軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1189 レイドス国内の混乱

剣の指導を始めてからさらに数日。

戦争中の国とは思えない静かな村で、穏やかに過ごすフラン。そんな中、待ちわびていた相手が村にやってきた。

クイントたちの仲間が、情報を手に入れて戻ってきたのだ。村に帰還したのは1人だったが、レイドス中に散っている団員や協力者からの情報を頭に入れてきているらしい。

「初めまして。ロクテムといいます」

身長は高いがかなり細身で、地味な顔立ちの影が薄そうな男性だった。

傭兵団では、斥候のまとめ役をしていた人物だそうだ。影の薄さは、この人物にとっては強みなんだろう。

「すまんが、団長の居場所はまだ分かっていない」

「では、何の報告に?」

クイントが首を捻る。元々、定期報告はもう少し先の予定だったらしい。わざわざ訪ねてきたのに、ナイトハルトの居場所が不明というのは、確かにおかしかった。

ただ、予定を変えてでも、報告しておいた方が良いと判断した情報があるようだ。

「団長の監禁場所として当たりを付けていた施設が、壊滅した。それも、立て続けに2ヶ所」

「どういうことですか? クランゼル王国軍が侵攻したというわけではありませんよね?」

「誰がやったかは不明だ」

ここからやや離れた場所にあるレイドスの研究施設が、有り得ないほど短期間で陥落したらしい。警備が厳重で、半蟲人たちも内部の情報を得ることができずにいた場所だった。

そこが、1時間もかからずに陥落し、完膚なきまでに破壊されたのだ。

生き残りはほとんどおらず、襲撃者の情報もほとんど得られなかったという。それでも数人だけいた生き残りの証言と、現場の惨状から、いくつか情報が得られていた。

「襲撃者は1人。死毒魔術を使うようだ」

その報告に、フランが目を見開く。

(マレフィセント!)

『ああ。間違いない』

ペルソナを探して、レイドス国内を彷徨っているんだろう。どうやら、ペルソナの気配や魔力を直接追うような真似は、できていないらしい。

元々できないのか、ネームレスがペルソナの気配を隠蔽しているのかは分からないが。

そのせいで、怪しい施設を片っ端から襲撃しているようだった。

この分だと、マレフィセントによる被害はまだまだ拡大するだろう。半蟲人たちが心配しているのは、この謎の破壊行為のせいでレイドス側の警備が厳しくなり、ナイトハルトの救助に支障が出ないかということだった。

それに、今後巻き込まれないとも限らない。マレフィセントは、実験体とか民間人とか関係なく、施設関係者を殲滅している。いかなナイトハルトであっても、拘束状態で毒を浴びれば、危険だろう。

ただ、フランは、別のことが気になったようだ。

「ナイトハルトがまだ巻き込まれてないって、なんでわかる?」

「スキルですな。『蟲の知らせ』という、対象に危険が迫っているかどうかを知ることが可能なスキルがあるんでさ」

このスキルによって、ナイトハルトが現在生きていることと、危険な目に遭ってはいないことが分かっているわけか。やはり、どこかの施設で監禁されているんだろう。

「それと、赤騎士が減ったせいで、村に被害が出ている」

「我々を支援してくれている村は? 大丈夫なの?」

「そこは、密かに手助けしているからまだ大丈夫だ。しかし、僻地の村の中には、魔獣によって被害が出始めている場所もある」

マレフィセントの攻撃によって、魔獣の生息域に変化が起きたことは知っていた。実際、この村も襲われていたのだ。ただ、あの襲撃事件がレイドス国内で頻発していることは知らなかった。

いや、考えてみれば当然だろう。玉突き事故のように、移動した魔獣によってその土地の魔獣に異変が発生し、さらに異変が伝播して国に広がっていく。

その結果、村々に今までにない魔獣被害が起き始めている。

今までなら、赤騎士たちが対処していたはずだ。騎士団長が出張らずとも、団員たちだけでも下位の魔獣なら蹴散らせるだけの強さがあったからな。

だが、戦争でその数を大きく減らしてしまった。朱炎騎士団は壊滅、血死騎士団、紅旗騎士団も被害が甚大。

茜雨、赤剣、緋眼の3騎士団は無傷だろうが、そもそも持ち場が違う。

俺たちが聞いた話では、赤騎士団はそれぞれに縄張りというか、持ち場があるらしい。西に血死、東に紅旗、南に朱炎、中央に赤剣、緋眼、茜雨。北にはなしという布陣だ。

北に赤騎士がいないのは、北征公の配下の騎士団だけで、十分対処できているかららしい。赤騎士団レベルってことなんだろう。

また、茜雨、緋眼は中央でも遊撃の扱いで、場合によっては東西南北に出張するような形で活動している。

今までそうやって魔獣被害を防いでいたが、現在は赤騎士が大幅に減っているうえ、戦争で混乱している状態だ。彼らの目が隅々まで届かなくなっているのだろう。

さらに地味に問題になっているのが、食料問題である。マレフィセントによって不毛の大地に変えられた場所で、恵みが一切得られなくなっていることは俺たちも分かっていた。

ただ、こちらもその地域だけの問題ではなくなってきている。

特定地域で食料が不足すれば、他の地域から食料を融通することになるわけだが、戦争で備蓄を減らしてしまい、融通する食料がそもそもないのだ。

レイドス国内全体で食料が足りず、食料確保のために森に入ろうとしても、魔獣のせいで狩りや採取を安全にすることもできない。

このままだと、飢饉が発生する可能性が高かった。地球だったら他国からの支援に頼るところだが、周囲が全部敵のレイドス王国ではそれも無理だ。

これは、かなりマズいんじゃないか?

(師匠。食料、もっと渡せる?)

『ああ、大丈夫だ。というか、レイドスから分捕った食料は、元々この国の人たちのものなんだ。それを返せばいい』

(ん。他の村にも配ってもらう)

フランなりに、何ができるか考えているんだろう。真剣な顔で、報告を聞いていた。