軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1128 Side ドナドロンド 下

スワイス砦の戦いは、クランゼル王国軍が終始後手に回る展開が続いていた。

いつの間にか回り込んでいたアンデッドたちに背後から襲われ、正面からは赤い鎧の騎士団が攻め立ててくる。

アンデッドは2000を超えるが、それよりも200人ほどしかいない赤騎士たちが異常に強い。

「ドナドさん! やばい! 砦の背後から、レイドス軍が現れた!」

「またか! 正面はどうなっている!」

「騎士団と一緒に抑えようとしてるが、あいつらやばい!」

「あれが赤騎士ってやつらに間違いねぇよ!」

偵察に出していた斥候役の冒険者たちから逐次情報が入ってくるが、いい情報など一つもなかった。

赤い騎士。

言われて、俺も思い出す。捕虜たちが言っていた、この国の守護騎士のことを。

何にも縛られず、国内の治安を守り続ける赤い鎧に身を包んだ最強の騎士たち。

実力があることは間違いないと思っていたが、これほど強いとは思ってもいなかった。侵略の際に表に出てくるレイドス騎士たちなんぞ、赤い騎士たちに比べれば雑魚のようなものではないか!

「ぎゃぁぁ! 助けてぇ!」

「ぐふ……! 無念」

「う、腕がぁ!」

騎士団と兵士、冒険者を併せて5倍近い数で包み込んでいるはずなのに、その進軍が止まらないのだ。近接での戦いで、圧倒的に負けている。

そこに新手が現れたとあっては、三方向から攻められることになる。何か手を打たねば、危険であった。

聞こえる悲鳴は、仲間たちのものばかりなのだ。

しかも、時おり火炎魔術が飛んできては、大爆発を起こす。魔術を防ぐための結界はあるが、全てを防げるほど広範囲は覆えない。

高位の魔法騎士を揃えているのだろう。冒険者で言えば、1人1人がランクC以上。指揮官級のものたちはランクBだろう。

そんな者たちが騎士団として連携しているのだ。恐ろしく強い。冒険者たちにも、多くの被害が出てしまっている。

なんと不甲斐ない指揮官か。噛みしめる自らの歯が、軋みを上げているのが聞こえる。それでも、俺には仲間を鼓舞することしかできない。

前に出てこのデカいだけの図体を盾にして仲間を、部下を守りたい。しかし、それは許されない。これだけの人数を指揮した経験など、この中では俺にしかないのだ。

俺が持ち場を離れれば指揮は混乱し、より被害は増えるだろう。

「フォールンドに伝令を走らせろ! こちらに戻れとな!」

「了解しました!」

「ドナドさん! 後方の貴族の軍団、まずいっす! 背後から襲われて、貴族が何人か死んだみたいっす!」

「ちっ! 奴らも放っておくことはできんか! よし! 後方の貴族どもの援護に入る。やつらとともにアンデッドを蹴散らして包囲を抜けるぞ!」

「わ、わかりやした!」

「前衛は俺と共に突っ込むぞ! 後衛は、斥候役と共に援護!」

一度砦から距離を取り、立て直さねば危険である。そう考え、俺は冒険者たちを率いて後方への突撃を開始した。騎士団には動きを伝える使者を出した。合わせてくれるだろう。

「突っ込めぇ!」

「「「うおおぉぉぉぉ!」」」

アンデッドは相当強い。

一見すると普通のゾンビやスケルトンだが、動きは素早く、打たれ強かった。痛みを感じずに前進してくる分、普通の人間よりも余程厄介だ。

予想外の抵抗に、突撃の足が鈍る。このままでは、危険だ。背後から赤騎士たちが今も迫ってきている。

「クランゼルの愚か者どもを殺せ!」

「奴らの血でこの地を染め上げろ!」

「殺せ殺せ殺せぇ!」

赤騎士たちの咆哮にも似た叫び声が響くたびに、こちら側の人間が命を散らしていく。しかも、敵はまだ本気ではなかった。

「燃えろ燃えろ! 我が朱き炎によって、灰となれっ!」

大音声が響き渡ったかと思うと、天に巨大な魔法陣が描き出される。俺のような、魔力に対して鈍い戦士にも分かった。

あれは、危険だ。こちらに死をもたらす、危険な魔術である。

誰もが息を呑む中、輝きを放つ魔法陣から赤い閃光が幾条も降り注いだ。結界を貫き、大爆発を引き起こす光線。

以前、ゴブリンダンジョンの入り口でフランが使っていた火炎魔術に似ているが、こちらの方が遥かに強力で、数も多い。

「ぎゃぁぁ!」

「た、たすけ……」

撒き散らされる赤い炎に炙られ、仲間が倒れていく。燃え上がり、炭化し、砕ける。

仲間が、死んでいく。

俺には何もできない。できることは仲間を励ましながら、アンデッド相手に斧を振ることだけだ。これ以上の被害が出る前に、この死地を脱出しなければ!

だが、俺の願いなど虚しく、天に再び魔法陣が描き出される。マズイ。我々冒険者の部隊に近い。

今度は、先程よりも多くの被害が出るかもしれなかった。

不甲斐なし!

敵に対する怒りも、無謀な作戦を押し通した貴族に対する恨みも、俺にはない。俺の心の中にあるのは、仲間を救うことができない無能な自分への怒りの念だった。

この身すら燃やし尽くすかのような、灼熱の感情。

これが、真の怒りというものか。

俺は、幼いころから変わった子供と言われてきた。鬼人族にしては大人しく、理知的。そんな風に言われてきたのだ。無論、人やエルフには比べるべくもないだろう。

だが、感情のままに行動に移す者が多い鬼人の中にあっては、大人しい子供であったのだ。怒ることはある。だが、ここまで強烈な感情は、生まれて初めて得たかもしれない。

自身の弱さが、憎い! 俺は、なぜこんなに弱い! 図体ばかりデカいくせに、何故仲間を守ることができない? この木偶の坊が!

不甲斐なしっ!

「ぬううううううぅぅぅぅぅ!」

「え? ド、ドナドさん? なんか体光ってますよ!」

「不甲斐なしぃぃぃ!」

「ドナドさん! 角伸びてますけどぉぉ!」

「うがああああああああぁぁぁぁ!」