軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1160 紅旗のロブ

ここで、赤騎士団長を1人倒す。倒せずとも、宝具を破壊する。

そう決意した俺たちは、紅旗騎士団長のロブに狙いを定めた。

単純な個人戦闘力で言えば、ローザの方が高いからな。後ろに下がって狙いづらいとはいえ、戦うならロブの方が与しやすいはずだ。

(いく!)

『おう!』

最初、フランはローザに突っ込んだ。狙いを間違えたわけではなく、ブラフ兼ローザの動きを僅かでも止めるためだ。

「てやぁぁ!」

「まだ速くなるのぉ!」

斬撃と見せかけつつ、フランが放った本命は蹴りであった。

フランのミドルキックがローザの脇腹を捉え、その体を真横に吹き飛ばす。同時に、俺は念動と暴風魔術を使って、ローザの体をさらに加速させた。

たった一撃で、15メートルくらいは飛んだかな? ただ、これはローザ自身が勢いに逆らわず、自ら跳んだからでもあるが。

まあ、狙い通り、ローザを遠ざけることには成功した。

フランはそのままローザに向かって突っ込んでいく。誰もが、追撃に入ったと思っているだろう。

迎え撃とうと、身構えるローザ。

そして、俺は転移を使ってフランを一瞬で移動させた。

出現位置は、紅旗騎士団長ロブの真後ろだ。さすがのローザでも、この距離では間に合わない。

転移の気配を感じ取って既に反応しているのはさすがだが、逃げることはもうできんぞ!

「はああぁぁぁ!」

『食らえぇぇ!』

スキルを全力全開! 俺もフランも潜在能力解放以外は全てを出し切っている。放たれるは、上段からの振り下ろしだ。

神気と黒雷、邪気を纏う最高の一撃と、ロブが咄嗟に振るった旗槍がぶつかり合う。

団長たちは、よほど宝具の強度に自信があるんだろう。

実際、カーマインフレイムだって、ブラッドメイデンだって、普通の攻防では傷もつかなかった。カーディナルフラッグも、同じように武器としても優秀なはずだ。

だが、今回は勝たせてもらうぞ!

「ば、かな……!」

手の内から忽然と姿を消してしまった宝具に驚愕し、ロブの動きが一瞬止まる。赤騎士団長ほどの強者であっても隙を作ってしまうほど、宝具が消滅するというのは想像の埒外にある事態なんだろう。

流れ込んでくる膨大な魔力。だが、俺は動きを止めなかった。既に経験していることだからな。もう、呆然とすることはないのだ。

『やったれ! フラン!』

「はぁぁぁ!」

俺が飾り紐でロブの足を拘束すると同時に、フランが再度斬撃を放つ。

数秒前に繰り出して見せた神速の一撃からは程遠い、フランにしては平凡な攻撃だ。消耗し過ぎて、今のフランはこれが全力なのだろう。それほどに、さきほどの斬撃は全てをかけていたのである。

しかし、今のロブにはこれを躱す手段がなかった。軽く体を捩っているが、足が動かないうえに、そのステータスが大きく変貌している。

どうやら、宝具は装備者の身体能力にも大きく影響を及ぼすようだ。腕力や敏捷が半減し、他の能力も2~3割ほど低下してしまっていた。そのせいで、体の感覚が急に変わり、思ったように動けなかったのだろう。

俺の刃は、ロブの心臓を切り裂いたものの、途中で止まってしまう。ロブが魔力を肉体に纏わせ、筋肉と骨で俺を挟み込んだのだ。

「ぐはっ……! 油断、したわ! だが、まだ負けておらんぞぉぉぉ!」

「むっ!」

なんと、ロブは俺を抜こうとするどころか、倒れるように前に出た。足が動かずとも、倒れ込めばフランに手が届く。

代わりに刃がより深くその体に突き刺さるが、ロブは気にした様子もない。自身の状態は分かっているはずだが、一矢報いることに全霊をかけたのだ。

全ての力を攻撃に回したのが分かる。その証拠に、再生に回されていた魔力が消えた。ロブの全身に刻まれた傷から、凄まじい勢いで血が流れ出す。

代わりに、拳から恐ろしいほどの魔力が放たれていた。フランは咄嗟に後ろに跳ぶが、腕にかすっただけで圧し折れる音が聞こえる。

やはり、こいつらは強い。宝具がなくとも。

確実に、ここで殺す!

俺は、ロブから魔力を吸収しつつ、その魔力を使って形態変形を使用した。

「なっ? ぐがぁ!」

さすがのロブも、フランの手から離れた俺がいきなり姿を変えて自分を攻撃してくるとは思ってもみなかったらしい。

驚愕の声を上げるロブの体内を、数百本もの長い棘が蹂躙する。

「く、そ……」

紅旗騎士団長は、最後までその眼に闘志を宿らせ、腕をフランに向けて伸ばそうとした。しかし、その手がフランに届くことはなく、全身から力が失われる。

収納できた……。ロアネスのように死霊化する前に倒しきったらしい。

「倒した……」

『おう!』

「……む?」

『しつこいな!』

紅旗騎士団長を仕留めたものの、俺とフランはかなり消耗してしまった。しかも、再び矢が飛んでくる。

マレフィセントによって天龍が倒されたうえ、ネームレスたちは漆黒のドームに捕えられてしまった。

そのせいで、茜雨に余裕ができてしまったのだろう。同時に、ローザの動きが変化する。明らかにその重心が後ろに寄ったのだ。

そのまま、少しずつ後ろに下がっていく。仇を取るつもりは今のところないようだ。

(師匠、どする?)

『下がってくれるなら、有難い。無理はするな』

(わかった)

フランも、今の状態で赤騎士団長2人を同時に相手取るのは厳しいと、分かっていたんだろう。

俺の言葉に頷くと、追撃の手を止めた。

逃げるつもりなら、無理せず逃がせばいい。相手が下手に牽制を繰り出してくると、そのせいでこちらの味方にまで被害が出る可能性があるのだ。

「あら? いいの? 私の宝具も、消せるかもしれなくてよ?」

「……今日は見逃す」

「おほほほほほ! 強がりを言うわねぇ! それじゃあ有難く!」

「ふん」

ローザは全赤騎士たちとともに、砦へと下がっていく。しっかりと部下の死体も回収していったな。

『フランが宝具を消せるって、バレたなぁ』