軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1174 オンスロートの狙い

「はぁぁぁ!」

フランがオンスロートに斬りかかるが、奴は気色の悪い笑みを浮かべたまま防ごうともしない。

「きしししし! 効かねぇよぉ!」

オンスロートは、自身の邪人としての再生力や防御力を理解しているんだろう。それに、先程は神属性の斬撃を食らっても、大したダメージにはならなかったことも分かっている。

再び斬りかかろうとしているフランを見て、無駄なことをと笑っていた。むしろ、フランが自分から飛び込んできてくれるのならラッキーとでも思っているのかもしれない。

だが、さっきの一撃は牽制攻撃である。オンスロートの強さを測るための攻撃だったのだ。

今回は、倒すつもりの攻撃だぜ?

俺は、破邪顕正と邪気征服を、全力で使用する。さらに、フランが俺の刀身に神気を纏わせた。

「てやぁぁぁ!」

「ぎいいいいぃぃぃぃぃ! いてぇぇぇ!」

痛いと騒ぎつつも、まだ奴には余裕がある。肉体に結構深い傷が穿たれたのだが、薄笑いを浮かべているのだ。

だが、触手の先端に浮き出たキモイ顔が、すぐに慌てた様子になる。

「な、なんで再生が……!」

一瞬で治るはずの傷が、ジクジクとゆっくりとしか再生しないのだ。

逆に、俺は邪気征服によって奴の力を吸収し、耐久値を回復できている。相手が邪人の場合、むしろ俺は戦いやすいスキル構成になっているんだよな。

「な、なにしやがったぁぁぁ!」

「知らない」

「ぎゃぁぁぁ! くそ! やめろぉ!」

「はぁ!」

「ぎいいいぃぃ!」

フランの連撃が、オンスロートを削っていく。これは、このまま――?

一瞬、押し切れるかと持ったが、そう簡単に行くはずがなかった。

「きしししししししし! どうしたぁ! もっとこいよぉ!」

「!」

『急に力が増したな……』

「オンオン!」

ウルシがやつの周辺を気にしている。いや、地面か? なるほど、確かに地面に伸ばした触手から、妙な力がオンスロートに流れ込んでいる。魔力ともやや違う力だ。

『怨念か!』

「オン!」

死霊魔術も使えるウルシには、俺以上に感じ取れているんだろう。

南征公だけではなく、オンスロートもアンデッドだったのか? それとも、邪術士であり、死霊術士でもあった?

ともかく、怨念を力に変換する能力を持っているらしい。再生させるのではなく、新たに肉体を生み出しているようだった。

「きししし! この地に沁み込んだ数多の怨念が、俺の糧になるのさぁ! 何度も何度も何度も戦場になって、何十万人も死んだ場所だからなぁ! チリツモってやつだぁぁ!」

ソフィアードの怨念を食い散らかしながら、オンスロートが叫ぶ。

「さすが邪神の聖女! まさか、俺の邪気をここまで削って来るとはなぁ! それに、これだけの邪気を浴びて、なんで平然としていられるぅ?」

「ふん」

「いでぇぇ! おいおい! 殺意高いなぁ! 会話を楽しもうぜぇ!」

「お断り!」

「ガル!」

「ぐあああああ! この狼も、普通じゃないのかよっ!」

ウルシの次元牙も、オンスロートには有効か。次元属性で、問答無用で削り取っているからな。破邪顕正や神気ほどではないが、ダメージを与えられている。

さすがに危険を感じたのか、オンスロートが距離を取った。その巨体を一瞬で転移させたのだ。

こいつがマレフィセントがいる戦場でも余裕ぶっていられるのも、この邪気による転移のお陰だろう。逃げ足に自信があるのだ。

まあ、この短い距離じゃ、邪気を感じられる俺たちには通用しないがな!

「ぐぎゃぁぁ! なんでだぁ!」

俺たちは同時に転移して、オンスロートに攻撃を仕掛けた。かなり、驚いているな。巨体と触手を大きく震わせ、悲鳴を上げている。

だが、それだけではなかった。

「きっしゃぁぁ! 近づいたなぁ! 手間が省けたぜ!」

「む」

オンスロートの全身から生える触手が、一斉に黒い煙のようなものを吐き出したのだ。毒かと思ったら、違う。

それは、濃密な邪気であった。周辺の邪気の濃度が、数十倍に高まるのが感じられる。

「どうやって邪気を操っているかわからねぇが、邪人でもない身でこれだけの邪気を浴びてまともじゃいられねぇだろ! 狂え! そして俺たちと同じ邪悪へと堕ちろ! 最強の邪人の誕生だぁ!」

なるほど。フランに邪気をぶつけて、邪人に変えるのが狙いか!

以前、俺の中で「壊せ!」と喚いていた邪神の欠片が放つ邪気に、かなり似ているように思えた。

普通の人間がこの邪気を浴びていれば、確かに精神に異常をきたして、邪人化してしまうのかもしれない。

これだけ素早く邪気を放ったということは、最初から邪気でフランを侵食するつもりだったのだろう。

だが、フランもウルシも、全く変わりがない。一瞬キョトンとした顔をしたかと思うと、オンスロートへの攻撃を再開した。

「な、なぜぇ!」

普通ならこの邪気の中では、まともに戦うのも難しいはずだ。だが、邪気を完全に無効化できる俺たちにとっては、視界が多少見えにくくなる程度の効果しかなかった。

「うがあああぁぁぁ!」

「殺せぇぇぇ!」

「ごあああぁぁ!」

俺たちには影響はなくても、周囲には影響が出てしまったか。

周囲にいた兵士たちが、こちらに向かってきていた。浴びせるだけで、相手を邪人化するほどの邪気だ。多少周囲に漏れ出すだけでも、人を狂わせる力はあったらしい。

どうする? 邪気によって暴走状態の兵士たちを、殺さないように足止めができるか?

俺が足止めに向かうかどうか、悩んでいたその間に、戦場には新たなる影が出現していた。

「あれが黒雷姫殿だ! 援護するぞ! みんな、いけ!」

「「「了解!」」」

『え? 誰だ?』

「蟲人?」

『あ、ああ! ナイトハルトたちと同じ、半蟲人だ!』

颯爽と戦場に現れたのは、見たこともない十数人の半蟲人たちであった。