軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1133 戦場

戦場は混沌としていた。

クランゼル騎士団と冒険者、貴族の軍勢が入り乱れ、アンデッドや赤い鎧の騎士たちと殺し合いを繰り広げている。

これが、戦場か。

人同士が殺し合う大規模な戦場は、初めて見た。

強者による一方的な殺戮もあり得るこの世界でも、兵士同士のぶつかり合いは存在する。そもそも、1人で戦場を支配できるような強者、そう多くはない。

大国なうえ、積極的に戦力を集めるクランゼルやレイドスが特別なのだ。

それに、ただ相手を叩き潰して、勝てばいいってものじゃない。

戦争は、相手の領土を奪い取ることが目的だ。首尾よく敵国の領地を削り取ったとしても、1人の強者でいくつもの村や町を支配することは難しい。

そのためには多くの兵士が必要となる。そして、敵国の兵士を打ち払うためには、やはりこちらも兵士を多く用意しなければならなかった。

それに、貴族や権力者の面子という物もある。戦争というのは、彼らが功績を得るための舞台でもあった。

強者だけに戦を任せていては、貴族が功績を上げられないのだ。結果、兵士たちにとっては哀れではあるが、彼らが貴族の使える戦力として戦場に引っ張り出されることとなるのだった。

貴族の連れてきた兵士の中には傭兵もかなり多いが、アンデッドに押されている。毒持ちや再生持ちも多く、苦戦しているのだろう。

あの中には、黒骸兵団で生み出された『スカベンジャー』という死霊製造特化型のアンデッドたちが混じっており、そいつがジャンのように軍勢を生み出し続けているそうだ。

だが、それよりもマズいのが、正面の赤騎士だろう。

ただ普通に、小細工なしに強い。冒険者たちは押しに押され、かなりの被害を出している。フォールンドが敵の主力を引き付けていなければ、既に全滅しているだろう。

なんせ、敵の指揮官らしき魔術師は、百剣のフォールンドと正面からぶつかり合えるほどの強者なのだ。

義勇兵を冒険者の支援へと回し、俺とフラン、ウルシがフォールンドと協力してあの指揮官を倒す。その後、アンデッドの排除に乗り出すのがいいかな?

フランと相談していると、戦場に大きな異変が起きていた。冒険者たちを率いている鬼人、ドナドロンドから白い光が放たれたのだ。

冒険者たちの体を包み込む光は、癒しと守護の力を秘めているらしい。冒険者たちが、急に強くなったように見える。

『チャンスだ!』

「ん!」

俺たちは、動き出す。

「おい、死にぞこない」

「はっ! 何でしょうか、我が巫女!」

「さっき言ってた、スカベンジャーってやつらを倒す!」

「分かりました! そのご下命! 果たして見せましょうぞ!」

「私たちは、冒険者を助ける!」

「「「おう!」」」

一斉に戦場へとなだれ込んだ義勇兵たちは、一気に赤騎士たちへと襲い掛かった。フランは先頭に立ち、指揮官へと攻撃を放つ。

フランの黒雷は指揮官を打ち、驚かせることに成功していた。ダメージはないようだが、確実に動きを鈍らせたぞ。さらに、ウルシの放った影魔術は、周囲の赤騎士たちを絡めとり、動きを封じた。

奇襲成功だな!

その間にフランはフォールンドに近づき、傷を癒す。

「フォールンド! だいじょぶ?」

「あ、ああ」

「我らが巫女よぉ! アンデッドたちはお任せを!」

「ん。お願い」

フランが引き連れているジェノサイド・グールたちを見て動揺しているようだが、説明は後だ!

「フォールンド! 合わせて!」

「ああ」

「なんだよ! お前ぇ!」

憎々し気に叫びながらも、火炎魔術を放ってくる青年。こいつは、6つある赤騎士団の1つ、『朱炎騎士団』の副団長だ。そう、副団長である。

団長は朱炎騎士団の名前の由来となった宝具を制御するため、砦に残っているらしい。宝具の効果は単純で、自分と配下の火炎魔術の威力増加と、火炎耐性の上昇、身体能力強化である。さらには対象を絞ることで、その効果を大きく引き上げることも可能なんだとか。

『まずは副団長をぶったおす!』

「ん!」

「死ね! 死ねよ! なんで死なないんだよぉっ!」

俺は火炎を防ぐ障壁を魔術で生み出して、ガンガン相殺していく。

副団長なだけあって、性格はともかく火炎魔術の腕は凄まじい。強化されているとはいえ、これだけの魔術を多重起動できる者はそう多くないだろう。

だが、俺も魔術の同時発動には自信があるのだ。

副団長の火炎魔術を俺が相殺している間に、フランとフォールンド、ウルシが距離を詰めていた。赤騎士たちが副団長を庇おうと動くが、義勇兵たちに邪魔されてしまう。

「隊長! やっちまってくだせぇ!」

「隊長の邪魔はさせんぞ!」

「よくやった」

フランが声をかけると、義勇兵たちは嬉しそうに頷く。短い間で、随分と懐いたもんだ。

「ガル!」

「当たるかよぉ!」

肉体を火炎化して、攻撃を躱せるのか! だったらこれでどうだ! 俺は、相手の火炎化を少しでも阻害するために、大魔法使いスキルを使用した。

邪気征服で、相手の邪気を支配できたのを思い出したのだ。大魔法使いスキルなら、相手の魔術を邪魔できるんじゃないか?

すると、すぐに効果が発揮される。

「な……! 体が!」

やはり、強力な魔術ほど制御が難しいのだ。邪魔されれば、使い続けるのは難しいようだった。

『今だ!』

「はっ!」

「てやぁぁ!」

俺の言葉に応えるように、フォールンドとフランが一気に切りかかる。

「く――あがっ……!」

超達人2人の斬撃を魔術なしで回避できるはずもなく、副団長は首と頭を切り裂かれ、血を撒き散らしながら倒れるのであった。