軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

111 事前準備色々

孤児院を出た俺たちは、すぐに冒険者ギルドに戻った。メッセージの発送をお願いするためだ。

遠距離通話の魔道具でもあるのかと思ったら、なんと伝書鳩を使うらしい。いや、使役している鷹の魔獣を使うから、伝書鷹か?

アレッサまでなら1日で届くというのだから、凄まじい速度だ。聞くと、脅威度Eのウィンドイーグルと言う、高速飛行ができる魔獣を使っているんだとか。

ただ、ギルド全体でも数は少なく、バルボラにも2羽しかいないらしいな。今は1羽使えるそうで、ラッキーだった。その分料金もお高めだ。

なんと片道1万ゴルドだ。高すぎないか? これだったら、このお金を孤児院に寄付した方がいいかなーとか迷ったが、一応手紙を送ることにした。

アマンダはアレッサから離れることは出来ないが、色々と伝手もあるだろうし。手を回して助成金を再開させたり、変な奴らが孤児院に手出しできない様にしてくれるかもしれない。

俺たちの近況と、孤児院の苦境について手紙に書き記す。「子供たちが困っているので、どうにか助けられないだろうか」と最後に書いておいた。他力本願だが、アマンダの方が圧倒的にできることが多いのだから、ここは頼らせてもらうとする。俺達だけの問題じゃないからね。使える伝手は全部使わないと。

「オンオン」

『お、ウルシ戻ってきたか』

冒険者ギルドを出たところで、ちょうど戻ってきたウルシと合流できた。

本当はルシール商会に向かいたいんだが、どうやら逆方向みたいだな。ウルシの先導に従い、バルボラの町を進む。

『ここか?』

「オン」

案内されたのは住宅街の一角だった。5メートルを超える高い塀に囲まれた広い屋敷だ。結構広いし、貴族か何かの屋敷か?

さすがに表札なんかないからな。

俺たちは周辺で聞き込みをすることにした。

こういう時、子供は疑われなくていいよね。普通だったら怪しまれそうな感じだけど、どの人もフランには警戒心が薄い。少し演技指導をするだけで、ほとんどの人があっさりと話を聞いてくれた。ウルシがもっと小さくなれたら、可愛い子犬ちゃん作戦も使えたんだがな。

取りあえず相手が男だったら、軽く小首をかしげて、上目遣いで話しかけさせる。ほとんどの男はそれでもうデレデレだ。

「ねえ、おじちゃん?」

「な、な、なんだいお嬢ちゃん?」

うん。変な扉を開いちまってたらすまん。

女性には、素の状態で行く。下手な小細工をするよりも、無表情な感じが逆に好感度を上げてくれるらしい。

「ねえ、おばちゃん」

「はいはい?」

「そのお屋敷、すごい大きいけど。お貴族様の屋敷なの?」

「ああ、そこ? 確かにこの辺じゃ一番でかいかもね」

「それに、趣味も良くない」

「あっはっは。そうだね。確かに悪趣味だ。でも、どこの誰の屋敷か分からないんだよねえ」

「分からない?」

「ああ、ここだけの話、ヤバい奴らが使ってるんじゃないかって言われてるんだ。人の出入りもほとんど夜だし」

「裏の組織とか?」

「でも、噂だとご領主様のところの馬車が入っていくのを見たっていう話もあるんだ」

「領主がかかわってる?」

「さて、ご領主様の紋章が付いているだけで、乗ってるのがご領主とは限らないからね」

そんな感じで何人かに話を聞いたが、明確に誰の屋敷かと言う情報は得られなかった。ただ、あまり素性の良くない奴らが利用しているという噂は広まっている様で、誰もが声を潜めて近づくなと警告してくれた。

『ウルシ、中は人が結構いたんだろ?』

(オン。オンオ)

かなりの数の人間が居たようだな。

『うーん、乗り込むのは無理だな』

まあ、怪しいってだけで、犯罪の証拠がある訳でもないしな。

今日のところはここを突き止めただけで良しとしておくか。

『ウルシ、匂いは覚えたか?』

(オン)

