軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1134 萬の太刀

「イオネス様っ!」

「貴様らぁ!」

朱炎騎士団副団長、イオネスを倒した俺たちに対し、周囲の赤騎士たちが殺気を飛ばしてくる。

しかし、指揮官を失った赤騎士たちは、連携が明らかに乱れていた。そこを、逃すフランたちではない。

副団長イオネスの相手から解放されたフォールンドに、未だ戸惑われているフランとウルシ。そして、密かに放たれる俺の魔術が、赤騎士たちをドンドン削っていった。

そうして赤騎士の圧力が減ってくれば、他の場所にもいい影響が出る。

アンデッドへと攻撃を仕掛けていた冒険者たちがさらに自由となり、アンデッドの注意が散れば貴族の兵団が立て直しを図る余裕が生まれる。戦況は、一気にクランゼル王国側の有利へと傾いていた。

だが、レイドス王国側もただ見ているだけではない。

赤騎士が30人ほど討ち取られた時点で、立て直しが不可能だと判断したんだろう。砦から、ラッパの音が鳴り響いた。

それが退却の合図であったらしく、赤騎士たちが隊列を組んで砦へと下がり始める。普通であれば追撃のチャンスなんだが、砦と騎士たちから火炎魔術が放たれた。

弾幕に邪魔をされ、冒険者たちは後を追うことができない。

だが、乱戦ではなくなったことで、俺たちにとっても戦いやすくなったのだ。仲間を巻き込む心配をする必要がなくなり、心置きなく魔術をぶっ放せる。

『フラン! ウルシ! やるぞ!』

「ん!」

『エカト・ケラウノスッ!』

「サンダーボルト!」

「アオオォォン!」

俺とフランの雷鳴魔術と、ウルシの暗黒魔術が撤退する赤騎士たちに降り注ぐ。だが、その攻撃が兵士を打ち倒すことはなかった。障壁のようなものが部隊の周囲に展開され、魔術を防いだのだ。

だが、これは俺たちも想定の内だった。

強者が存在するこの世界において、大部隊というのは必ずしも有利なことだけではない。相手に想定以上の実力を持つ魔術師が1人いるだけでも、大被害を受けるのだ。

そのため、それを防ぐための装置や術が、各国で研究されているのは必然だった。海でも、同じように魔術を防がれたしな。

クランゼル王国も似た装置を持っているし、戦地であるレイドス側にはより強力な魔道具や魔法陣が存在していて当然だ。

というか、アヴェンジャーからその辺の情報は聞いている。重要拠点を防御する砦なだけあって、物理防御障壁、魔術防御障壁、両方が備わっているらしい。

だが、同時に使用するにはかなり魔力が必要で、同時展開は30分ほどが限界だそうだ。すでに戦闘が長引いている現在、魔力防御障壁だけを短時間使う程度の魔力しか残っていないだろう。

俺たちが連続で魔術を放ち続け、魔力防御障壁を使わせる。そんな中、フォールンドの準備が整った。

『そろそろ行けるか?』

(ああ。任せてもらおう!)

フォールンドが力強く頷く。

『フラン! ウルシ! 最後はド派手にやるぞ!』

「ん!」

「オオーン!」

このまま魔術防御障壁を使わせ続けるためにも、俺たちはもう何度目か分からない魔術を放った。狙い通りに、その魔術は障壁に防がれる。

その間にもフォールンドが前に出て、右手を天にかざしていた。

その動きに合わせて、周囲の冒険者たちが持っていたフォールンドの魔剣が、虚空へと溶けるように消える。

魔剣による強化がなくなってしまうが、今はドナドロンドが使っていると思われる白い魔力が守ってくれているのだ。フォールンドの剣がなくとも、すぐ劣勢に陥るようなことはないだろう。

膨大な魔力が、フォールンドに還元されるのが分かる。どうやら、実体化と維持に魔力が消費されるらしく、それを解くと剣を構成している魔力を回収できるらしい。

「我が血肉となりし剣たちよ、斬り裂け。萬の太刀」

相変わらず小声のフォールンドだったが、その呟きはハッキリと聞こえた。込められた力が、言葉に存在感を与えているんだろう。

次の瞬間、虚空から湧き出た無数の剣が、見えない腕によって振るわれたかのように、大地に向かって振り下ろされていた。

しかも、適当に攻撃したのではない。百を超える斬撃の全てが、しっかりと狙いを付けられていた。

その多くの斬撃が、まるでギロチンの刃のように赤騎士たちの首を落としていたのだ。躱された攻撃も、ほとんどが騎士たちに深手を負わせている。

しかも、それぞれが特殊な力を持った魔剣だった。傷口を焼いたり、毒状態にしたり、雷鳴で麻痺させたりと、追加効果まである。

恐ろしい攻撃であった。対大軍でも、1対1でも凶悪な威力なのだ。

『よし! これで後ろを気にせずに、アンデッドの対処に回れるぞ!』

「ん!」

「ああ」

まだ砦内に兵力はあるだろうが、最強部隊である赤騎士が壊滅させられては、即座の出撃はできんだろう。

『フォールンド、あと少し頑張ってくれ』

(大丈夫だ)

実は、フォールンドはすでに魔力の大半を使い果たしている。やはりあれだけの攻撃、反動も大きいのだろう。

だが、砦から見えるところで倒れてしまっては、フォールンドの攻撃がもう放てないと悟られることになる。それでは、抑止力にならないのである。

そこで、あと少し頑張ってもらい、ウルシに乗って戦場から離れた場所に避難してもらう作戦だった。

(あとを、たのむ)

『ああ、了解だ!』