嫌がらせが目的だ。

10分も稼げれば、騎士たちはかなり距離を取れるだろうからな。

狙い通り、死霊たちの行軍が止まったぞ!

これなら、騎士たちも問題なく逃げ切れそうだ。再度空から近づく俺たちに、先頭の騎士が手を振ってくれる。

「助かったぞ!」

「ん。これから、どこいく?」

「アレッサを目指すつもりだが、あちらは無事か?」

「だいじょぶ」

やはり、この辺で一番大きいアレッサを目指すらしい。騎士が防衛戦力に加わってくれれば、かなり頼もしいのだ。実力というよりは、市民の精神安定的な意味合いが大きいが。

アマンダやフォールンドがいてくれれば、アレッサよりも手前で迎撃することも考えられるが、俺たちだけじゃ手が足りない。

相手の数も分からないしな。

『とっととクリムトに報告して、すぐ再出撃しよう』

結局それが、アレッサの負担を一番軽くできる方法だった。

「ん。ウルシ、がんば」

「オンオン!」

「……あんなたくさん敵がいて、アマンダたちだいじょぶかな?」

『きっと大丈夫だ。簡単にやられるやつらじゃない。戻ってくる場所を、守らなきゃな』

「ん!」

アレッサへと急ぎ戻った俺たちは、敵の規模や構成を報告する。

再建中の領主館に集められた有力者たちの顔には、厳しい表情が浮かんでいた。誰も、嘘だとは言わない。ランクA冒険者の報告だからだ。

だからこそ、この町の危機なのだと、理解できてしまうのだろう。

領主が、縋るようにクリムトを見る。

「避難は間に合わんか?」

「死霊とは言え、かなり足が速い。逃げ切ることはできないでしょう」

「そうか……」

領主も答えが分かっていたのか、そこまで気落ちした様子はない。そもそも、このアレッサがこの周辺で最大の町なのだ。避難者を受け入れることは考えていても、避難することは想定していないはずだった。

いや、領主はあえて分かり切った質問をしたっぽいな。

部屋にいる全員に「避難は不可能、戦うしかない」と聞かせることで、迷いを断ち切らせたのだ。そわそわしていた商人などが、背筋を伸ばして覚悟を決めた表情をする。

「戦力が足りていれば各個撃破も狙えるのですが、現状でランクA以上と呼べるのは、私とフランさんだけです。これでは、無理攻めは難しい」

「では、どうする?」

「敵をある程度侵攻させ、各方面から雪崩れ込んできている敵を合流させます。そして、そこを一気に叩く」

「……危険ではないのか?」

「危険ですが、他に方法がありません」

クリムトの立てた作戦はかなり難易度が高かったが、今のアレッサではこれくらいしかないというのも確かだった。

俺たちがやることは、敵への嫌がらせだ。まあ、そう見せかけて、各方面の敵の歩調を調整するのが狙いなわけだが。

奴らの進軍速度をこちらで操り、アレッサ北部へと同時に集結するように誘うわけだ。

そうして敵が一か所に固まったところを狙い、クリムトの大精霊が根こそぎ掃除するという作戦である。

ポーションなどを譲ってもらうため冒険者ギルドへと移動すると、クリムトは領主館にいた時よりも申し訳なさそうな顔で口を開く。

「フランさん。あなたたちに負担をかけ過ぎてしまいますが……お願いします。今の我々に、できることは多くない」

「ん。だいじょぶ」

『任せておけ!』

「オンオン!」

「これを」

クリムトが、青い球を差し出す。魔力が籠っているが、魔石ではない。

「これ、なに?」

「精霊の塒という魔道具です。一時的に精霊を宿し、持ち運びが可能となるアイテムですね。これを持っていて下されば、この精霊の目を通じて、私もそちらの戦況を見ることが可能です。適当に持っていてください」

収納に仕舞うのはマズいということで、布で包んでフランの腰に括り付ける。これで、大精霊をぶっ放すタイミングは、クリムトが決めてくれるだろう。

「フランちゃん」

「ネル」

「職業、チェックしてみない? 何かいいジョブが出ているかもよ?」

「ん。分かった」

剣王が最高位職だと思うが、フランを心配してくれるネルの想いを汲んだのだろう。彼女の提案通り、ギルドの転職の間へと移動した。

そして、水晶に手をかざす。

「うわー、またたくさん出てるわねぇ」

「ん」

『うわー、100は超えてるな!』

成長した今、上位職も大量に出ている。ただ、剣王を超える職業は――。

「えええ? なにこれ!」

「ネル、どしたの?」

「こ、これ! この守護剣王って職業! ギルドの資料にも載ってないわ!」

『は? まじ?』

「ほんと?」

「ええ! 私、資料の職業は全部頭に入っているもの!」

ネルさん、地味にスゲー! さすができる受付! というか、守護剣王? 名前から考えて剣王の上位職じゃんか!