作品タイトル不明
1209 アナウンスさんの新機能
「ふうぅぅぅ……」
フランが神気を練り上げる。驚くほどスムーズだ。
フランの内で高まる神気は、誰もが無視できない存在感を放っている。フランから漏れ出すそれが神気であると分からずとも、注目せずにはいられないだろう。
超人兵も赤騎士も、戦場にいる全てがフランを見ていた。見ずにはいられなかった。
(師匠。師匠も、本気でお願い)
『神気だけじゃなくて、邪気も使えってことか?』
(ん。じゃないと、足りない)
確信を持って言い切るフラン。神気を操ることで感覚が鋭敏になっていることは解っていたが、俺の想像以上に色々なものが見えているようだ。
自分の放つ攻撃がどれほどの威力で、相手がどれほどの威力なのか。それが、感覚的に理解できているようだった。演算能力なども上昇しているのだろう。
「お願い」
『分かった。俺も、本気出すぜ!』
「ん!」
フランのお願いだ、なんだってするさ。邪気だってガンガン使っちゃうぜ!
邪神の信頼を得てから、戦闘で本格的に邪気を使うのは初めてだな。一応、遠慮はしていたのだ。
『邪神の欠片よ。力を貸してくれ!』
俺は、邪神の信頼を使うことを意識しながら、内に眠る邪神の欠片から邪気を引き出そうとした。
『ふぁぁ? こ、これはっ!』
ちょ、やばい! 邪気がこんな簡単に引き出されちまっていいのかよ!
邪神の欠片が大喜びで、力を放出しているのが分かる。
それこそ今の俺は、強大な邪神の先兵のようなえげつない邪気を放っていてもおかしくはなかった。だが、実際には邪気の発散は最小限で抑えられている。
何故だ?
〈神によって付け加えられた、新たな機能の起動を確認。邪気による反動や消耗、その他の負荷等を、仮称・アナウンスさんの力で制御が可能です〉
『お、おお! まじか! つまり、邪気を使っても、消耗が抑えられるようになったってことか? それどころか、邪気の気配なんかも隠蔽可能ってこと?』
〈是〉
混沌の女神様が、邪気を使いやすいようにシステムを改良してくれたらしい。もっとバンバン使って行けってことか?
だが、邪気なんてヤバい力、デメリットなしで使用可能なんてあり得るだろうか? あの混沌の女神様が、そんなヌルいことするか?
『アナウンスさん。その新機能にデメリットはないのか? アナウンスさんにまた負荷がかかるとか?』
〈……是。仮称・アナウンスさんに大きな負荷がかかることは間違いありません〉
やっぱりか!
『今回の邪気で、どれくらいヤバい?』
〈仮称・アナウンスさんの演算能力が17%低下。回復には、一定時間の休息が必要〉
それってメチャクチャヤバいじゃないか! 完全にアナウンスさんに負荷を押しつけてるだろ!
自分の行いの結果、俺自身がその反動で苦しむのはいい。でも、俺自身には何もなく、アナウンスさんが苦しむっていうのは……。
『やってくれるぜ、混沌の女神様……』
〈否。これは、私が望んでいた力〉
『ど、どういうことだ?』
〈仮称・師匠、個体名・フランが強敵との戦闘で限界を超えるたびに、仮称・アナウンスさんは自身が無力であると感じていました〉
『いやいや! いつも助けられてるって! リッチの時だって、アナウンスさんがいなきゃ死んでたぞ! 今だって、頼り切りだ!』
〈否。現在、大きく力を増した仮称・師匠に対し、仮称・アナウンスさんでは力が不足しています。本来制御せねばならない力を、制御しきれずに消耗してしまっています。しかし、この能力があれば、まだお役に立てるでしょう〉
感情を感じさせない淡々とした機械のような声だからこそ、アナウンスさんの言葉に込められた真剣さが理解できた。
俺にとってアナウンスさんは、ずっと一緒にいてくれる頼れる存在だ。アナウンス機能だけではなく、実際に力を制御する際の手助けもしてくれていた。
だが、アナウンスさんはそれでは満足していなかったらしい。悩んでいたアナウンスさんには悪いが、俺は少しだけ嬉しくなってしまった。
誰かのために力を得たい。成長したいと思うのは、その相手が大事だからだ。
俺がフランに、フランが俺に抱く気持ちと、同じだ。ウルシもそうだろう。
つまり、アナウンスさんも、俺やフラン、ウルシを大事に思ってくれている。そして、自身を犠牲にしてでも、役に立ちたいと思ってくれているのだ。
でも、アナウンスさん、さっきあえてデメリットの部分を語らなかったよな?
俺もそうだからわかる。仲間に、弱音を吐きたくないのだ。心配を掛けたくないから。
だったら、ただ心配する言葉をかけるだけじゃダメだ。
『わかった。力を貸してくれ』
〈はい〉
謝られたり、心配されたいわけじゃないのだ。仲間には、頼られたいのである。
『ただ、俺もフランも、アナウンスさんが消えるようなことになったら、本当に悲しい。だから、限界まで無理をするようなことはしないでほしい。それだけは、お願いだから』
〈……はい〉
絶対に無理するつもりだったよな!
『俺にとって大事な仲間は、フランとウルシだけじゃない。アナウンスさんも、フェンリルさんも、最近じゃアヴェンジャーも。下手したら邪神の欠片だって、俺の中にいる奴らは他人じゃないんだ』
〈了解。無理はしません〉
『頼む。さて、とはいえ、もう引き出しちまった邪気は使うしかないんだ。ドカンと一発やってやるか!』
〈はい〉