軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1226 開拓村へ

「よーし! みんなで引っ張るぞー!」

「「「おー!」」」

「そーら!」

「「「そーら!」」」

頭の上にビスドラを乗せたシビュラの掛け声に合わせ、村人、赤騎士が力を合わせて、太い縄を一斉に引っ張る。縄が結ばれている先は、家屋ほどもある巨大な岩であった。

邪魔な岩をどかすために、全員が協力しているのだ。

俺たちは、離れた場所からそれを見ている。

「みんな、頑張ってる」

『だな』

ここは、レイドスから転移してきた人たちに対し、クランゼル王国から与えられた元開拓村だ。

山の麓にあり、周辺には川もなければ他の村や町もない。

かなり不便な場所ではあるが、周辺に魔獣が少ないことと、いずれ鉱物資源の発掘を行うために、この場所に開拓村が作られたらしい。

それに、不便ということは、人も中々訪れないということだ。レイドスの人々を匿うには、ちょうどよかった。

フランとクリッカ、ウルシが頑張って魔獣を駆除した甲斐もあり、村人たちも喜んでくれていたのだ。

ただ、より人里離れた場所にある分、村の荒れ方は結構酷かった。

まずは魔獣。発生数が少ない地域とはいえ、ゼロではない。

アーマーラットたちに掘り返された地面や、扉を破壊された家屋。それ以外にも魔獣が出入りしていた痕跡があり、その補修は時間がかかるだろう。

さらに問題だったのが、山からの落石である。雨によって地盤が緩んだせいなのか、幾つもの大岩が村周辺に転がり落ちてきていた。

その内最も大きかった巨岩があろうことか外壁を突き破り、村の中央にドーンと鎮座していたのである。

家が数軒潰されているうえ、この岩が外壁に空けた穴のせいで魔獣が侵入し放題だった。アーマーラットたちも、ここから侵入したのだろう。

この外壁の穴を塞がねば安心して眠れないが、その前に大岩を村の外に出す必要があった。最初は、フランが片づけようとしたのだ。

俺たちなら一瞬で片が付く問題だろう。収納してしまえばいい。

しかし、それはクリッカから止められていた。

魔術を得意とするフランが手伝えば、あっという間に作業は終わるだろう。村の復興もすぐに完了するし、食料などもフランが用意可能だ。

だが、何でもフランに頼りきりになっては、いざという時に困ることになるだろう。フランだっていつまでも村に残るわけではないのだ。

それに、村人たちが達成感を得られない。新たな村も食料もただ与えられただけ。それでは、ここを自分たちの村であると心の底からは思えない。

たとえ何日かかろうとも、自分たちで苦労して村を立て直すからこそ、そこが自分たちの居場所であると胸を張って言えるようになる。クリッカやシビュラはそう考えていた。

一理あるだろう。俺もそう考えて、手伝いたがるフランを説得していた。

そりゃあ、命の危機があるなら手伝うが、そうでないならしばらくは様子見をする方がいい。

そこでシビュラと相談して、フランは不調で1週間ほど手伝いをできないと説明することにした。

シビュラは最初1ヶ月様子を見るようにと言っていたが、フランが抵抗したのだ。

結果、最初の1週間は完全に様子見、その後3週間は簡単な魔術で少しだけ手伝うという形に落ち着いたのだった。

そのため、今の俺たちは見守ることしかできない。

「そーら!」

「「「そーら!」」」

何度目かの掛け声の後、大岩がグラグラと揺れ出し、少しずつ動き始めた。その先にあるのは、丸太を組んで作ったレールのようなものである。

岩の下の丸太をちょっとずつ入れ替えながら、村外れまで運んでいくのだ。かなりの重労働だが、村人たちは皆笑顔だった。

ただ、フランだって何も仕事をしていないわけではないのだ。

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「お腹痛いのか?」

「ん。なんでもない」

子供たちが岩に近づかないように、見張る役目である。

「ウルシちゃん! みんなすごいね!」

「オン!」

「ウルシが大きくなれなくなったって聞いて心配だったけど、みんなで力を合わせたらどうにかなるんだな!」

ウルシも、大型犬サイズで子供たちにモフモフされている。

ウルシが元の大きさになれば、やはり村人たちの仕事を奪うだろう。

結果として、フランと一緒に不調であるとして、子供のお守りや村の周囲の警戒を担当していた。

これは、赤騎士たちも同じだ。まあ、彼ら全員を不調とするのは無理があったので、数人の手伝い要員を残し、周囲の警戒に出るという形にしているが。

そもそも全員は入りきらないので、赤騎士の半数以上は近くの廃村へと収容されている。

こちらの村よりもさらに荒れていて候補にも入っていなかったが、赤騎士たちは距離を優先してそこを選んでいた。村にいながら、野営みたいな生活をすることになるだろう。赤騎士の開拓村は、マドレッドが纏めている。

こちらの開拓村には、100人ほどの赤騎士が残っているのだ。その中から、警備と力仕事をするために20人ほどの赤騎士を残し、後は本当に調査任務へと出ている。

有用な資源があるかもしれないし、山の落石調査が甘かったように、何か国の見落としがあるかもしれないからね。

ただ、当然ながら自由行動などさせてはもらえない。ペリドットによって派遣された暗部の見張り役が、赤騎士たちに同行していた。

赤騎士たちは監禁されないだけマシと考えているようで、きっちり従っている。

2つの開拓村での生活は、このまま順調に進むだろうか? 赤騎士たちはともかく、村人たちはレイドスに戻るかどうかも分からない。

願わくば、子供たちがこのまま笑顔で居続けてくれればいいのだが。