俺たちにちょっかいを出してくるか分からんが、警戒するに越したことはないし。

このあとルシール商会に行くからな、そこでも話を聞いてみよう。

1時間後。

「では、これで全てですね」

「ん、ありがとう」

「いえいえ。コンテスト頑張ってください」

俺たちはルシール商会に頼んでいた野菜や小麦粉、油を受け取っていた。さすが大商会、仕事が早いね。次々と次元収納に入っていく商品を見ていたレンギルは唖然としていたが。どこかに倉庫でも借りて、そこに保管しておくと思っていたらしい。運搬用の馬車や人足も手配してくれてたみたいで、無駄にさせてすいません。

本気で専属で雇われないかと誘われたよ。これだけ大きい収納力は、時空魔術の使い手でも稀な能力らしい。まあ、俺達の場合は単純に時空魔術ではなく、次元収納と言うスキルだからな。普通の時空魔術師よりも特化している分、収納力が多いのだ。商人からしたら喉から手が出る程欲しいスキルかもね。

あと、販売時に使う紙袋も一緒に受け取った。バルボラは驚くほど紙が出回っており、一般市民も普通に紙を使っている。この世界では、羊皮紙は魔術系に、普通紙は一般向けという感じらしい。

見た目は地球でも使われていた茶色の紙袋にそっくりだ。品質は数段悪いが。大きさは2種類。カレーパンが2つ入るサイズと、6つ入るサイズがあった。2つ入るサイズの物を縦に半分に切ることで、1つだけの注文用にも使える。半分に切った紙袋にカレーパンを挟み、余った部分を巻けば、むしろおしゃれに見える程だ。いや、おしゃれに見えたらいいなー。

あと、持ちやすいように、袋上部には穴を開けて持ち手にするつもりだ。

「この紙袋はまだ在庫がありますので、足りないようであれば追加の注文も受け付けますので」

「ん、分かった」

最後に謎の屋敷についても聞いてみたが、レンギルからは特に情報は得られなかった。ただ、孤児院の話を聞いて憤っていたので、知っている者がいないか調べておいてくれるらしい。ありがたいね。

「では、こちらを」

「鍵?」

「はい、調理場をお探しでしたでしょう? これは、1ヶ月前に潰れた料理店の鍵です。次の買い手が決まっておらず、放置されていました。内装や調理器具はそのままになっていますので、問題なくご利用できると思います。数日の契約でお貸しできますよ」

案内してもらったのは、いわゆる廃店したレストランの厨房だった。窯やコンロはそのまま残っているし、裏には水場もある。ルシール商会の者が定期的に清掃しているらしく、埃などが積もっていることもない。これはいいね。

俺たちは取りあえず1週間、この店を借りることにした。

これで準備は整ったな。あとは料理ギルドへの素材の持ち込みか。いや、違った。水の用意をしていなかったぜ。

『フラン、魔力水を作ろう』

「ん。どうする? お風呂?」

『いや、土魔術でプールみたいなものを作ろう』

調理場の横には広い土間があるから、誰かに見られる心配もないし。その前に実験だな。

次元収納の中にある毒水に対し、どれくらいの量の属性反転薬を入れればいいのか。最上級混合毒薬も使った方がいいのか。

土魔術で小さい器を複数創り出し、色々と試してみる。

「ん、面白い」

「オオン。オフ」

「今度はこっち」

「オウオウ!」

「ん? これ?」

「オン!」

まあ、科学の実験みたいだし。薬品同士の反応で色が変わるし。フランは夢中で色々と混ぜ合わせている。ウルシの毒魔術で毒を出してもらって、それを混ぜたりもして、完全に実験の虜だ。

あまり効果が高いと、原価が高くなりすぎるからな。レンギルに色々話を聞いたのだが、癒しの水よりも1段上の効果を持つ、快癒の水という魔力水がちょうど良さそうだった。

これは、数日以内に受けた状態異常であれば回復させてくれるという効果がある魔力水だ。回復力はかなり高いものの、数日以内と言う制限があるので価格は低めらしい。

ポーションと何が違うのかわからんが。どうやら、組成は水なのに特殊な効果があるものを魔力水、薬的な物をポーションや魔法薬と呼ぶようだ。

次元収納に入っている毒水を、錬金術と水魔術、毒魔術を使って濃縮しつつ、さらに混合毒薬を加え、属性反転薬を流し入れる。

そして色々試し続けた結果、なんとか快癒の水の大量生産に成功したのだった。

むしろ作りすぎたか。必要な量の倍以上ある。まあ、足りなくなるよりはましだけど。

『さて、準備は整ったな。試作品を作ったら、料理ギルドに行くぞ』

「ん。いよいよ」