軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1195 迫る超人兵

ホルナ村に近づいてくる軍勢は、明らかに異様であった。

兵士全員が全速力なのだ。普通、あんな速度で走り続けたら、戦闘なんかできる状態ではない。しかし、兵士たちに疲れた様子は微塵もなかった。

理性がぶっ飛んでいて、苦痛や疲労を感じないのだろう。勿論、脳が感じずとも、肉体は疲弊していくはずだ。

ただ、失敗したとはいえ、超人になるべく肉体を改造された兵士たちである。体力が非常に高いうえ、再生能力も持っていた。多分、あれでもなんとかもつのだ。

そして、宣戦布告もせずに全速力で近づいて襲い掛かるのは、奇襲としては悪くない手だ。きっと、この方法で他の村も襲撃され、占拠されたのだろう。

そんな軍勢の前に立ち塞がり、半蟲人のクイントが大声を上げる。

「止まれ! お前らは何者だ! 所属を名乗れ!」

一応、相手がホルナ村の救援にきた赤騎士団の下部組織であることも考え、クイントが誰何したわけだが――。

「無視するのであれば、敵とみなす!」

クイントの叫びに対し、軍勢からは何も返答はない。聞こえるのは、万を超える兵士が駆ける、重苦しい地響きだけだ。

間違いなく、敵であった。

「ちっ! 時間稼ぎにもならんか!」

クイントが踵を返し、村に駆け戻ってくる。それに合わせ、空から見守っていた俺とフランが大地魔術を使用した。

『フラン! いくぞ!』

「ん!」

グレイトウォールを使い、巨大な防壁を生み出したのだ。これは村を守るというよりは、敵の動きを制限するためのものだ。

『獣人国やゴルディシアでの戦いを思い出すな』

「ん!」

魔獣の大群と戦った経験が、ここで活きた。村に向かって窄まるように八の字の防壁を作り出すことで、敵兵が広がることを防ぐ狙いだ。

俺たちが一番困るのは、全方位から村に攻め寄せられることだからな。敵の数が多くとも、一方向からなら対処のしようもあった。

だが、敵がこちらの思惑通りに動くかどうかは、分からない。ゴルディシア大陸で抗魔相手に似たことをやったが、その時は壁を破壊されたのだ。

こちらの思惑を見抜いたのであれば、時間をかけてもグレイトウォールを破壊してくるだろう。

さて、敵の動きは――。

「ギュウギュウ」

『敵さんの判断力は、抗魔以下ってことね』

奴らはこちらの望む通り、作り出された隘路に向かって殺到していた。兵士同士が折り重なり、潰されている。

多分、村に向かって全力で駆け抜けて、到着したら襲え的な命令しか下されていないんだろう。命令を細かく設定することが無理なようだった。

仲間に押し潰されただけでも、100人以上は離脱したんじゃないか?

それでも奴らにとっては微々たるものだが。

「師匠、ウルシ。いく!」

『おう!』

「オン!」

一か所に集めた敵に向かって、魔術をぶっ放す。狙いをつける必要もなく、数発の範囲魔術で先陣1000人はほぼ全滅状態だった。

強いことは強いが、それでも俺たちにすればそれほどの相手ではない。オークと同じくらいかね?

このまま戦えば、相手は万を超えていても完勝だろう。まあ、そこまで甘くはなかったが。

ピィィィイィィ!

「笛!」

「オン!」

フランとウルシが、戦場に響き渡る笛の音に敏感に反応した。すると、兵士たちの動きが大きく変わる。

足を止めて、左右に分かれ始めたのだ。どうやらグレイトウォールを迂回して、左右から攻めるつもりであるらしい。

だが、逃してなるものか。俺たちはさらに動きを制限するべく、グレイトウォールを並べていった。裾野が広がり、兵士たちの進路に再び土の壁が立ちはだかる。

このままなら兵士たちは壁に沿って移動し、再び隘路に誘い込まれるだろう。自分たちで判断できない兵士は、こういう時に脆いね。

とは言え、それはこのまま命令変更がなければ、だが。再び、どこからか笛が吹かれるのが分かった。

しかし、兵士たちには届かない。

俺たちが、風魔術で音を遮断しているからだ。サイレンスの魔術を、超広範囲にかけているのである。

俺たちの狙い通り、笛の音は掻き消されて兵士までは届かない。

『よっしゃ! 今のうちに兵士を減らす!』

(ん!)

こうして、俺たちの攻撃によって被害が拡大していくが、敵もそれを座して見ているだけではなかった。

「む」

「そこの怪しい騎士! 邪魔をしていたのは、貴様か!」

異形の存在が、俺たち目がけて上昇してくる。頭部はハヤブサか何かか? 背中にも猛禽類に似た翼を生やした、鳥人に似た相手であった。

魔力も強く、かなりの実力者であろう。

一応、フランは正義の騎士グレイモードを続けている。フランがこの場所にいるとバレたら、東征公以外の戦力まで集まってくる可能性があるからだ。

ウルシも、闇魔術で全身を覆い、狼には見えない姿である。

今のフランは、黒い影に包まれた獣に跨る、灰色の鎧を着こんだ小柄な騎士に見えるだろう。俺も、装飾が少ない地味な長剣に変形しているのだ。

『この軍勢はお前が率いているのか? 何者だ?』

「それはこちらのセリフだ! だが、教えてやる! 俺の名は『刃鷹』! 東征公様の配下、超人兵長が1人だっ!」