軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1188 ミーミと寓話

村の子供と仲良くなったフランは、今日は宿の一階で遊んでいる。雨が降っているせいで、外で遊べないためだ。

「これが全員が貰えるご本」

「子供、全員持ってる?」

「うん」

すっかりフランとウルシに懐いたミーミが、興味深い本を持ってきてくれた。レイドス王国の子供なら全員が貰える、童話の本だ。

レイドス王国の出身者じゃないなら、持っていないだろうと考えたらしい。

紙が安いこの世界とはいえ、子供全員に無料で配布するのは結構な出費と労力のはずである。それでも配るということは、何か重要な理由があるのだろう。

ミーミの朗読を聞いてみると、理由がよく解った。

「その時です。レイドス王国の赤騎士が、にっくき侵略者、クランゼル王国の兵士の前に立ち塞がったのです」

バリバリの、反クランゼル王国教育のための教材でした。中には、複数の話が掲載されているんだが、どれもこれも、クランゼル、ベリオス王国が悪役で、レイドスの赤騎士や兵士、貴族が正義として書かれている。

ただ、この村では洗脳がうまく機能してはいないようだが。小さい時から繰り返し聞かされていれば、これが本当だと思い込んでしまいそうなものだが、それ以上に元村長たちの態度が酷すぎたってことだろう。

ミーミの朗読を聞く大人たちが苦笑いをしていることからも、この本に対して賛美するような気持ちを抱いていないことは間違いなかった。

そもそも、反クランゼルを意識し過ぎて、文章や内容がかなり酷い。破綻とまでは言わないが、全く面白くないのだ。専門の作家が書いたんじゃなくて、クランゼル憎しの素人が必死に描いたって感じである。

文字の勉強にはちょうどいいかな?

そのため、ミーミも全く面白そうではなかった。ただ、最後の部分を読んでいる時だけ、少し笑顔に戻る。

「こうして、赤騎士によって村に平和は取り戻されました。マルコとアイシャは結婚し、その後も村で幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」

ミーミはそう言って、パタリと本を閉じた。

「えへへへ、どうだった?」

「ん。興味深い」

「よかった! 全然面白くないお話だけど、珍しいお話聞きたいって言ってたから。それに、最後はちょっとだけ好きなんだ」

「最後?」

「うん。最後、幸せになれたでしょ?」

「なるほど」

「マルコもアイシャも酷い目に遭ってばかりで、最後だけ良くても本当に幸せなのかなって思うけど……」

まあ、確かに、主人公2人は波乱万丈って言葉じゃ足りないくらい、過酷な人生である。クランゼル王国の非道さを主張するために、その被害者である主人公もずっとクランゼルの被害に遭い続けるのだ。

家族が殺され、路上生活者になり、復讐を目論むも失敗して、結局マルコが片腕を失う。そして、最後に赤騎士が出てきてクランゼル王国をあっさりと退治して、幸せに暮らしたという唐突な言葉で〆られるのだ。

「でも、不幸なままで終わるよりも、救いがあるでしょ? きっと、今までの不幸な人生を忘れて、幸せでしたって言えるくらいの凄い幸福な人生を送ったんだよ」

「そう」

必死に自分の想いを口にするミーミに、フランは優しい顔だ。ミーミは、親がいない。数年前に魔獣に殺されてしまったそうだ。今は親戚の家で暮らしているし、大事にされている。しかし、いつの頃からか引っ込み思案になり、あまり笑わなくなったと聞いた。

フランからすると、自分に似た部分を感じるんだろう。子供たちの中でも、ミーミには特に優しいのだ。

その後もミーミが話を読み上げてくれるが、どれも酷い内容だった。最後は取ってつけたようにハッピーエンドである。

子供騙しだけど、確かに最後は幸せになりましたっていうほうが救いはあるよなぁ。

次の日は、子供たちに剣を教えて欲しいとお願いされ、指導することになった。兵士たちから、フランが剣の達人だと教えてもらったらしい。

やることは素振りの指導と、簡単な打ち込みをさせてやるだけだが。

「てやああぁぁ!」

「ん。その調子」

「てぇい!」

「踏み込みは悪くない」

「えぇぇい!」

「いい気迫」

子供の攻撃をいなしながら、基本的には褒めていく。さすがにこの村でブートキャンプを行うつもりはないらしい。

すると、次第に大人が集まり始め、彼らも参加し始めた。非番の兵士だけではなく、狩人などもいるそうだ。

村の外に出る職業は、誰もが魔獣を狩ることが求められているので、この国では商人などでも戦闘技術を身につけるらしい。

そのため、貪欲に腕を上げる機会を求めているそうだ。

「せぇぇい!」

「もっと足の運びを意識する! それじゃ反撃される! こんな風に!」

「ぐえ!」

「どりゃあぁ!」

「体重の乗せ方はいいけど、腕力が弱い! その程度で力押しはダメ!」

「ぐぼ!」

大人相手には、ちょっとだけブートキャンプモードだ。本気ではないけど、少し痛い目にも遭わせてより厳しく指導している。

やり過ぎたんじゃないかと思ったが、村人たちは皆が笑顔だ。

「いやー、いい訓練だったなぁ」

「んだんだ」

「赤騎士様に頼りきりにならず、自分たちの村は自分たちで守らにゃ」

なんでも近隣の村々に、赤騎士団から通達があったという。

現在、赤騎士に特殊な任務が発生しており、村々への定期巡回が満足に行われない。村の周囲に危険な魔獣が出た場合、駐屯地に知らせを送ってほしい。そんな内容だ。

戦争で大きな損害を出して、まともに機能してないんだろう。だが、赤騎士が壊滅状態だと知れれば、国民に不安が広がってしまう。

そこで、任務のせいで身動きができないと偽っているのだ。

残っている赤騎士をできるだけ効率的に運用しようとしているのだろう。

「じゃあ、もう1周しとく?」

「おお! 頼むよ!」

「んだな!」