作品タイトル不明
1144 宝具消滅
「てやぁぁぁ!」
アヴェンジャーによって動きを封じられたロアネスに向かって、フランの斬撃が奔る。
「グガッ……」
入った!
確実にロアネスを斬り裂いた!
奴の深い部分まで、しっかりとダメージを通した感触がある。
「俺様ガ、コンナ餓鬼ドモニィ……」
ロアネスの左腕がボロボロと崩れ始めていた。もう助かりはしないだろう。しかし、奴はまだ動きを止めなかった。
一矢報いようというのか?
「ウガアアァァ!」
ロアネスがカーマインフレイムの銃口をこちらには向けず、天に向かって突き出す。まるで天に向かって、攻撃を放とうとしているかのようなポーズだった。
「小娘ェ! 貴様ノ勝チダ! ダガ、ソレダケダ! 俺ノカワリナンゾ、イクラデモイルカラナァ!」
カーマインフレイムの内側を、強力な魔力が流れる。
「王ヨ! 我ガ宝具ヲオ返シイタシマス! コノ半身ヲオ受ケ取リクダサイ!」
『なんかやろうとしてるぞ!』
危機察知は何も反応を示さない。だが、これ程の魔力の高まりに、警戒しないわけにはいかない。
カーマインフレイムから放たれているのは、火属性ではなく、時空属性か?
『フラン! やれぇ!』
「ん!」
何かされる前にやる!
フランから神属性を纏った空気抜刀術――神気抜刀術が大上段から放たれる。同時に俺は邪気を引き出し、纏った。
黒と白のオーラを棚引かせて、俺がロアネスに襲い掛かる。狙いはロアネスではなく、その手に握られた宝具だ。
「はぁぁぁぁぁ!」
破壊できずとも、その手から弾き飛ばしてやる! 案の定、俺たちの渾身の一撃でも、カーマインフレイムを切断するには及ばなかった。何でできてるんだよ!
刃が半分ほどまでめり込んだところで、止まってしまう。恐ろしく頑丈だな。
だが、その次に起きた現象は、俺たちにもロアネスにも、全く想像できていないことだった。
なんと、カーマインフレイムが綺麗さっぱり消滅してしまったのだ。同時に、俺の中に凄まじい魔力が流れ込んでくる。
共食いが、発動していた。
その凄まじい負荷によって俺の内側に寒気が走り、思わず悲鳴を上げてしまう。
『ぐがあああぁ!』
(師匠!)
まずい、フランの集中が乱れた! 大きな隙になる!
ただ、ロアネスもまた、動きを止めてしまっていた。
「馬鹿ナ、ナニガ! 転送デハナイ……? 小娘ェ! ナニヲシタァァァ!」
『フラン……俺は、平気だ……! 今は、ロアネスを!』
「……ん!」
俺は手に入れたばかりの魔力を、刀身に纏わせる。まだ立ち直り切っておらず、制御はガバガバだ。荒れ狂う魔力が剣から漏れ出し、力任せに神気への変換を行っているせいで無駄も多い。
だが、その攻撃力は圧倒的だ。
ロアネスが驚愕から立ち直る前に、フランの斬撃が奴の体を一刀両断する。今度こそ、勝負ありだ。
「アア、アアァアァアァッ!」
意味のない叫び声を上げながら、ロアネスは灰のように崩れ落ち、消滅したのであった。
『ふー、勝ったな』
「ん」
「オン!」
まだウィッカーマンが残っているが、周辺に気配はない。逃げたか? とりあえず、俺たちは肩の力を抜いて立ち止まった。
ロアネスの残骸を見下ろしながら、俺は気になっていた言葉を思い返す。
『にしても、ロアネスのやつが王がどうとか叫んでたよな?』
王に宝具を返すというのは、どういう意味だ? 攻撃だと思っていたが、宝具を王に転送するって意味だった?
『アヴェンジャー。レイドス王国の王っていうのは、もう決まっているんだよな?』
「その通りです。我が神よ。数ヶ月前に、即位したと聞いております。ただ、それ以上の情報は与えられてはおらず、まだ子供だという話を漏れ聞いた以上のことは……」
この情報は、アヴェンジャーを仲間にした時に聞かされている。ロアネスのセリフからは、王に対する忠誠心のようなものも感じられたが……。即位したばかりの子供に忠誠心を抱くような玉か?
それに、アヴェンジャーは結構重要な情報を知っている。陰謀の詳細や、幹部の素性。秘密施設の位置など、普通のレイドス人では知らないような機密情報をいくつも与えられていたのだ。
そのアヴェンジャーが、王のことについてはほとんど知らない? それもおかしい気がした。レイドス王国の王には、何か秘密があるのかもしれない。
今後、少し気にしておこう。
『で、共食いの成果は……ほほう?』
カーマインフレイムを吸収したことで、魔力が1000も増えていた。さらに、火炎制御スキルまで得ているではないか。ファンナベルタを共食いした時並みの実入りだ。つまり、レイドスの宝具はインテリジェンスウェポン級の存在ってことなんだろう。
というか、共食いできたってことは、廃棄神剣だったのか? インテリジェンスウェポンではないと思うんだが……。分からんなぁ。
レイドス王国には、まだかなりの数の宝具が存在しているはずだ。気を付けねばならないだろう。できれば共食いしてしまいたいところだが、どうだろうな?