軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1154 レイドスの戦力

俺たちがばら撒いた大岩が、矢によってガンガン砕かれていく。しかし、それでも構わなかった。

小さくなったとしても、それが落下した時の衝撃はかなりのものだ。相手への嫌がらせには十分である。

俺たちが危惧していたのは強力な範囲攻撃で、完全消滅させられてしまうことだ。これをやられると、相手をちょいとだけ消耗させる程度にしかならんからね。

だが、茜雨の矢は貫通力に秀でていても、巨大な岩を完全消滅させるような範囲攻撃は苦手であるらしい。爆発する矢をとにかく連射して、細かく砕いている。

血死は、生物に対する殺傷能力は抜群でも、物理的な攻撃力自体は低いようだ。茜雨以上に、手こずっている。

茜雨が細かく砕いた岩を、赤い槍のようなものを飛ばして、さらに砕くくらいかな? 砦の結界には細かい瓦礫が雨のようにバチバチと降り注ぎ、負荷をかけ続けている。

俺たちはさらに嫌がらせをするため、大地魔術で岩を追加していく。

地面と離れた天空であっても、直径5メートルくらいまでの岩を生みだすのはさほど難しくないのだ。

時折、茜雨の矢がフラン目がけて飛んでくるが、そんな散発的な攻撃じゃ意味ないぜ!

俺が念動を使って矢を弾き、フランが攻撃を続けた。

その間にも、クランゼル王国の先鋒は後退を進めている。団長2人の攻撃がなくなれば、兵士同士に大きな差はないんだろう。

赤騎士たちの姿はないので、もしかしたら団長だけが砦に入っているのかもしれない。

『フラン。俺たちも一度引くぞ』

(わかった)

赤騎士団長たちには、奥の手がまだ残っているはずだ。その恐ろしさを知っているため、フランも素直に頷く。

ロアネスの神炎励起のような恐ろしい能力を温存している可能性が高いのである。それで狙われれば、俺たちもどうなるか分からなかった。

切り札を使う決意をされる前に、さっさと後退するのが吉だ。

ジャンが死霊を呼び出し、退却を援護してくれていた。先鋒部隊の壁となるように配置しているんだろう。このまま、先鋒部隊が完全に後退できたら――。

「グラアアァァァァァ!」

「!」

『上だっ!』

突如戦場に響き渡る、巨大な咆哮。

咄嗟に天を見上げると、上空から何かが凄まじい勢いで戦場に落下してきていた。

鈍い金色の、細長い何かだ。紐っぽくも見えるが、近づいてくるにつれてそんな可愛い物ではないと分かる。

(蛇?)

『いや、龍だ! 天龍だ!』

鬣に髭に角に、長い胴体。東洋の龍にそっくりだった。天井画やら屏風やらに描かれる、いわゆる龍というやつそのままの姿である。

だが、フランは納得いかないらしい。

(でも、ピカピカしてない)

以前、遠目に見た天龍は白金色に輝いていた。それに比べると、落下してくる天龍の輝きはかなり鈍い。

しかし、俺はこちらの色にも覚えがあった。魔術学院の倉庫で見た、天龍の素材にそっくりな色合いなのだ。死ぬと、鱗が輝きを失うらしかった。

俺たちは砦へと後退しながら、天龍を見上げる。落下しているのかと思っていたが、途中で大きく体を震わせたかと思うと、体をくねらせて動き始めたのである。

やはり、先程の咆哮はあいつが放ったもので間違いないだろう。

(あれ……)

『アンデッドだ!』

この距離で魔力を感じれば、間違えない。アンデッドお馴染みの、死霊属性の魔力を纏っていた。

『ジャンの死霊……じゃないよな』

(こっち睨んでる)

敵意が半端ない。完全に、こちらに攻撃を仕掛ける気満々だった。レイドス王国側の戦力で間違いなさそうだ。

どっから調達してきやがった? ベリオス王国の浮遊島にしか生息していないって聞いてるぞ? しかも、どこに隠れて……?

いや、そうか。雲の上だ。もともと雲より高い場所に棲んでいるのだ。雲上に待機しているのなんて簡単なことだろう。下手したら、天龍が自身を隠すために雲を作り出した可能性さえあった。

アンデッドになって、能力がどうなっているか分からない。だが、放つ魔力の強さは尋常ではなかった。

ともかく、アレがこの上なく危険であることは間違いない。あの巨体で飛んでいるだけでも脅威なのに、間違いなく魔術を放ってくるだろう。

「グアアアァァ!」

(師匠、どする?)

『砦からマレフィセントたちが出てくる! 俺たちはこのまま茜雨の矢を防ぐんだ!』

(わかった)

エレント砦には、俺たちよりも高位の冒険者が揃っている。任せて大丈夫だろう。そもそも、こういった場合に備えて、温存されていたんだからな。

相変わらず飛んでくる矢を防ぎつつ、天龍にも注意を払う。

高空から悠然と戦場を見下ろしている天龍から、魔力の高まりが感じられた。そして、広範囲を焼き払う、閃光の波が放たれる。

閃光魔術だ!

そう分かった時には、もう遅い。時空魔術で加速している俺たちでさえ、放たれた閃光を後出しで防ぐのは無理だ。

だが、閃光が兵士たちの命を奪うことはなかった。兵士たちの頭上を覆うように生み出された障壁が、攻撃を防いだのだ。

「マレフィセント!」

『やっぱり凄いな。あの短い前兆で、攻撃をしっかり予測したのか』

今の攻撃の恐ろしいところは、放たれるまで気づけなかったことだ。次は反応して見せるが、初見では確実にしてやられた。

発動までの速さと、発動時の魔力の隠蔽。アンデッドになっても、龍特有の魔力操作の技術は残っているらしい。

聞いた話だが、龍は魔術の扱いが恐ろしく上手く、脅威度A級の魔術師でもなければ対抗できないそうだ。

それを完全に防いで見せたマレフィセントは、間違いなく最高レベルの魔術師ってことだった。

『あっちは大丈夫そうだ』

(ん)

マレフィセントだけならともかく、ジャンたちもいるからな。