軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1203 新しい力と術

《個体名・フランが神気操作を獲得しました》

おおう! タイムリー! まさか、こんな短期間に神気操作を身につけるなんて!

いや、短期間でもないか? フランは俺を通じて、ずっと神気に触れてきた。それだけではなく、剣神化や加護でも、神を感じていただろう。

その度に、神気に体を害され、苦しんできた。

普通の人に比べれば、異常な頻度だったはずである。ある意味、神気に関してのスパルタ修行を延々続けてきたみたいなことなんじゃないか? その努力が、先日の戦いによって開花したのかもしれない。

まあ、それだけじゃなさそうだが。

『フラン。寝ている間に、何かあったか?』

(ん? うーん? 誰か、いた?)

『いや、俺に言われても……』

(夢の中で、誰かに頭撫でられた気がする。そしたら、体楽になった)

夢の中で、神様に出会った的なことなのかね? 獣蟲の神様とか。フランは忘れてしまっているようだから、考えても仕方ないが。

『体はどうだ?』

(だいじょぶ。動ける)

『よし、ここが踏ん張りどころだ。夜になる前に、片を付けるぞ』

(ん!)

神気を肉体の強化に回すことで、神気のダメージを軽減しているようだ。神気による傷を、神気を込めた回復魔術で癒すのと同じ感覚なんだろう。

本当に神気を扱えているようだな。俺たちよりも先に敵の存在に気付いたのも、神気で感覚を強化していたからだった。

「いく」

『おう!』

(ウルシ。皆をお願い)

「オンオン!」

村人を守るため、再びフランが出撃した。

空中を駆けながら、俺たちは再び重装形態に変身する。

『やっぱり超人兵どもだな!』

(ん)

雨上がりで煙る平原の向こうから、無数の人影が迫ってくるのが見えた。

(まだ、人の姿してる)

『ああ』

ホルナ村に襲い掛かった時と同じように、超人兵たちは全速力で走っている。すぐに追いつかれてしまうだろう。

『この状態で、できるだけ多く仕留めなきゃならん』

超人兵は使い捨ての兵力にしか思っていないようだったし、死んだ後もアンデッドにできる。俺たちが現れたら、奴らは間違いなくリミッターを外すはずだ。

まあ、前回は俺が死体を掃除してしまったがな。

どちらにせよ、フランに倒されるくらいなら消耗させるために使い潰してしまえと考えるはずだ。弱い内にどれだけ減らせるか。

初撃が重要だった。

『さて、憶えたばかりの新魔術のお披露目といこうか』

(ん)

雷鳴魔術はフランとも相性がいいし強いが、範囲という意味では狭い方だ。大量の敵を一気に葬ろうと思ったら、エカトケラウノスくらいしか使える術がない。

威力一点集中型の魔術系統であるのだ。

そこで、俺たちはここまでの移動中に自己進化ポイント――いや、今は成長適合ポイントか? ともかくポイントを使い、とある魔術スキルを成長させ、新魔術を身につけていた。範囲攻撃に秀で、フランとも相性がいい強力な属性である。

今後のことを考えて、以前からどの属性にどんな術があるか、調べてはいたのだ。秘匿されていて調べるのが難しい術もあったが、今回覚えた術は有名だった。

なんせ、有名な使用者がいるのである。冒険者なら、ギルドで調べれば簡単に術の詳細や効果を知ることができるだろう。

『イザリオに感謝しないとな』

(ん!)

『それじゃあ、いくぞ!』

先制するのは、フランの術だ。

「ふぅぅぅぅ!」

魔力に混じって、神気が練り上げられる。神気操作のお陰なのか、速度も量も質も、以前とは段違いだった。

まだ極大魔術を瞬時に発動するレベルではないが、慣れてくればそれも可能となるだろう。

うかうかしてたら、俺もすぐに追いつかれてしまうかもしれんな。

『ぶちかませ! フラン!』

「ん! 火炎魔術! メギド・フレイム!」

フランの声に応えて、巨大な魔法陣が描き出される。直後、小さな太陽が大地に生み出され、膨大な熱が周囲を消滅させていた。

燃え盛る巨大な火球の周囲では大地が沸騰し、吹き付ける熱風に晒された兵士や岩が泡立つように溶けて蒸発していく。

火球そのものが数十メートル近いが、そこから放たれる熱風によって、小さな町くらいなら覆ってしまうほどの範囲に影響を及ぼしていた。

クランゼル王国の王都で、アースラースと神竜化したベルメリアの戦いの時に同じ術を見た記憶があった。

神竜化状態だったベルメリアの使用した術に比べても、威力は遜色ないだろう。神気操作によって、明らかに魔術の効率が上昇している。

一撃で1000以上の超人兵が滅んだだろう。しかも、あえて右翼に向かって放つことで、超人兵たちを左翼へと誘導することにも成功したのだ。これで、より多くの超人兵を巻き込むことができるだろう。

フランの魔術の成功を確認しながら、俺も魔術を発動した。

『俺たちが使えるようになった、2つ目の極大魔術だ! とくと味わいやがれ!』

(師匠、がんば!)

起動する術式に、魔力が吸い取られる。初めてカンナカムイを使った時のことを思い出すな。この術も、もっと修行して、使いこなせるようにならなければ。

覚えたてでは、強力な火炎を広範囲に垂れ流すような使い方しかできん。まあ、今はその使い方がしたいから、問題ないんだけどな!

『Lv10火炎魔術! スルト!』

生き残った超人兵たちの上空に出現したのは、黒い炎の塊だった。大きさはせいぜい数メートルほどだろう。

フランが放ったメギドフレイムに比べ、見た目の迫力はさほどでもない。しかし、引き起こされた惨禍は、メギドフレイムの比ではなかった。

黒い火の塊から、同じような黒い火がボトボトと垂れ流されて、落ちていく。まるで高い場所から人が落ちるのを見た時のような、不吉さと不安感を覚えた。

不気味な黒い火は次第にその勢いを増す。蛇口から流れる水のようにザーザーと落ち始め、最後には滝のようにドバババと大地に落下していた。

黒く巨大な異形が蠢いているかのようにも見える。

そして、大地に落ちた炎はテーブルに溢れた水のようにサーッと周囲へと広がり、全てを呑み込んでいった。

静かだ。普通の火炎に付随しているはずの、様々な音がない。

ただ静かに黒い火が大地を侵略し、生命を包み込んでいる。触れた瞬間、超人兵は黒い炎に包まれ、彼らが何をしようとも、その命を奪うまで消えることはない。

相手が普通の軍隊だったら、阿鼻叫喚の地獄と化しているのだろう。ただ、相手は痛みを感じず、無駄口も叩かない超人兵だ。

静かな黒い火が、無口な超人兵を焼き滅ぼし、ただただ静かに命が失われていった。