軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1230 男たちの目的

少し待っていると、冒険者集団が村の前までやってきた。先頭にいる戦士がリーダーなのだろう。

ランクで言えば、Dくらいかな? さほど強くはない。

「よぉ。あんたらご同業かい?」

「ん。冒険者」

「そうかいそうかい。なら話が早い」

リーダー格の男が、ニヤニヤと笑いながらウンウンと頷く。明らかにフランとエイワースを格下に見ていた。文官の格好をしたホワイトも、見た目だけでは強そうに見えないからな。

相手の技量を見抜けるほどの眼力はないらしい。

感じは悪いが、いきなり敵対するつもりはないようだ。ただの時間稼ぎかもしれないが、情報は欲しい。ここは一応相手をしてみよう。

「なんのよう?」

「おいおい! ご挨拶だな! あんたらと同じだよ。この村を拠点にして、この辺で狩りをしたくてよ」

なるほど。フランとエイワースのことを、偶然村に滞在する普通の冒険者くらいにしか思ってないわけか。

「それは無理」

「あ?」

「ここの村は、許可がないと入れない」

「儂らはお国から依頼されておる。そうでない者は入れんよ」

フランとエイワースの言葉に、冒険者たちが不愉快そうに顔を顰める。

「お前らみたいなのが? 嘘つくんじゃねぇよ」

「そうだそうだ! ガキとジジイが、国から依頼を受けるなんてありえねぇだろ!」

「引っ込んでろ雑魚が!」

今度は全員で恫喝だ。男たちは待ってましたとばかりに、声を荒げ始めた。フランたちが怯える様子でも、想像しているんだろう。

まあ、フランもエイワースも全く動じていないが。

動揺どころか表情一つ動かさない2人に、リーダーは苛立っているようだ。予定とは違っているんだろう。

「ちっ。いいからどけ。お前らじゃ話にならん」

「ダメ」

「知らねぇよ! おい。いくぞ」

「おう!」

剣こそ抜いていないが、無理やり押し通ろうとする冒険者たち。だが、フランたちが通すわけもない。

無理やり通ろうとした男たちの前に、土の壁がせり上がり行く手を遮った。

「ダメと言ってる」

「いうことを聞かん者たちだ。痛い目を見んと、分からんのか?」

「……雑魚とロートルが粋がるんじゃねぇよ! 痛い目見たくなけりゃ、村の人間を出せ」

「話は私たちがきく」

「それに、こちらの男は代官のようなもんじゃ」

「あなた方の言動は、とてもではないが紳士とは程遠い。この村への立ち入りは許可できませんな」

ホワイトがそう言った瞬間、男の雰囲気が変わった。微妙に肩を落とし、困ったような顔でフランに向かって手を合わせ始めたのだ。

「そこを何とか頼むよ! な? 俺たちだってここまで来て手ぶらじゃ帰れねぇんだよ! 大赤字になっちまう。同業なら、分かるだろ?」

今度は泣き落としか。一番年下のフランなら、これで懐柔できるとでも思ったのか?

同業であれば赤字のまま帰ることに同情してくれると考えたんだろう。だが、フランにこんな見え透いた手が通じるはずもない。

「食料も微妙に足りなくてよ。頼むから、村の滞在許可をくれよ」

「それは自分たちのせい」

「くくく。見通しの甘い三流冒険者というのは哀れなもんじゃのう! くははははは!」

冒険者に対してはスパルタなフランと、サイコパス爺のエイワースだ。泣き落としなんて、むしろ逆効果なのである。

エイワースの高笑いが響く中、冒険者たちが殺気立つ。しかし、リーダーは顔を顰める程度だった。

こいつ、なんか違和感があるんだよな。密かに村の裏に回した別動隊と言い、何か狙いがあるんだと思うんだが……。

リーダーはフランたちを睨みつつも、何かを思案しているようだ。

「なあ、1ついいか?」

「なに?」

「この村に……ドラゴンがいるっていうのは、本当か? しかも、邪竜だって話じゃねーか?」

『どっから漏れた!』

こいつら、もしかしてビスドラが目的か? ドラゴンの素材は下級でも高く売れる。簡単に仕留められる子竜がいるなら、狙う者はいくらでも出てくるだろう。

だが、フランとエイワースはさすがだ。元々表情筋がお休み中のフランと、老獪なエイワース。表情を変えず、全く反応しなかった。

村には、商人や冒険者など、多少の人の出入りはある。そこから情報が漏れたのだろう。仲間に酒飲み話として話してしまう者だっているかもしれない。

邪竜ということは明かしていないが、村人ならわかっていることだしな……。ポロッと漏らしてしまうことはありえた。

「さあ?」

「いるのか? いないのか?」

「しつこい」

「いいから答えろよ」

フランが言う通り、しつこいな。何でもいいから反応を引き出したいんだろう。それに、ポーカーフェイスなのはフランとエイワースだけだった。

男はホワイトの顔を見つめ、ニヤリと笑う。

「そうか! いるのか!」

ホワイトっ! 暗部の訓練を受けてるんじゃないのかよ! まあ、俺にも全く分からないくらいの変化だったけどさ。それを見分けられるこの男が凄いのだ。

「そのドラゴンとやら、見せてみろよ? な?」

「いない」

「……ちっ。いいから、レイドス人どもが逆らうんじゃねぇ! 高位竜の素材は高く売れんだよ! よこせ!」

リーダー格の男が軽く舌打ちすると、怒鳴り声をあげた。やはり、この村の情報がどこかから漏れたようだ。

リーダーを鑑定すると、戦闘力は普通だが、交渉や恫喝、虚言のスキルを持っている。

この男は、実際は詐欺師というか、恫喝紛いの方法で交渉をごり押しする悪徳冒険者であるらしい。いままでも、こういう武力を背景にしたやり方で、荒稼ぎしてきたのだろう。

だが、今回は相手が悪いのだ。

「儂はレイドス人ではない」

「私も」

フランたちに言い返され、リーダーの怒りゲージが増していく。

「ど、どっちでもいいんだよっ! いいからドラゴン渡せ! 冒険者ギルドに、邪竜を匿ってるって報告してやってもいいんだぜ?」

ビスドラのことは、普通にギルドも知っている。全く脅しにはなっとらんね。全情報が完璧に漏れたってわけじゃなさそうだ。

「くくくく、くははははは! 黒雷姫。カードを見せてやれ」

男たちの的外れな脅しに、エイワースが笑い出す。そして、フランに冒険者カードを見せるように促した。まあ、ここは身分を明かす方が早いだろう。

「ん。これ」

「ほれ、これを見よ」

「は? 金カード、だと?」

まさか、相手が強者だとは思っていなかったらしい。男たちはポカーンとしながら、カードを見つめていた。