軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1130 猫耳巫女隊長

「みえた! 周り、囲まれてる!」

『アヴェンジャーのやつが言ってた通りだな』

「ん」

手に入れた情報をもとにレイドス王国の砦へと向かう俺たちだったが、すでに戦端は開かれてしまっていた。

しかも3方を敵に囲まれ、クランゼル王国軍はかなり危険な状況だ。

情報通り、赤騎士たちもいる。フォールンドが相対しているが、あの男でも勝てない相手なのか?

どうすればクランゼル王国軍を救うことができるのか? 闇雲に突っ込めばいいってものじゃないだろう。

戦場へと駆けながらも悩んでいると、異変が訪れていた。

白い光が冒険者たちを包み込んだのだ。一部の騎士なども、光っているか? 癒しの魔力を感じるし、敵からの攻撃ではなさそうだ。魔力の中心は、冒険者たちの固まっている辺りである。

1人の鬼人から、優しささえ感じる膨大な魔力が迸っていた。太く長い角に、アースラース並みの巨体。離れた場所から遠視のスキルで見ているのに、威圧感や迫力が凄かった。

あんな目立つ鬼人、アレッサにはいなかったよな? 他のギルドからきた義勇兵か?

いや、待てよ。あの顔……もしかして、ドナド? ドナドロンドなのか?

短い間に、変わり過ぎだろ! 体は1回り膨れ上がり、角が伸び、放たれる魔力の質もかなり変質している。

ただ、戦場全体が戸惑っている今こそ、チャンスであった。

『フラン、まずはフォールンドの救援に行くぞ』

(わかった)

フォールンドと相対している魔術師の青年が、情報にあった朱炎の騎士だろう。強いとは聞いているが、俺たちとフォールンドで同時にかかれば、勝てない相手ではないだろう。

能力を聞いた感じ、要はイザリオの下位互換って感じだったしね。

それに、こちらには遊撃隊以外にも、戦力がある。こいつらを敵アンデッドの駆逐に回せば、冒険者たちも救えるだろう。

つまり、まだ間に合うってことだ。

「おい、死にぞこない」

「はっ! 何でしょうか、我が巫女!」

フランの言葉に威勢よく応えたのは、後ろを走っていたアンデッドだった。邪気を放つ、凶悪なグール。そう、こいつは俺を狙って襲ってきた、あのジェノサイド・グール指揮官だった。配下のジェノサイド・グールたちも、しっかりと付いてきている。

黒骸兵団所属の、アヴェンジャーと名乗ったグールは、とある理由でフランに付き従うようになっていた。

数時間前。

俺の使った邪気征服スキルは、ジェノサイド・グールを苦しめることに成功していた。

動くな。従え。戦いを止めろ。そう念じながらグール内部の邪気を操作すると、確かに動きが鈍ったのだ。

『この隙に、ガンガンやっちまえ! 斬って斬って斬りまくって、邪気を祓え!』

「ん! はぁぁぁ!」

「くそぉぉぉぉおぉ!」

フランはグールを倒すべく、破邪顕正を全開にして斬りかかる。だが、その刃がグールを斬り裂くことはなかった。

「巫女よ! 我が巫女よ! 我が間違っておりました! お許しをぉぉ!」

「?」

『は?』

グールが突如敵意を霧散させ、その場で土下座したのだ。今まで向けられていた突き刺さるような殺気も、鳴りを潜めている。

「みこ?」

「はっ! 神器の中の神から、あなたに従えという啓示がございました!」

指揮官に合わせるように、他のグールたちもフランの周囲に集まり跪いていた。既に倒された数体以外、全員でだ。

邪気征服による支配を、邪神の欠片からの意志だと勘違いした? 上手くすれば、情報を引き出して、無効化することができるんじゃないか?

そんなことを考えていると、俺の内側の邪神の欠片が、蠢いた。凄まじい力を放ったわけではない。ただ、濃密な邪気の欠片が僅かに溢れ、グールたちを祝福していた。

「おお! おおおおぉぉ! 我が神よ! 承知いたしました!」

「「「おおおぉぉぉぉ!」」」

グールたちが歓喜の咆哮を上げる。涙腺が生きていれば、確実に涙腺が決壊していただろう。

膝と額を大地に擦り付けながら、グールたちがフランを崇めるような声を上げる。

「巫女よ! 我らが巫女よ! 真にあなたは巫女であられた!」

「巫女よ!」

「我らをお導き下さい!」

邪神の欠片が、やや自慢げな雰囲気を放っているのは気のせいだろうか? ともかく、俺の使った邪気征服と、邪神の欠片のおせっかい。その双方がグールたちを感動させ、調伏せしめたことは確かであろう。

グールたちの突然の狂態――降伏に、義勇兵たちもマレフィセントも困惑している。ペルソナからでさえ、戸惑いが伝わってきた。

まあ、そうだよね。急にフランが崇められ始めたわけだし。しかも、邪神の欠片が勝手をしたせいで、マレフィセントには邪気が感じ取られているっぽい。

「黒雷姫殿? これはいったい……」

「……なんか、こうなった」

「はぁ。その剣、大丈夫な物なのですか? 明らかに強い邪気が感じられましたが」

「だいじょぶ。邪気を操る力があって、それでこいつらも敵じゃなくなった」

「まあ、黒雷姫殿は平然としてますしねぇ。ここはとりあえず、それで納得するしかありませんか」

冒険者同士、無理に相手のことを聞かないという不文律を思い出したんだろう。マレフィセントはそれ以上は突っ込んでこなかった。

義勇兵たちはもっと単純で、最上位のアンデッドを簡単に支配したように見えるフランを、崇拝するような眼で見つめている。

「す、すげー! 隊長! カレー!」

「巫女よぉ! 猫耳巫女よ!」

「猫耳巫女だってよ! さすがっす! 猫耳巫女隊長! カレー!」

「巫女よ! その黒々しい猫耳で神のお言葉をお聞き下され!」

なんか、マレフィセントとペルソナ以外は、全員がフランを崇めてる変な状況になってしまったな。

『とりあえず、グールたちに話を聞いてみようぜ』

「ん」

レイドス王国の情報が手に入ればいいんだが。