作品タイトル不明
1211 バルフォン
『最後の仕上げだ! はぁぁ! レーヴァテイン!』
Lv8火炎魔術、レーヴァテイン。大爆発を起こす術だが、フレア・エクスプロードよりも強力で、メギド・フレイムより制御が簡単なのだ。
この術なら、多重起動も可能だし、広範囲をカバーできる。
俺が発生させた大爆炎が、撒き散らされた無数の羽根を呑み込んで焼失させていく。しかし、メインはそこではない。俺が狙っていたのは、爆風によって羽根を叩き落すことであった。
狙い通り、真上から爆風を浴びた羽根は大きく軌道を変え、ほとんどが大地へ向かって落ちていく。
僅かに残ってしまったものも、ウルシがしっかりと防いでくれていた。村人に被害はない。赤騎士たちも無事だろう。
(師匠、さすが)
『おう! みんなで助からなきゃ、意味ないからな』
(ん。でも、まだ終わりじゃない)
かなり疲労しているはずだが、フランは風狼たちを睨みつける。せめて、牽制しようというのだろう。
その甲斐あってなのか、風狼たちは最後まで動かなかった。赤騎士たちがしっかりと超人兵を殲滅し、村人たちに被害はない。
風狼と刃鷹は空中に留まり、こちらを見下ろしている。相変わらず、攻めてくる様子はない。
一体何がしたいのか? 他の部隊長がやって来るのを待っているのか?
シビュラもそう思ったようで、グレイトウォールに駆け上ると、風狼たちに向かって挑発するように叫び声をあげた。このまま逃げられる前に、攻めさせようと考えたのだろう。
「他の部隊を待っているなら、無駄だぞ! そっちにも、あたしたちの協力者が向かったからなぁ!」
彼女の言葉に真っ先に反応したのは、フランだった。
「協力者? ナイトハルト?」
シビュラの協力者と聞いて、真っ先にカマキリ頭の傭兵のことが思い浮かんだのだろう。だが、シビュラの答えは違っていた。
「いや、デミトリスの方だよ」
「あー」
フランが微妙な顔をしている。どこか残念そうだ。何故かお気に入りのナイトハルトと違って、デミトリスには残念なイメージを持っているからだろう。約束を破られたしな。
だが、援軍としては最強クラスなのは間違いないだろう。
「まあ、あたしの指示じゃあないがね。勝手に出撃しちまったのさ」
うわー、その姿が容易に想像できる。弱い者に対しては優しいタイプだという話なのだ。
「あの爺さん、ブチギレてたしなぁ。今頃、別動隊を壊滅に追い込んでるだろうよ。ありゃあ、化け物だ」
十分強者であるはずのシビュラをして、化け物と評されるのだ。この国で何をしたんだろうな?
ともかく、デミトリスが本気で戦っているなら、本当に別動隊はここにこないだろう。あの老人、強さだけは信用できるからな。
だが、シビュラの言葉を聞いても、風狼たちに動揺は見られなかった。それどころか、勝ち誇った雰囲気さえ感じる。まあ、異形過ぎて、表情とかは分からないが。
「確かに、我らの同胞は全滅したようだな! 空舌、赤爪も倒されたようだ。残るは、将軍閣下のみだ!」
空舌、赤爪というのが、残る部隊長の名前なのだろう。そんな仲間たちがデミトリスに滅ぼされたと言っているのに、刃鷹の言葉には悲愴さの欠片もなかった。
むしろ――。
「くははははは! 目出度い! すべての条件が揃った!」
「ガルオオオオオォォ!」
歓喜している。刃鷹の叫びだけではなく、風狼の咆哮にも、強い喜びの念が籠っているようだった。
「では、最後の起動条件を満たすとしようか!」
「ガオォォ!」
「何を……!」
「!」
刃鷹たちの行動に、シビュラもフランも驚愕の表情だ。
なんと、刃鷹が大剣と化した左腕を風狼へと突き込み、風狼がたくさんある口で刃鷹へと噛み付いたのだ。
殺すつもりの攻撃であることは、そこに込められた魔力で分かった。
「全ての鍵は、開かれた!」
「ウオオォォオォォン!」
「我らが主様! 我らが将軍閣下! 血と魔力と大地を捧げます! その力を以て、我が国に仇なす者たちをうち滅ぼして下され!」
風狼たちは一際大きな咆哮をあげると、そのまま崩れ落ち始める。
「……くそが」
刃鷹の狂信的な言葉を聞き、うめき声をあげるビスコット。いや、ビスコットだと思っていたが、その声は少し違う。ビスコットよりも大分年上に思えたのだ。
ビスコットだと思っていたが、父親とかか?
皆が身構える中、事態はさらに急展開を迎える。
風狼たちが完全に崩れ去った直後、奴らが浮いていた場所の直下と思われる場所から、光の柱が噴き上がったのだ。
(凄い魔力……)
『ああ。地面から、魔力が勢いよく流れ込んでいってるぞ』
迸る魔力は、それこそウィーナレーンが本気になった時に近い存在感があった。しかも、大地から力を吸い上げるかのように、魔力がドンドンと光の柱に流入していく。
ヤバいんじゃないか? 見る見る、周辺の地面が枯れ始めているんだが……。
「おらぁっ!」
シビュラが即座に危険であると判断し、攻撃を放った。真っ赤な魔力弾が飛ぶ。だが、直撃する前に、噴き上がる魔力に阻まれて消し飛ばされてしまっていた。
一瞬遅れてフランや赤騎士も魔術を放ったが、同様だ。何の効果もない。
そして、光の柱が次第にその勢いを弱め、中から光を割って誰かが現れた。
外見は、人だ。可憐な少女である。
しかし、その身から発せられる覇気は、尋常ではなかった。
「頭が高いぞ! 我は超人将軍ラランフルーラである!」