軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1157 ローザ・ブルトレーゲン

血死の団長が、左手をこちらに向けた。

本人の優雅にすら思える所作とは正反対の、武骨で下品な金属の塊が、その左腕に収まっている。

黒っぽい銀色をした、巨大なガントレットタイプの魔道具だが、その姿はかなり異様だ。

服の膨らみ具合から見ても、肩口から腕先までを完全に覆っている。そして、肘から先の部分がかなりデカい。まるで、巨人の腕のようだ。ダラリと垂らせば、拳を握り込んでいても余裕で地面に着くだろう。

さらに、管や鋲っぽい部分のせいで、メカメカしさも感じさせた。ロケットパーンチって叫んだら、飛んでいきそうな雰囲気だ。

かなり重いはずだが、女は重量を感じさせずに軽々と扱っている。

そんな巨腕に備えられた太い5本の指それぞれの先端にスリットのようなものが開き、そこから再び赤い霧が噴き出す。

『フラン! 赤い霧は俺に任せろ!』

(お願い!)

『ウルシはそのまま赤騎士を頼む!』

(オン!)

影から魔術で攻撃することで、ウルシは赤い霧に触れずに戦えている。ただ、動きは制限されてしまうし、全力は出せていない。

まあ、影から影へと移ることで、赤騎士を翻弄できてはいるが。

矢の防御はフランに任せつつ、俺は全力で聖浄魔術を使い続けた。少しでも魔術を緩めれば、赤い霧は周囲の人間をあっという間に食い殺すだろう。

しかも、これだけ厄介な範囲攻撃能力を持っているにも拘らず、この女自身の能力は純粋な近接型であった。貴婦人ぶっていながら、酷い能力値だ。

名称:ローザ・ブルトレーゲン 年齢:47歳

種族:人間

職業:剛拳士

ステータス レベル:71/99

HP:1498 MP:568

腕力:981 体力:508 敏捷:407

知力:258 魔力:211 器用:277

スキル

威圧:Lv6、演技:Lv2、隠密:Lv7、拳聖技:Lv6、拳聖術:Lv6、拳闘技:LvMax、拳闘術:LvMax、解体:Lv5、危機察知:Lv4、宮廷作法:Lv5、気配察知:Lv4、硬気功:Lv6、剛力:Lv7、社交:Lv3、蹴脚技:Lv3、蹴脚術:Lv3、瞬発:Lv4、状態異常耐性:LvMax、精神異常耐性:Lv5、属性剣:Lv4、毒知識:Lv4、軟気功:Lv3、物理障壁:Lv5、魔力感知:Lv9、魔術耐性:Lv3、気力制御、鷹の目、直感、ドラゴンキラー、ビーストスレイヤー

固有スキル

剛拳

称号

虐殺者、仲間殺し、魔境解放者、ダンジョン攻略者、ドラゴンキラー、ビーストキラー、伯爵

装備

ブラッドメイデン、水龍のドレスアーマー、風竜の麗靴、水龍の耳飾り、隠密の指輪

文句なしにランクA相当である。しかも、パワーファイター寄り。さらに、その金属の巨腕は宝具で間違いない。

名前は『対吸血鬼用完殺兵器・ブラッドメイデン』。

能力は、力場発生、力場制御、操血機蟲製造、操血機蟲制御、血壊術式、邪気吸収、■■■■である。案の定、■■■■の部分があった。

にしても、対吸血鬼?

その存在は、知っている。こちらの世界では、最高位の邪人に位置付けられている存在だ。しかし、遥か昔に滅ぼされたらしい。

大陸一つを滅ぼしかけた吸血鬼の王がおり、そこから吸血鬼に対する危機感が高まったのだ。結果としては、世界の国々が一致団結して、執拗に吸血鬼を探し出して狩っていった。

詳しいことは分からんが、冒険者ギルドの資料などでは、既に存在しない邪人として僅かな情報が掲載されているだけだ。

どうやら、あの宝具の本来の用途は、吸血鬼を滅ぼすことであったようだ。過去に猛威を振るった存在なわけだし、対処するための魔道具が存在していてもおかしくはなかった。対ドラゴン用の武器とかもあるしね。

ただ、その能力は吸血鬼以外との戦いにも転用可能だったのだろう。

赤い霧は、操血機蟲ってやつかな? 名前からして、相手の体内の血を破壊することに特化しているナノマシン的な存在か?

聖浄魔術が有効なのは、体内に入り込んだ操血機蟲を浄化によって排出できているのだろう。

「私は血死騎士団団長、ローザ・ブルトレーゲンよ? あなたのお名前は?」

「……フラン」

「おほほほ! よろしくねフラン!」

ローザは高笑いをしながら、攻撃を仕掛けてくる。

巨大なブラッドメイデンを叩き付けつつ、赤い霧を四方へと放つローザ。

ブラッドメイデンにはいたるところにスリットが存在しており、そこから操血機蟲を自在に放出可能であるらしい。

殺気はある。だが、攻め気はない。なんというか、殺せるなら殺すが、それが目的ではない。そんな感じだ。

どうやら、フランの足止めがしたいらしい。そこまでして、エレント砦への救援を阻止したいのか?

「さあさあ! 私ともっと遊びましょう!」

「はぁぁぁ!」

「おほほほ? 強いじゃない! 強すぎるじゃなーい!」

ローザの攻撃をいなして切り返したフランの動きを見て、ローザは純粋に驚いているようだ。対人戦の経験は浅いか?

赤い霧を使えば大抵の相手には勝てるのだろうし、人間相手のギリギリの戦いというのは少ないのかもしれない。

俺が赤い霧を無効化しつつ、フランがローザと切り結ぶ。

目に見えない障壁と、ブラッドメイデン由来であると思われる瞬間再生能力。それを利用して、とにかく回避しづらい攻撃を繰り出してくるのだ。赤い霧を除けば、その戦い方は高位のオーガのようであった。

フランが攻め切れない。雷鳴魔術なども、障壁で防がれる。これで足止め目的なのだから、底が知れない。

そうしてローザと戦っていると、不意にエレント砦内部から響いていた戦闘の音が鳴りやんだのが分かった。

崩れた砦の壁の向こうから、瓦礫を踏み越えて人影が姿を現す。

1体はハイドマンだ。奴がいたとすると、情報が漏れていたことも仕方がないだろう。それだけ厄介なのである。

もう1体はネームレスの物とよく似た黒いローブに身を包んだ、ワイト系のアンデッドだ。しかもワイトは、サイサンスを担いでいた。

砕けた鎧の胸元は赤く染まり、かなりの怪我を負っているようだが……。微かに身じろぎをしたのが見えた。辛うじて生きている。

それだけではない。さらに後ろから現れた男が、小柄な少女を抱きかかえていた。邪気を放つ人間の男だ。

そして、男が捕えているのは、ペルソナであった。

トレードマークの仮面は、遠くからでもよく分かる。

「ペルソナ! サイサンス!」

助けたい。だが、俺たちは動けない。

「おほほほ! 行かせないわよ!」

ローザが、さらに激しい攻撃を仕掛けてきていた。