軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1146 砦を巡る戦いの後

邪神の欠片に釘を刺した後にウィッカーマンを探したんだが、発見することはできなかった。その後、クランゼル軍に合流すると、すでにデュラハンたちも姿を消している。

ドナドロンドたちが倒したのではなく、一瞬で消えてしまったそうだ。ウィッカーマンが送還したんだろう。

結局、どっちが勝ったのか分からんな。クランゼル王国は全体の半数が戦死し、奪取目標の砦も消滅してしまった。

対するレイドス王国も重要拠点を失い、朱炎騎士団を失っている。

宝具という強力な兵器を失った分、クランゼル有利寄りの痛み分けってところだろうか?

ともかく、今後の行動を相談しなければならない。まあ、決めるのは貴族と騎士団長、ドナドロンドだけどね。

そもそも、フランは臨時で戦闘に加わったが、義勇兵の輸送任務の途中という扱いなのである。とりあえず、任務を終了させねばならない。

フランは義勇兵たちと一緒に、マレフィセントとペルソナの前に整列していた。私語も一切なく、綺麗に横二列に並ぶ義勇兵たち。

そこにはもう、不良冒険者の面影は一切なかった。

それに、あの激戦の中で、1人も死者を出さなかったことも驚異的だ。皆で結束して、上手く戦ったらしい。死にかけた者はいたが、死者はゼロである。

そんな義勇兵たちを背に従え、フランはどこかドヤ顔だった。自分が鍛え直したという自負があるんだろう。

「それでは、任務をここで完了します。黒雷姫殿も皆さんも、素晴らしい活躍でした。黒雷姫殿以外は、あちらで新たに編入部隊が伝えられますので、ギルドの職員の指示に従ってください」

「「「はい!」」」

「いい返事です。黒雷姫殿はこのままお話がありますが、この部隊はここで解散となります。お疲れ様でした」

「「「おつかれっしたぁぁ!」」」

ビシッと敬礼をした冒険者たちが、口々にフランに礼を言って去っていく。

「姐さん! お疲れ様でした!」

「隊長のお陰で、生まれ変われました!」

「隊長! カ、カレーはどこで手に入るんですか!」

「何かあったら、呼んでくだせぇ! 何を置いても駆けつけやすので!」

フランも1人1人と握手をして、見送る。その顔に一抹の寂しさが浮かんでいるように見えるのは、気のせいではないだろう。

あと、カレーは戦争が終わったらバルボラで売り始めると思うぞ?

「いっちゃった」

『だな。急に静かになっちまった』

「ん」

そして全ての義勇兵が去った後、マレフィセントたちが近寄ってくる。

「場所を移しましょう」

「わかった」

この戦場にきてからどこか不安定というか、焦っているようにも感じられていたマレフィセントだが、調子を取り戻したらしい。

輸送任務開始時のような、心の内を読ませない飄々とした態度に戻っている。

ペルソナに関しては――。

「……?」

マレフィセント以上に分からんな。まあ、元気そうだし、大丈夫なんだろう。

マレフィセントが用意していた小さい天幕に入ると、そこでランクアップ試験についての講評を聞かされる。

まあ、一方的に褒められただけだが。マレフィセント的には、問題なしどころか、想定以上の出来だったらしい。

期限もしっかり守ったうえで不良冒険者全員を更生させて、クランゼル王国のピンチを救ったからな。多少のマイナス部分なんか吹き飛ぶ成果だろう。

ただ、この場でランクAに昇格できるわけではなかった。マレフィセントの評価情報がギルドへと伝えられ、そこで支部長たちの協議が行われて改めてランクアップできるか否かが決まるそうだ。

早くても3日ほどはかかるらしい。

「冒険者ギルドなんて迅速であればあるほどいいのに。上の人間はそんなことも忘れてしまっているんですかね」

「……」

「はっはっは。ペルソナもそう思いますか?」

「……」

ランクアップ試験は無事に終えた。となれば、次はこの戦争についての話になる。

「黒雷姫殿は、このまま戦争に参加するということで間違いないですね?」

「もちろん」

元々のレイドスへの敵愾心だけではなく、アヴェンジャーのことでさらに許せないという気持ちがフランの中で高まっている。

アヴェンジャーから教えられたレイドス王国の所業の数々に、アヴェンジャーの最期の言葉。まあ、奴は召喚可能になったけど、それで許せるというわけではない。

フランはもう止まらないだろう。ならば、しっかりとサポートするだけだ。

「分かりました。ただ、砦が消滅したことで、今後の戦略目標がどうなるか分かりません。主導はあくまでもクランゼル王国ですし、冒険者ギルドが単独で動いても意味がありませんので」

まあ、ギルドが領地を得ることは難しいだろうし、依頼者であるクランゼル王国がどうしたいかに左右されるのは分かる。

「他の戦線の状況如何では、攻め方が変わる可能性もあります」

「他の戦線?」

「はい。現在、クランゼル王国は軍勢を3つに分けて、それぞれが砦を攻めています」

俺たちが今いるここが、もっとも西側の戦場で、兵士の数も最大規模であるらしい。そして、ここから東にもレイドスの拠点が存在し、そこを少数の部隊で攻めているそうだ。

ただ、少数といっても、ランクA冒険者や元ランクA冒険者が複数配置され、戦力は十分過ぎるほどであるらしい。

現在、その2部隊と連絡を取って、今後の動きを協議中だった。

「決定までは少し時間がかかると思いますので、体を休めておいてください。ああ、ペルソナと遊んでいただけるとありがたいですね」

「ん。分かった」

「……!」

頷いたフランに、ペルソナがドーンと突進してくる。そして、その背中にギューッと抱き着いた。遊びって言葉に反応したんだろう。

激戦の後のせいか、余計にほっこりするね。