軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1234 邪人狩りのポティマ

村に入れろと言っていた冒険者たちだったが、エイワースの追及を受けて口ごもってしまった。

急にきな臭くなってきやがったぜ。

「……か、帰ります。め、迷惑でしょうから」

「ふん。とっとと消えろ」

力づくで村に押し入ろうという気はないようだ。まあ、ここで戦闘すると村に被害が出るかもしれんし、とりあえずお帰り願って後を尾けるか。

だが、移動し始めようとした冒険者たちの中、一人の女性が前に進み出ていた。ローブを頭から被っていて顔は良く見えないが、体つきで女性だと分かった。

それに、実力が上手く読み取れん。あまり強そうには見えないが、違和感がある。実力を隠しているのだろう。

その目を見て分かった。この女性が、俺を観察していた視線の主だ。

今も、微かに見られている感覚がある。フランには一切の視線を向けず、俺だけ見ているのは珍しいな?

「直接確認しました。ここで引くわけにはいきません」

急に出てきて話し始めたが、他の冒険者がそれに不満を感じる様子もない。それどころか、全員が彼女の指示を待つかのように、足を止めていた。

「予定を変更します。このまま、目的を果たしましょう」

女性がそう告げた直後、冒険者たちの気配が即座に変わる。

明らかに臨戦態勢だ。

実はこの女性がリーダーだったらしい。端っこで気配を消していたのは、こちらへのブラフだったのだろう。

冒険者たちが軽く身構えたことが分かっているはずなのに、エイワースは相変わらずの挑発的な態度で質問をぶつける。さすがのクソジジイだ。

「目的とは何だね? 虚言を用いて村に入り込もうとしたのだ。碌なものではなさそうだが?」

これに対し、謎の女性が感情を感じさせない声色で答えた。

「この村にいるというドラゴンを引き渡しなさい」

「ほう? 竜の素材狙いの泥棒だったか」

「泥棒? 私たちがですか?」

女性が首を傾げる。本当に、分かっていないようだった。

「他者の従魔を奪おうというのだ、泥棒以外の何者でもあるまい? コソコソと村に入り込もうとしていたのだから、自分たちが泥棒だという自覚があるのだろう?」

「これは慈悲なのですよ? 逆らえば、タダで済ますわけにはいきませんから。密やかに邪竜だけを滅するつもりだったのですが……。逆らうとは、愚かな選択をするのですね?」

女性がこちらを責めるような様子で、ため息を吐いた。

「邪竜などという危険な存在を秘匿するなど、言語道断。欲に目がくらんでいるのかもしれませんが、邪神の眷属は我ら人間と相容れぬのです。悪いことは言いません。不幸になる前に、引き渡しなさい。我らが滅してあげますから。ね?」

まるで、聞き分けの無い子供に言い聞かせるような、自分たちに正義があるかのような物言いだ。

だが、女の目は本気だ。本気で、自分たちが一方的な正義だと信じている。

『フラン、これは話し合いじゃ済まんぞ』

(ん)

正直、この時点では当事者意識は低かった。なんというか、メインはレイドスの面々で、俺たちは護衛や助太刀のような立ち位置のつもりだったのだ。

しかし、次の女の言葉を聞いた瞬間、フランが凄まじい殺気を放っていた。

「それと、黒雷姫。あなたの剣にも、邪気が潜んでいますね? 私の目は誤魔化されません。ドラゴンと共に、その剣も渡すのです。こちらで処分して差し上げます」

「あ゛?」

あ、この女、自殺願望があるのかっていうくらいピンポイントでフランの地雷を踏み抜いたな。

フランはその眼力だけで相手を殺せるんじゃないかっていうくらい、殺意に満ちたガンギマリの目で女性を睨みつけている。

周囲の冒険者たちが、血の気の引いた顔で数歩下がっていた。全員が鳥肌を立て、脂汗を流している。数人は腰が抜けて、ヘナヘナと座り込んだな。

だが、女は表情を変えない。

「……今、なんて言った?」

「その邪気を秘めた剣をお渡しなさい。それは、存在してはいけない剣です」

この女、『見邪の理』というスキルを持っている。これによって、俺の内部の邪神を感じ取ったらしい。

「……この剣は、邪気を吸収して操る力があるだけ。邪悪な存在じゃない」

え、偉いぞフラン! 殺意は抑えられてないけど、しっかりと話し合いをしようとする姿勢を見せるだなんて!

だが、世の中には話が通じない相手っていうのがいるのだ。今回は、相手が悪かったな。

「邪気を纏っているだけで、存在してはいけないのです。邪神とそれに連なるものは、生きとし生けるものの敵。全て滅します」

「……させない」

「渡さぬというのであれば、邪神に与する者と認定します」

「認定したらどうなる?」

「邪人殺しのポティマの名において命じます。死になさい」

先に動いたのは、殺気を漲らせるフランではなく、女の方であった。

ポティマと名乗った少女が、バッとローブを脱ぎ去って剣を抜き放つ。フランの殺気にも全く怯んでいなかった。

目の周辺やこめかみに緑色の鱗が貼り付いている。これは、蛇獣人の特徴だ。

「邪神に与する邪悪の徒に、天罰を与えます。滅びなさい」

「おかしな泥棒なんかにやられたりしない」

互いに殺意を向け合うフランとポティマ。一触即発の両者の間に割り込んだのは、焦った表情のホワイトであった。

「お待ちなさい! ここは、クランゼル王国の直轄村です!」