軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1148 ジャンの護衛

フランは、ジェノサイド・グールたちが配下になった経緯を語りつつ、連れ歩けないことを説明する。

ジャンも、いろいろな事情をすぐに察してくれたらしい。

「なるほど! 確かにこのレベルの死霊を従者のごとく連れ歩くのは、フランであっても難しいであろうな。死霊というだけでも忌避する者がいるうえに、こやつらは猛毒を宿しているからなぁ!」

「ん」

歩く猛毒兵器なんて、町に入ることさえ拒否されるだろう。

「そして、契約して送還するのも、また無理であると!」

キャパシティの問題も、すぐ理解してくれた。

「ふはははは! 話は分かった! ここはこの死の探究者たる我が、彼らを引き受けようではないか!」

「おねがい」

「うむ! 任された!」

よかった、ジェノサイド・グールたちも、ジャンの下なら力を発揮できるだろう。アンデッドたちに無茶はさせても、嫌がることはさせないやつだしね。

「それでは、契約を結ぶぞ!」

「「「分カッタ」」」

ジャンが長い詠唱を行い、巨大な魔法陣を生み出す。ジャンレベルの死霊術士であっても、簡単に契約はできないんだろう。

ただ、ジェノサイド・グール側が了承しているので、魔術が発動してしまえば契約はすぐだった。

グールたちの全身が光り輝き、その魔力がジャンと繋がったのが分かる。

「それでは、一度送還するぞ? 来たるレイドスとの戦で、役に立ってもらおう!」

「ウム、ワカッタ」

「巫女ヨ! アリガトウゴザイマシタ!」

「マタ、オアイシマショウ!」

「巫女ヨォォ!」

グールたちはそれぞれ礼を言いながら、ジャンの描いた魔法陣の中へと消えていった。何となく、肩の荷が下りた気分だ。

フランも同じであるらしく、満足げに頷いている。安堵したんだろう。ホッとしたところで、フランは気になっていたことをジャンに尋ねた。

「ジャン。だいじょぶだった?」

「オン?」

「うん? 何がだね?」

「ジャンを狙ってる奴がいる!」

「ああ、ネームレスというアンデッドのことか。うむ、姿は見なかったな」

どうやら、ネームレスとはまだ戦っていないらしい。黒骸兵団の第一席、術師殺しのネームレス。やつは、ジャンを倒すために生み出されたはずだ。

もうとっくに動き出しているものだと思っていたが……。

「我が周囲には頼りになるアンデッドたちだけではなく、冒険者の護衛がいたからな。そのおかげかもしれん」

「なるほど」

「フランにも紹介しておこうではないか! 我の護衛をしてくれている元ランクA冒険者! サイサンス殿と、ドーレ殿だ!」

まあ、俺たちもずっと気にはなっていた。どう見ても、強いからな。

「儂らも黒雷姫の噂は聞いてるぞ? よろしくのう!」

「あらあら、可愛い子ねぇ」

ジャンが紹介してくれたのは、二人の老人たちである。

サイサンスは腰が曲がってしまっており、そのせいでフランよりも背が低いだろう。身長の倍近い槍を杖のように突きつつ、反対の手を軽く上げて挨拶してくる。

ハクビシン系の獣人らしいが、フランと違って顔全体が動物なタイプだ。全体が白いのは、老化して毛が白くなっているからか? 声の感じでは、少しヤンチャ系の老人という感じである。

ドーレはサイサンスとは反対に、長身で背筋もピンと伸びている。後頭部で束ねられた髪は白くなってはいるものの、非常に艶やかで若々しかった。

それに、耳には大ぶりなイヤリングを吊るし、化粧も忘れていない。美魔女というか、綺麗なお婆さんである。

どちらも、立ち姿を見れば達人であると分かる。サイサンスは槍使いで間違いないだろう。ドーレは武器らしいものを持っていないが、魔術師ではないと思う。徒手空拳かな?

ともかく、どちらも元ランクAに相応しい強さを持っていそうだった。

「サイサンス殿は『嵐槍』の異名を持つ槍使いだ。まるで嵐のように烈しい連撃から名付けられた」

「ほっほっほ。その名前で呼ばれていたのも昔のことで、今はただの哀れな哀れな老いぼれじゃよ」

サイサンスが自分を卑下するかのような台詞を口にするが、それが真っ赤な嘘なのは明らかだった。

確かに、腰は曲がり、身体能力にも陰りはあるんだろう。立っている姿にも、僅かに隙が見られた。

だが、その隙は明らかに誘いだ。周囲を油断させるための擬態である。なめてかかれば、俺たちであっても痛い目を見るだろう。自分の老いさえも、戦術に組み込んでいるのだ。

これだから老練な冒険者は油断がならん。

「模擬戦する?」

「ほっ?」

「模擬戦」

「ほっほっほ! せんよ! 疲れるからのう!」

「むぅ」

「おもしろいお嬢ちゃんじゃ! いやはや、どうすればその歳で、そこまで目が磨かれるんじゃ?」

フランとしてもぜひ模擬戦をしたかったらしいが、断られてしまった。模擬戦で疲れるほど柔なわけがない。手の内を見せたくないようだ。やっぱりまだまだ現役なんじゃないか。

「ドーレ殿は『死の舞姫』。蹴りを主体とする格闘家だが、その戦う姿が舞い踊るように見えることからその異名が付けられた」

「よろしくねぇ」

「ん」

「本当にめんこいわねぇ。こんな孫が欲しかったわぁ」

ドーレはゆっくりと喋るお上品なおばあさまって感じだが、サイサンス以上にその強さが理解できた。立ち姿に一切の隙が無い。

サイサンスが隙をわざと作って敵を誘い込むタイプなら、こっちは強さを見せつけて襲撃自体をさせないタイプだろう。

「模擬戦する?」

フランがまた尋ねとる! いやいや、戦地だから!