作品タイトル不明
1236 絶対的自信の理由
両陣営ともに臨戦状態ではあったが、ポティマの攻撃が合図となって戦闘状態へと突入していた。
ポティマは当然フランに向かってくるが、他の傭兵たちはエイワースやシビュラに挑みかかっていく。
傭兵10人に対し、こちらの戦力は30人近い。赤騎士がたくさんいるからね。実力を理解できないほど雑魚ではないだろうに……。
『ウルシ! 前みたいに回り込んでくる奴らがいるかもしれない! ビスドラと子供たちのこと、任せるぞ!』
(オン!)
なんだかんだ、俺とフランが最も信頼できるのはウルシだ。戦闘力ではエイワースやシビュラの方が上かもしれないが、大事な物や相手の護衛はウルシの方が安心できる。
『フラン、こいつは村も関係なく攻撃を放ってくるぞ。被害が出る前に、村から引き離す』
(ん)
本気を出して瞬殺することも考えたが、失敗した場合に周辺被害が大きすぎる。ポティマの妙な自信の正体が狂信ではなく、俺にも見抜けない何かだった場合、反撃を食らうことだってあるだろう。
相手が思惑に乗ってくるかが不安であったが、フランが村から離れるように動くと、あっさりと追ってくるのであった。
1対1でフランに勝てる気なのだ。
「死になさい!」
「無駄」
「我が攻撃を避けるとは、不遜な!」
斬撃を放ってくるが、フランが接近戦で後れを取るほどの練度ではない。あっさりと回避していた。
それに顔を顰めるポティマ。不遜って……。まあ、神の代理人気どりみたいだし、自分が一番偉いって思ってんのかね?
『フラン、この先が少し開けてる。そこまでいくぞ』
(ん)
あえて引き離さないように速度を調整するフランにポティマがさらに斬りかかってくるが、フランの方が技量が高い。
いくら剣聖術に至っているとはいえ、剣王には敵わないのだ。無理な体勢でも、危なげなくポティマの剣を防いでいる。
狂信のせいで目が曇っているとはいえ、それが全く理解できないほど弱くはないと思うんだがな……。
数度の斬り合いの中で、こちらの斬撃が幾度もポティマに直撃する。しかし、治癒魔術と蛇族としての特性である再生力のせいで、即座に傷が塞がっていた。
確かにその再生力は脅威だが、魔力は大きく減っている。このまま続けば、フランの勝利は揺るがないだろう。
『フラン。そろそろ勝つぞ』
(ん)
フランが足を止めるのを見て、ポティマが薄ら笑いを浮かべる。
「観念したようですね? さあ、我が刃をその身に受けるのです」
「お前じゃ無理」
「確かに、強いのでしょう! 認めます! ですが、私が負けることはありません! 神よ! 私に力を!」
神? やはり、何か特殊な上位スキルがある? 神に関するヤバいスキルの場合、見抜けていない可能性はある。
俺たちはどんな攻撃にも対処できるように、身構えた。
ポティマの姿が、変化していく。顔や腕が、アメジストのような紫色の鱗に包まれた。口からチロチロと覗く先の割れた舌と、蛇のような縦長の瞳孔。
そして、その身に纏った紫色の魔力。
覚醒をしたようだった。種族名も、死毒蛇となっている。
神というか、獣人としての特性なわけだが……。
「神を感じるわ! 確かに、私の中に神はいる!」
そう叫ぶポティマの全身が、神気で覆われていく。偶然ではなく、明らかに自らの意思で神気を操っているのだろう。
これが、ポティマの強気の正体か。
同じ覚醒状態でも、個人によって差は出る。ただステータスが上昇するだけの獣人もいれば、ポティマのようにスキルをさらに使いこなしている者もいるのだ。
神気を操れるのであれば、相手が格上であっても勝利の可能性はある。むしろ、その優位性は圧倒的だ。
自分だけが神気を使えるのであれば、レベルの20や30くらいの差はひっくり返すことが可能だろう。
「あの日、私は確かに神に愛された! そして、この力に目覚めたのです!」
何かきっかけがあって、自力で神気に目覚めたってことか? 確かに、自分が神に愛されていると勘違いしてもおかしくないか?
すでに勝利を確信した目で、フランを見つめるポティマ。
「その邪悪な剣ごと、滅してあげましょう! 神に逆らった愚かしさを後悔しながら、死んでいきなさい!」
フランはその眼を睨み返しつつ、同じように自らの切り札を使用した。
「覚醒」
同時に、神気を纏う。フランが獣蟲の神の加護を通じて、神気を引き出したのだ。神気を使う相手には、こちらも神気を使わなければ危険だからな。
それに、こちらが神気を使うことで、絶対的な自信を得ていたポティマの動揺も誘えるかもしれない。
俺も同時に神気を放出し、ポティマに威圧をかける。
オラオラ! 神気使えんのはお前だけじゃないんだぜ!
すると、狙い通りにポティマに異変が現れていた。
「ば、かな……。なぜ邪神に与する外道が、神の力を……! うぁぁ……」
いや、狙っていた以上に、動揺しているな。動揺を通り越して、驚愕って感じだ。眼を大きく開き、全身を震わせていた。